第六章
タイム ガード
(次の日)
昨日の晩に支度を終えた私は、大きめの鞄を持って玄関に立つ。
両親は、朝は一言も喋ってくれなかったし、私も口をきかなかった。
いよいよ、今日は、例の見学会だ。
緊張感と期待感を持っていざ自転車にまたがる。
(学校)
待ち合わせ場所の校門に立つ。
部活動生は、校庭を走ったり体育館で、汗を流している。
もちろんみんな後輩だ。
五分ほど待っていると、私の目の前に凄い車が現れた。
リムジンだった。
輝くリムジンは、私を唖然とさせた。
「お迎えに上がりました」
そう言って出て来たのが忘れもしない、あのサングラス男こと山田教諭だった。
「こ、こんにちは」
私は、腰が抜けそうな感じがした。
全く前会った時と同じ格好だ。
「さあさあ、お乗りください。見学会に間に合わなくなってしまいますよ」
丁寧にそう言われ私は、頭を下げるとリムジンに乗る。
中は、広くて長い。そして、乗り心地は最高で高級感でいっぱいだ。
2人だけ乗るには、広すぎて落ち着かない。
私がキョロキョロしている間に車は走り出す。
「ご両親は、賛成されていますか?」
山田教諭は聞く。
「まあ一応」
と私は返事をする。
「そうですか…。今日から三日間よろしくお願いします」
山田教諭が頭を下げる。
私も慌てて返す。
「今日1日は、たくさんの説明を聞く日です。重要なのでしっかり聞いておくといいでしょう」
「分かりました。あの…何人くらい参加するんですか?」
「確か、7人ほどだったと思います。あなたも含めてね」
「たったの7人ですか?」
「はい、前にも言ったように限られていますので多い方なんですよ」
「そうなんですか!」
ということは、私以外に6人ということか……。
「それにしても、学校までどのくらいかかるんですか?」
私は窓の外を見つめて聞く。
「三時間で着くと思います」
「三時間って早いですね!!意外に近いんですか?」
「いいえ、近くはありませんよ」
「え……どの辺ですか?」
「まあまあ、乗っていれば分かります」
そう言われ私は不安になった。
(1時間後)
「もうそろそろですね」
人通りの少ない山道の途中、山田教諭が言った。
「そろそろって、まだ1時間しか……」
私はそう言ったが中途半端な道で車は止まった。
「さあ、乗り換えですよ」
山田教諭はそう言うと車をおりた。
「早くおりて下さい。行きましょう」
私は迷いながらも外に出た。
「ここからどうするつもりですか?」
私が聞くと、
「これは、見学会の参加者の証しです。これさえ持っていれば大丈夫ですよ」
と赤い厚紙を渡す。
どう見ても何も書かれていない。
「案内しましょう。ついてきてください。その赤い参加証をしっかりと持っててくださいよ」
そう言うと山田教諭は、道を外れて木々の茂る細い草道に入っていく。
「あの、本当に山奥にあるんですか?」
念のため聞いてみる。
「いえ、ですから乗りつぎですよ」
意味が分からない返事だ。
とりあえず後に続こう……。
そう思ったとき、右の木に何か看板がかかっている事に気づく。
『T・T入口』
こう書かれている。
何か意味があるのだろうか……。
そう考えながら、草道に入る。
「この木は、目印なんです」
そう言うと、山田教諭はポケットに手を入れて何かを取り出す。
『この木』とは、大きな木で周りの木よりも目立っていて、かなり太めだ。
「参加証持っていますよね?」
聞かれたので、赤い厚紙を見せる。
よく見たら、教諭の手にも黄色い厚紙が握られている。
「私がやった事をしっかり見て真似てください」
教諭は、そう言ってから黄色い厚紙を太い木の深く窪んだ部分に当てた。
すると驚いたことに、その木から『ピーッピーッ』と音がした。
「さあ行きますよ」
教諭が声をかけたとき『ガシャガシャ』音がして木の表面に扉ができた。
私は、あまりに驚きポカーンと口を開けたままの状態だ。
「この木は、コンピュウターで出来た特殊な見せかけの機械です。驚いたでしょうが、ただの優れたマシーンですよ」
驚いた私にそう説明し、教諭は窪みを使い扉を開けて中に入った。
「さあ、同じように」
教諭が言い終えるか終えないうちに、扉は閉まってしまった。
そして、さっきと同じただの木だ。
私は、赤い厚紙を握りしめて、ゆっくりさっき見ていた窪みのところに当ててみた。
『ピーッピーッ』同じように音がした。
一呼吸して気持ちを落ち着かせた時、『ガチャガチャ』と音が鳴る。
扉が現れると興奮してしまい、思わず
「すごい」
と呟いてしまった。
窪みを使い扉を引く。
目の前にあったのは、普通に乗ったことのあるエレベーターと似た空間だった。
「さあ、よくできましたね。乗ってください」
立っていたのは、もちろんサングラスをかけた男。
やや興奮しつつ、私は中へ入る。
扉が閉まり、山田教諭の隣へ立つ。
乗ってしまうと後はエレベーターと同じように、壁にあるボタンを押すだけらしい。
『T』ただこの文字が書かれたボタンしかない。
教諭は、表情一つ変えずボタンを押す。
「これは普通のエレベーターと変わりません」
一言説明したとき、下に降りて行くあのエレベーターの感覚と『ヒュー』という音がした。
地下に向かっているのだろう……。
15秒でエレベーターは、停止して『ピィーッピ』と音がした。
『ガタガタ』音が鳴り、扉が自動的に開く。
「さあ、ついて来てください」
隣から教諭が言った。
教諭が先に外へ出る。
私も後に続くと、そこに現れたのは駅だった。
「もうすぐ特急が来ると思います。弁当を用意してありますので取りに行きましょうか」
教諭は、駅員室らしい所へ向かう。
私もその後を歩く。
駅には5人しか人がいない。
弁当を食べている人や時計を見ている人ぐらいだ。
みんなスーツをきて、山田教諭に似た格好をしている。
サングラスも数名いた。
「鈴木、川下みゆの弁当は届いているか?」
教諭は、かなり慣れた口調で駅員に話しかける。
「ああ、もちろん」
そう言って駅員は弁当箱を手渡す。
「ありがとう。今日は混んでいないな」
教諭は駅を見渡して言った。
「ああ、今日は朝混んでいたよ。何か問題でもあったのか?」
少し小声の返事だが、私にはしっかり聞こえた。
「いや、恐らく奴らが新しい攻撃態勢で挑んできたのさ。あの方も機嫌が悪いからな」
教諭は意味ありげにそう答えると、私の方をチラリと見た。
「また詳しくは今度話そう。司令部から離れるとお前も情報がなかなか受け取れないんだろ?」
「ああ、お前しか相手にしてくれないからな。俺はここでも嫌われもんだ」
そう言って駅員は笑う。
「じゃあまたな」
教諭はそう言って私に弁当箱を渡した。
「これが、あなたの昼食になります」
さっきの会話と違って私にはかなり丁寧だ。
「ありがとうございます。さっきの駅員さん知り合いなんですね」
「はい、私があなたぐらいの時にともに学び、働いた同僚です。今では事情があって彼はここで働いているんです」
とそれだけ言うと教諭は、私をベンチの方に案内して座るよう指示した。
しかし、座る暇もなく、すごい音がして特急新幹線が現れた。
「さあ、『T・T』がきましたね。これに乗ります」
教諭は、そう声をかけた。
新幹線は、音を立てて止まるとドアが自動的に開く。
私と教諭は一緒に新幹線に乗り込んだ。
どうでしたか?
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