表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
言葉の力を  作者: グヘヘ
6/8

目撃

・・・2番線に電車が・・・


目の前を通り過ぎる人々。

駅のホームの椅子に座り、ぼんやりとそれを美咲は見ていた。

疲れたな、今日は。

そんな事を思っていた。


目の前を行き交う人々の中で、なんとなく違和感の有る男がいた。

まだ、肌寒いとも言えない季節に薄手のコートで顔を隠す様に歩いていたからかも知れない。

目で追う美咲。


男は少しして立ち止まった。

ポケットに右手をやり、紙とペンを取り出した。

真剣な表情で何かを書いていく男。

美咲はいつしか男から目を離せなくなった。


間も無く2番線に通過電車が参ります。黄色い線の内側にお下がり下さい。


構内放送が流れ、電車がホームに近づいてくる。


男は涙を流していた。


プァーン!


突如、男は紙を投げ捨て電車へと飛び込んで行った。


嘘!やめて!

美咲が叫び、何人かが男を見る。


しかし、男はホームドアを越えて電車への自殺を遂げた。


キッキキッー!

電車が急ブレーキをかける音が響き渡る。


キャー!イヤァッー!

おい!飛び込んだぞ!

うわ!マジか!

写メ!写メ!

・・・、・・・?!


ホームは騒然となった。


美咲は呆然としながら前を見ていた。


少しして駅員が来て、警察も来た。


あなた、見てたんですね!

警官が美咲に問い掛けると、美咲はようやく我を取り戻した。

え、えぇ。


大丈夫ですか!?


えぇ、大丈夫です・・・

やや震えた声で美咲が続ける。

く、口が、・・・


何ですか?


あの人、口が、無かった・・・?


え?


飛び込む前に見えたの!口が、口が無かった!


・・・。落ち着いて下さい!気が動転してるんだ!医務室に行った方がいい!


え?えぇ、そ、そうよね。そんな訳無いわよね。

見間違い、見間違いよ・・・


大丈夫ですか?ショックなのは分かります。落ち着いて下さい。


フゥーっと大きく息をはき、美咲が言う。

大丈夫です。もう、落ち着いてきています。

少し1人にして下さい。


・・・、分かりました。何かあったらすぐ声掛けて下さいよ。


はい、有難うございます。


警官は美咲から離れ、他の人へと向かった。


少しの間目を閉じた美咲。


・・・、そうだ、紙!


目を開き、男が直前に投げ捨てた紙を目で探す。


あった!


すっと立上がり、紙を拾い上げすぐさま見る。


・・・?

塗りつぶしただけ・・・?

あんなに真剣だったのに、変だわ・・・


少し離れた所から、先程の警官が美咲に声を掛ける。

おい!あんた!大丈夫なのか?!


見ていた紙を慌ててポケットに入れ、答える美咲。

大丈夫です!けど、念のため医務室に行ってみます。


そうか、そうして下さい!


警官に少しお辞儀をし、美咲は歩き出した。













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ