その18
「おいお前!」
「ははははいぃ!?」
めっちゃ睨んでる!怖い!!腰抜けるくらい怖い!!
「お前は人間か?何故この術にかかった?」
わぁ怪しまれてる!そうだよね、術に人間が引っかかるなんてまずないもんね!でも俺も原因わかんないから答えに答えれないなぁ!
「人間に決まってんだろ!迷子になりそうなときにあんたが術なんぞ使うからこんなんなっちゃったんだよ!早くこれほどけよっ」
怖いながらも頑張って言い切った俺。
にも関わらず眼光は鋭さを増すばかり。
俺の言い方がいけなかったの?
数秒後、目の前の怖い男は俺をじろじろくまなく見て、信じられない一言をぼそりと呟いた。
「人間に化けた妖怪か」
「ちがあぁぁぁう!!」
「何が違うんだ。陰陽師の使う術は人間に向けたとしても発動しない。それなのにお前には発動した。妖怪だとしか考えられない」
「斬る気かよ!!?」
刀を構えたよこの人!!人間斬ったらさすがにヤバくね!?
まさかの絶体絶命というやつ?こんな所で!?
身動きできない俺に斬りかかろうと突進する体制になる男。
誰も助けてくれないの!?
誰かいないの!?
誰か!誰か………っ!
脳裏に浮かぶのはもう会えない二人。
ああ、駄目だな俺。
こんなときはいつも二人を頼るんだもんな。
もう二人は俺のそばにはいないのに。
男が刀を降り下ろそうと一歩前に出たその時。
「雪……その人、人間」
何の音も立てずに静かに歩み寄って来たのは凛とした背の高い女の子。
長い黒髪はキレイに揃えられていて、ややつり目の紺の瞳には俺が映っていた。
「イオリ!……だが、こいつはこの俺の術にかかった。間違いなく妖怪だ」
「でも……」
少女は俺に近付き、俺の顔に鼻をクンクンさせた。
何故初対面の俺の匂いを嗅ぐ必要が?
「人間の、匂い、する……」
人間の匂いぃぃ!?
匂いで種族が分かるの!?
なんだそのスキル!
「そうか、イオリがそう言うなら人間なんだな」
しかも信用できるレベル!?
「おいお前。悪かったな、疑って」
「あ、うん、謝らなくていいから刀しまってくれるかな。あとこの術解いて」
何気に身体ミシミシいってるんだよね。感覚なくなってきてるから急いでくれないかな。
すぐさま男は術を解いてくれた。助かった。
「あぁ~、やっと解放され……いだだっ!?」
自由になった身体。だが伸びをしたら両足にズキーンと痛みが走った。
パニックになる寸前、そういえば今までずっと歩きっぱなしだったことを思いだした。どれだけの距離を歩いたかは分からないが、体内時計では一時間は経っていた。
歩きすぎて足が痺れていたことも思いだし、先程の痛みに納得した。
「どうした?蔓草の威力が強すぎて怪我をさせてしまったか?」
しゃがみこむ俺の顔をのぞきこむ男。殺気を含んだ数分前の般若みたいな怖い形相でなく心配さを声に滲ませた焦り顔がそこにはあった。
さっきとはえらい違いだな。別人かと思ったじゃねえか。
「大丈夫。歩きすぎて足が痺れてるだけだから!」
笑ってるけどけっこー痛い。
「は?歩きすぎ?」
「うん、学園に行くためにずぅっと向こうから歩いてきたんだ」
そう言って歩いてきた道を指差す。
平然と言う俺を凝視した後何故か驚きの表情を浮かべる男。ちなみにイオリと呼ばれた凛とした顔の彼女は影に溶け込んでるかのように空気な存在となって俺をじーっと見つめていた。いやん、そんなに見られると恥ずかし。
「立ち入り禁止区域から出てきたのか?あっちは妖怪が沢山いるのに、よく無事だな」
嵐武様ぁぁぁぁぁっ!?どこに降ろしてくれちゃってたのぉぉ!?
立ち入り禁止区域って!立ち入り禁止区域ってぇぇ!!
下手すりゃ妖怪と遭遇してバトっちゃってたよ!!殺されるか喰われるかだったよ!!怪我は絶対してたよ!!!嵐武様の馬鹿ぁっ!人間の子供を危険に晒さないでよぉっ!!
「あっち行けば、道路、あった。あっちから、来れば良かった、のに……」
ここでいきなり空気な存在の彼女、イオリちゃんの静かな声が聞こえた。あっちと言って指を差す。
あのクソ神様め……わざと森の奥深くに着地しやがったのかよ。
「危険区域、校則で、駄目……罰、ある」
ところでイオリちゃん、辿々しい言葉遣いだと理解するのに苦労するんだけど直すことはできないのかな。




