出会
現場検証に立ち会った後、美咲は電車に乗り家へと向かった。
椅子に座りながら、さっき拾った紙を見つめていた。
よくペンの付きが悪くなった時、適当に書くそんな状態だった。
頭の中では、男が電車にぶつかる瞬間が思い出される。
私の見間違いよね・・・
呟く様に言った時だった、
そうかな?
顔を上げる美咲。
・・・、あなた
美咲の前には御影が立っていた。
また会ったでしょ?
覚えていたみたいね、私を。相手してくれるんだよね?
・・・、まぁ、仕方ないわね。今日の今日だし。
有難う!
そんなに私に相手されたいの?
怪訝な表情の美咲。
えぇ、もちろん!
私、立花御影。あなたは?
立花美咲よ。あなたも立花なのね?今日二人目か。
1人目は?
立花宙とか言ってたわね。
ふーん。
そんな事より、
美咲さん見たんだよね?
見たって、何?
口無し。
御影が手で口を覆う仕草をしながら言う。
・・・、
その紙も変だなって思ってる、・・・当たり?
・・・まぁ、当たりね。
あなたは何か知っているの?
知らないけど、分かるの。
分かる?何が?
どの人が口無しになるかを。
?それはどういう意味?
なんだろう、感じとる?読み取る?
上手く言えないけど、分かる。
口無しになる人は私の知る限りだと、その人との距離を取っておきたい人、かな?
距離、ねぇ。
さっき一緒にいた連中にはそれを教えているの?
そうなの。
うーん、にわかには信じられない話ね。
ところで私には感じないの?
もちろん、あなたには感じないわ。だって会いたかった人だもん!
会いたかった?
電車が停車した。
あっ!いけない!
私ここで降りなきゃ、またね美咲さん!
え!ちょっと、待って!
慌てて御影を追いかけてホームに降りたが、御影は既に見当たらなかった。
・・・、変な子。
美咲は乗車し直し帰宅した。