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神様と友達な彼と最強くん  作者: 雨園 咲希
合同授業と編入生
100/230

その100

 イオリちゃんは鼻が良い。


 俺はあまり知らないけど、奥ヶ咲が信頼するんだから鼻が良いのは確かなのだろう。


 でも、さすがに今回は勘違いなんじゃないか?だって、学園内に妖怪が入り込んだら、学園を覆う結界が作動して妖怪が学園敷地内に侵入した証、すなわちサイレンが鳴り響くようにされているんだから。


 そのサイレンが何の反応もないということは、学園に妖怪はいないってことだ。



「なるほど……つまりあなたは私が妖怪だと言いたいんですか?」



 白石さんの問いにビクリとし、こくりと頷いた。



「先程匂いがどうのとか言ってましたが、あなたもしかして匂いで人間か妖怪か分かるんですか?」



 イオリちゃんがまたもやこくりと頷いたのを見て白石さんの表情が歪んだ。



「犬じゃあるまいし、そんな未知な能力信用できると思いますか?第一、この学園は妖怪が一歩でも中に入ればサイレンが鳴るでしょう。サイレンも鳴らないのにそんな人間としては理解できない超能力を発揮されても笑えやしませんよ」



 声のトーンを一ミリも変えず、冷静あるいは冷酷に吐き捨てる白石さん。チンピラに絡まれてたときも思ったけど、かなり冷めた人なんだな。


 イオリちゃん大丈夫か?言い負かされてるけど……


 そろーっと覗いてみると、奥ヶ咲に隠れて白石さんをすごい顔で睨んでいるイオリちゃんの姿が見えた。顔を真っ赤に染めて口をパクパクさせてる。



「確かに今回はイオリの勘違いかもしれない。けど、イオリの能力は本物だ!」



 イオリちゃんの能力そのものを否定され、奥ヶ咲が声をあげる。周りにいた人が何事かとチラチラこっちを盗み見てる中、イオリちゃん&奥ヶ咲VS白石さんの図が形成されていく。



「証拠はあるんですか。久ヶ島さんが匂いで人間か否か分かるという証拠が」



「イオリの能力は百発百中だ」



「そんなの証拠にならないでしょう」



 火花がバチバチ散り、周りの人が若干引いてる。


 一触即発。まさにそのとき。



「皆ー!もうペアの子見つかったかしらー?」



 マイクを手に持ち声をかける納賀先生。



 あ……ありがとおぉぉ先生ぇぇぇぇ!!



 にらみ合いは数秒で幕を閉じ、俺は奥ヶ咲と、白石さんはイオリちゃんとペアになって別れた。つってもイオリちゃんと白石さんは険悪ムードで、はぐれない程度に距離をとってたけどね。


 これから先大丈夫なんかな、あの二人。同室なんだから当然毎日顔合わせる訳なんだけど……顔合わせるたびにケンカしたりしなきゃ良いけど。



「ペアの人がいない人はどうすれば良いんですか?」



 手を上げてマイクを持つ納賀先生に質問する男子生徒。そうだ。全室二人部屋だけど、一人のとこもあるんだ。そういう場合はどうすんだ?



「あー、ペアじゃない子は悪いけどそのままで!多分次の合同授業までにペアになる子見つけれると思うから!」



 来週までにペアが見つかるってどういうことだ?


 生徒の大半が頭に疑問符を浮かべる中、納賀先生とは別の先生がマイクを手に取った。



「密集してたら授業ができんから、とりあえず皆散れ!ペアのやつと行動しろよ!ペアのいないやつは先生の前に集まれ!」



 これから何をするのか全く知らない生徒全員は、とりあえず先生の指示に従って校庭にバラバラに散っていく。一組一組がある程度距離をとってることを確認してから納賀先生にマイクを渡した。



「じゃ、これから合同授業始めるわよー!でもその前に注意事項があるわ。まずは霊能科の注意事項ね。力を使うときは加減すること。そんで普通科の注意事項は、無理に力を引き出さないこと。このふたつはちゃんと守ってね!」



 霊能科の生徒は仮にも陰陽師。討伐依頼をこなすほどの実力の持ち主が加減もなしに力を使えば怪我人が出かねないもんな。でも普通科の生徒は逆に力を使い慣れてないから無理に引き出せば最悪命に関わる。そこはきちんと管理しなきゃな。



「まあ、初めの合同授業だしそんな気構えなくても良いわよー!主に活躍するのは霊能科だもの!普通科の皆は見て覚える、って思っといてー!」



 ピリピリと張りつめた空気を感じ取り、にっこり満面の笑みを見せておちゃらけて見せる納賀先生。



「まず、合同授業での主な目的は霊能科の生徒の実力を伸ばすことと普通科の生徒の力を引き出し、陰陽師へと導くこと。そのために必要なことはさて何でしょう?」



 納賀先生の質問に何人か手を上げた。制服の色が普通科のと違うから全員霊能科の生徒だな。


 納賀先生に指を指された生徒が答える。



「ひたすら術を使うことです」



「正解ー!霊能科の子は討伐任務で術を使うけど、慣れた術しか使わないわ。そこで、いつもは使わない術を練習するのにこの授業がうってつけなの。土日に体育館と校庭を解放してるのは普通科の生徒だけだしね。戦闘手段は幅広い方が良いからね」



 確かに、使い慣れてない術で妖怪と対峙しようとする命知らずな陰陽師はいないだろう。失敗した場合、自分の身が危うくなるんだから。



「普通科の子は力を解放することを覚えつつ術の幅を広めるの。それなりに力を解放できる子もいるにはいるけど、霊能科に移動まではできないからね。初めは霊能科の子の術を見てそれに習うって感じかな」



 がむしゃらに一人で練習するよりもよっぽど力をつけやすい方法だ。術の出し方を重点的に特訓する人が多いけど、それより先に力の解放の仕方を覚えなきゃ意味がないからな。


 …………ん?待てよ。



「先生!霊能科の人に教わるってことは分かりましたけど、ペアになる意味はあったんですか?」



 俺の疑問を誰かがそのまま質問にしてくれた。それにも笑顔で応える。



「ちゃあんと意味はあるわよー!たとえばペアじゃなくてここにいる全員が一つの術を練習するとどれだけ先生がいても全員は見て回れないけど、ペアでやれば相手の子が上達してるのが分かるし、それを逐一先生に報せてくれればわざわざあっちこっち見て回らなくて済むからねー」



「ペアじゃない人はどうするんですか?てか、どうやってペアを決めてるんですか?」



「皆、入学時に学園長と一対一で話したわよね?実はそのとき、学園長は力の流れやその他諸々を敏感に感じ取って、誰と誰が相性の良いペアになるかを見極めていたのよ。主な判断基準は力の流れが正反対な二人らしいわ。ペアじゃない子は合同授業を見て決めるって話だけど、正直これは学園長の仕事だからわかんない★」



 ぺろっと舌を出して可愛くウインクする納賀先生。学園長、ちゃんと仕事してたんすね……でも姿が見当たらない。



「で、ここからが本題。基本の術、地・水・火・風・雷を発生させる簡単な術を使えるように特訓するのが初めの授業なのね。その五つをマスターしとけばある程度使えるようになるから、皆頑張ってね」



 地泉、水票、火緑、豊風、証雷。この五つが術の基本だ。攻撃性は皆無だが基本の力の流れを覚えるのによく用いられる。


 くぅ~っ!本格的に術の練習が始まるんだなぁ。早いとこマスターして南雲の力になりたいなぁ。てか、南雲見あたんねぇな。いつもはうざいくらい隣で騒いでるのに、どこ行ってんだ?



「じゃあいきなりやれって言われても分からない子もいるから、最初に霊能科の代表に術を見せてもらいましょう!」



 手招きして呼ぶと、生徒の中からよーく見知った人物が顔を出した。先生がいる前の方にいたらしい。気づかんかったわー。


 って南雲そんなとこにいたの!?てっきりサボるか俺にくっついてくるかするかと思ったのに!あ、よく見たらペアいない組に混ざってる。南雲一人部屋だったのか。


 ふと周りを見てみると、怯えた表情の人が何人もいることに気付いた。おそらく南雲が人殺しだとかいう噂を信じてる人達だろう。霊能科だけじゃなく普通科の人まで怯えてる。なんでそんな怯えてるのかな?南雲が術を使うから?こんだけ距離があるのに?


 静乃さんにもたらされた事実を知ってる俺からすれば、南雲のどこに怯えれる要素があるんだと言いたいんだけどね。


 そういや、静乃さんはなんで誤解を解こうとしないんだ?信じてくれなかったとかかな……



 納賀先生が南雲にちらっと視線を移し、にっこり微笑む。南雲もこくんと頷いて応えた。



「たかが基本の術で符はいらないと思うけど、今日は符を使ってねー」



「わかってますよ」



 ポケットから符を取り出して構える。納賀先生は南雲から離れて実況していた。



「さーまずは土を操る術・地泉から!はりきってどうぞー!」



 霊能科の代表ともあろう者が基本の術ではりきるはずがない。先生の実況を見事スルーして術を発動した。



「証雷」



 はーい南雲の十八番・雷の術ー。黄色い電流が南雲の符を囲うようにバチバチと音を立てて発生した。さすが南雲。空気読めねぇ。



「あっ、えっ……逆順かな!じゃあ次は豊風ー!」



「火緑」



 証雷を一瞬で消し、今度は赤とオレンジが混ざった火を目の前にボッと出した。南雲……少しは空気読もうぜ。



「うぇえっ!?じゃ、じゃあ今度は……」



「地泉」



 揺らめいていた小さな火がフッと消えて、地面からぽっこり小さな土の山が出てきた。実況の納賀先生が目に涙を溜めてる。南雲のやつ、得意なやつから順にやってね?



「うぅ……つ、次はぁ~……」



「水票」



 ぽっこり出た土の山は術解除と同時にサラサラと砂に戻り、その上に水の波紋が浮かび上がる。苦手な術でも、基本の術だからかそんなに力の流れが乱れることもなかった。つか、先生泣いてる!教師泣かしたよ南雲のやつ!



「うぐっ……さ、最後に豊風どうぞー……」



「豊風」



 水の波紋は消え去り、南雲の周りには風の渦が現れた。竜巻ではないけど微風でもない。そんな風が南雲を覆っている。実況してたはずの納賀先生はもう何も言葉を発さない。


 南雲!さすがに先生可哀想だよ!少しくらい空気読んであげてよ!あぁあっ、そんな冷めた目で納賀先生を見なくても良いじゃないか!確かに勝手に実況始めて何やってんだこの教師とか思ったけど多少はノってあげなよ!つーかメンタル弱ぇな先生!



「柳ー!!今の術は何点だった!?」



 右手を思いっきり左右に振って、以前のように評価を求める。皆の視線が俺に刺さってるって!今授業中だって!マジで空気読めやてめぇぇぇ!!


 口パクで「静かにしろ」と言ったのに何故か返答は意味不明なものだった。



「そ、そんな……今は授業中だぞ?そんなことを求めるやつがあるか!」



 若干頬を赤らめて狼狽えた様子の南雲……って、どう解釈しやがった!?



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