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神様と友達な彼と最強くん  作者: 雨園 咲希
合同授業と編入生
104/230

その104

〈雪side〉



 問いかけたのち、一瞬で我にかえった。


 何を……口走ってるんだ、俺。


 先程の問いかけは無論南雲とのことを指しているのだが、柳にはなんら関係のないことなのに。それ以前に何故あんな問いかけをしてしまったのか。



 ……いや、原因はわかってる。



 先日、偶然エレベーターで南雲 清流と会ってしまったときのことだ。


 妖怪夫婦に敗れたときの怪我のことを心配されたのだが、南雲家の嫡男と僅かでも接触したことが父上に知られたら確実に叱られるだけじゃ済まない。だが仮にも心配の言葉を述べる者を無視するのも躊躇われる。


 なので極力話しかけるなオーラを発しながら怪我が治ったことを伝えると、南雲はホッとした表情になった。


 なんでそんなホッとしてるのだろう……と思った次の瞬間、ある予感が頭を過ってそれを口にした。



『お前が助けてくれたのか?』



 思わず口に出した質問に南雲は自分は何もしてないと言った。


 もし南雲家の者に助けられたりしたら父上に叱られるどころか別の学校に転校させられかねないからな。そう言われたとたんにひどく安堵した。


 だがそのあと霊能科の保険医に事のあらましを説明された。


 依頼をこなした帰りに妖怪夫婦と遭遇、のちに一戦交えたあの日、意識を手放したあとに起こったことを説明されたのだが、複雑な気分になった。


 学園代表で救助しに来る班を押し退けて南雲が率先して俺の元に来たらしいのだ。


 俺と南雲個人ではなく実家同士が争ってるとはいえ、敵対してる者を率先して助けに行くのは問題がある。なのに南雲はそれをやってのけたのだ。複雑な気分にもなる。



『僕は何もしてない』



 ならあのとき、どうして助けてないと言ったのか。上手くやれば奥ヶ咲家に恩を売ることだってできたはずなのに、どうして。


 わからない。南雲の心理が……やつは何を考えているんだ?


 あのときから、その考えが脳内につきまとい、ついにはあんなことを口走ってしまうまでになった。



「えーっと……それは、その…………」



 ああ……柳が困惑した様子で苦笑いしている。自分でも何を言ってるんだと思う。


 今までと同じくお互い関わらなければ良い。そうに決まってる。なのに、何故あえて接触して相手の弱点を見つけるという選択肢が増えるのか。


 実際はそんなこと欠片も思ってないのに。



「あー……今のは聞かなかったことにしてくれ。さあ、術の練習だ練習」



 柳の脳内で処理できてないうちに話を切り上げ、術の練習を促す。


 幸か不幸か、さっきから駄弁ってばかりの俺達に睨みを効かせていた教師が視界に入ったため柳もそれ以上何も言わず、術の練習に勤しんだ。



「地泉!」



「砂じゃなくて土を創造しろ!」



「水票!」



「波紋が小さい!もう一回だ!」



 柳の術は全体的に小さい。普通科なら当たり前といえば当たり前なのだが小さすぎる。


 他の普通科の生徒はもっとひどい。発動すらできない者多いからだ。それを考えると、柳はまだマシな方か。



「証雷!」



 雷の術はマトモに発動するな。先程より少しだけ威力が増してる。


 なるほど。雷系が得意なのかもしれん。


 あまりハードに練習しても良くないから小刻みに休憩をはさみつつ練習していく。証雷だけはマトモになってるとはいえ、やはりすぐには上達しない。



「よし、5分休憩だ」



「うへぇ~……疲れた」



 地面に仰向けで寝転がって苦しそうに呼吸する。


 力の使いすぎも良くないな。10分休憩に変更するか。


 そのことを伝えようと柳に向き合うも、柳の視線は女子組に向いていた。また白石とイオリが争ってるのだろうか、と同じくそちらを見てみる。


 だが違ったようだ。柳の視線の先はイオリ達のいる場所とは全く違う方向に向いている。では誰を見つめてるのか。



「…………あ」



 視線を辿ってみると、ある一人の女子に留まった。


 一回も同じクラスになったことのない女子。だが霊能科では知らない者はいないくらい有名な彼女は今は普通科に移動して柳と同じクラスになってる。


 表情がなく言葉を発さないその女子はいつしか、人形というアダ名がついたと知ったのはここ最近のこと。


 おそらくペアだろう女子に見向きもされず他の女子にも見て見ぬフリをされてる彼女・轟木いばらをどこか気難しい表情で見つめる柳。


 柳でなくても眉を寄せるよな。あんなあからさまに無視するなんて。


 避けるとか逃げるとか、そんなものじゃない。まるでそこには誰もいないかのように誰も見向きもしない。


 少なくとも霊能科にいたときはそんなことはなかったはず。いったい何があったのか。もしや、人形と呼ばれることと関係してるのか?


 と、思考を巡らせていたそのとき。



「やばい……っ!」



 俺のすぐそばにいた柳が慌てた様子で飛び出して行った。


 一直線に轟木の元へ駆けていき、何かから庇うように轟木の腕を強く引き、自分の腕の中に閉じ込める。そしてその動作とほぼ同時に空から先端が尖ったナイフに似て非なるものが雨の如く降り注いだ。


 近くにいた女子が皆悲鳴を上げ、当たるまいと逃げ惑っている中、緊急事態だというのに全く表情を見せない轟木を守っている柳。


 腕や足にナイフが触れて小さな怪我が増えても轟木を守る体勢を崩さない。


 やがてそれは収まったものの、俺を含め状況を飲み込めずにいる者が大半だった。




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