第三十四章
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「今年はどのクラスが優勝でしょうか! 実況は私、村田でございます。ちなみに静香の兄であり磁石能力をもつ超いけてる男ナンバーワッッィテ!」
放送部の村田先輩の顔面にペットボトルが命中した。
海岸には全校生徒集まっている。
先輩たちも緊張しきった表情でざわついていた。
村田先輩は小さな舞台の椅子に座り、マイクに向かっている。
「さてさて、待ちに待った戦いが今日行われる! 皆さん今のお気持ちは? ん? 余裕? それとも緊張してる? まあ、どちらにしても今日この日まで努力してきた結果は、今ここで発揮しなければいけませんよ。ルール分かってない奴、いるか? ま、説明はしときましょうか」
村田先輩は咳払いをする。
「まず、このずっと向こうをご覧あれ」
私たちは一斉にそちらに目を向けた。
小さな緑の点が見える。
「あの緑のもの見える? 見えない人はここにある望遠鏡をどうぞ! あれが我が校自慢の島であります。各自作ったであろう、船でも飛行機でも、とにかく何かしらで島へ直行してください。あ!? ちなみにこれ競争だからちゃんとスピード上げてください。島に付いたら、さぁ! ここは聞き逃すな諸君」
村田先輩は立ち上がると舞台そでにあった黒いカーテンの所に立った。
私たちはそこに目をこらす。
「これが何かって……? そうこれは、ジャ〜ン! モニターだ」
先輩がカーテンを引っ張るとそこにモニターが現れた。
「ポチッとつけましてと! ここに見えるのな〜んだ?」
モニターには赤色・青色・緑色のそれぞれの旗が映っていた。
それらは別々の画面であり、周りにはモザイクがかかっていた。
「その通り、旗だ。三年生は赤、二年生は青、一年生は緑。この旗は最も大事だ。これを島から見つけ出し、ここまで持ち帰ること! これが最低限のルールだ。旗の色、覚えたかい? あ! そう言えば知ってたかい? うちの妹の静香ちゃんは旗上げゲームで優勝したこともある有能な子なんダッッッッッッヨ」
村田先輩の顔面に今度は靴が飛んできた。
しかし、生徒達はざわついている。
緊張は高まる一方である。
「僕らの旗は緑か」
賢は顎をなでながら言った。
トムは鼻で笑う。
「緑じゃ、見つけにくいって言いたいだろうが、いい訳は通用しない。負けてもそんな事口にするな」
賢はフンといった態度で「しねぇよ」と答えた。
「いよいよだよ匠君! 僕たちの努力の結果が出るといいね」
心は興奮した様子で言った。
真妃は緊張しきっているらしく何も言わない。
匠は眼鏡の奥を光らせ、周りを観察している。
「みんな、深呼吸しよう」
私は五人に呼びかけた。
五人とも気持ちは同じで、勝つ気持ちしかないのだ。
「さて、私村田は、たった今ヘリに乗りました。みなさんの戦いの模様を上空から見守らせていただきます」
上空ではヘリに乗った村田先輩が手を振っていた。
「それでは早速乗り物のご登場であります。さぁて先生方お願いします」
先輩の合図で海の方からザバーンと潜水艦が飛び出した。
「最初に登場したのは、クラスマッチ出場初となる一年生の潜水艦。なぜ潜水艦にしたのか気になるところですが、これは本番に期待いたしましょう」
匠は嬉しそうに微笑み、私たちに頷いた。
丸い窓がいくつか付いている、見た目は普通の潜水艦だ。
だが、私たちの潜水艦は特別なのだ。
「続きまして、去年は屈辱のクラスマッチを味わうこととなった二年生。先輩からの惨敗を今年はどう復讐するつもりか注目であります」
空から現れた青色の飛行機は大きく『2』と描かれており、身がるそうできれいに円を描いていた。
「最後に我が三年生の船。素晴らしい出来です。特殊部隊のような船の出来は、私も制作に加わりました。三年間で築き上げた能力・体力・知恵をいかし、後輩に打ち勝ちましょう」
大きい赤色の船は大砲らしき物もついていた。
本当に特殊部隊のようにきっちりと形も整い、レベルの高い仕上がりだった。
「どの乗り物も見た目は素晴らしい! しかし、このクラスマッチは見た目が勝負ではない全ては何より速さだ。一体どんなレースがみられるのか楽しみであります。審判は教員一同様です。どうぞよろしくお願いします。実況は引き続き本番でも私が行います」
私は二年生の飛行機と三年生の船を見比べ、どちらも手ごわいと感じた。
しかし、匠は自信満々だった。
「ぼ、僕たち、か、勝てるかもしれませんね」
賢は首をかしげ私に囁いた。
「僕ら本当に大丈夫だと思う?」
私も首をかしげて見せた。
潜水艦というのはかけであって、勝てるという保証はない。
匠と真妃は潜水艦にしたことに、ちゃんとした理由があるといった。
計算通りだと言ったので信じては見たが実際は分からない。
特殊なつくりがあることを少しは説明を受けているが、はっきりとは知らなかった。
「いよいよだ、一年生。怖いか?」
大威張りで歩いてきた和先輩は言った。
「怖くなんかありませんよ」
私が答えると、後ろにいた先輩たちもくすくす笑った。
「潜水艦? 俺達をなめてんのか? 海の中でも旅しようってか! そんな甘い戦いじゃないぜ」
潜水艦を馬鹿にされ匠は真っ赤になっている。
真妃も後ずさりし始めた。
「先輩方だって船じゃないですか?」
今度は反対側から静香先輩が現れた。
腕組みをして、熊先輩と並んでいる。
「船だからどうした? 見た目は関係ないといったろ? 潜水艦は見た目も速さも劣っているだろうさ。だが船はどうだろうか? はたして撃ち落とされる可能性のある飛行機より先にゴールするかしないか」
和先輩は着陸した飛行機を横目にして言った。
「そうやって言ってられるのも今のうち。三年生は卑怯者が多いことぐらい承知の上よ。あたしたちの飛行機は先輩方の船を爆破することもできる」
静香先輩は不気味に微笑む。
熊先輩はボリボリ飴を噛んでいた。
「あのアホずらがいないと寂しいだろ? 静香、相棒はまだベットの上で寝たふりか」
和先輩の後ろにいた三年生がまた大笑いした。
「拓の事ならご心配なく。先輩こそ弟の心配したらどう?」
静香先輩の眼が涙で光っているのが分かった。
拓先輩の事を馬鹿にされ、怒りを抑えているのだ。
「心配には及ばない。弟などこの世にいないね。俺は兄貴しかいないんだから」
和先輩は二タッと笑うと、船の方へと戻って行った。
熊先輩も静香先輩に慰めの言葉をささやくと、飛行機の方へと歩いて行った。
「大丈夫ですか?」
真妃が静香先輩に声をかけた。
先輩は黙ってうなずいた。
「ほんと、嫌な奴ですよ」
賢がため息交じりに言った。
「あんなの僕たちがやっつけてしまおう」
心もやる気満々に声を上げた。
静香先輩はハアーと息を吐くと
「三年生はずる賢いから気をつけなさい。あたしたちも手加減はしないけど、あなたたちも頑張って」
といって、去って行った。
「よし、乗ろう!」
賢の合図で私たちは潜水艦へ乗り込んだ。
中には特別な自転車が設置され、操縦席には大きなモニターが付いている。
「さてさて、皆さん乗り込みました?」
村田先輩の声が上の方から聴こえた。
上空の声が聞こえるようにスピーカーの設置もしっかりされている。
「では、私村田がスタートといいましたらスタートしてくださいね。準備は整いました?」
トムは自転車に乗り、私と心は後ろの椅子に座るとシートベルトを装着した。
賢と真妃は運転席の両サイドに座り、匠はその時をまちハンドルを握っている。
「落ちついていこう」
賢が小声で言った。
「それでは、3・2・1・GO! さあレース開始だ」
村田先輩の合図でエンジンのすごい音とトムのこぎだす音が始まった。
トムの能力を生かしたこのスピードに私たちは改めて驚いた。
トムの脚の脅威の速さは自転車に乗っているとはとても思えず、全く脚が見えないほどだ。
潜水艦はいきなりスピードを上げた。
「2年生の飛行機! 思いもよらぬ速さであります。いやはや三年生船により遅れをとっています。一年生はというと……見えません。一体どうなっているのか」
村田先輩の実況に全員が耳を傾けた。
賢は大笑いする。
「これで馬鹿な三年生も終わりだね。口ほどでもないさ」
その時匠が小さな悲鳴を上げた。
「お、思ったよりも早く来てしまいました」
一体何の事なのかさっぱりだった。
賢と真妃はお互いに顔を見合わせた。
2人とも何の事だか分かっているようだ。
「大丈夫そう?」
真妃が不安そうな表情を浮かべた。
匠は顔をひきつらせ、こちらを振り返った。
「2人ともシートベルトをはずしてこっちへ」
私たちは言われるがままにした。
「け、賢君と真妃さんは、例の物を」
匠はメガネを傾かせ、指示をした。
上の方ではどうやら乱闘が始まっているらしい。
村田先輩の興奮した声が聞こえる。
「三年生エースの和君、上空に煙玉乱射! おーっと体勢を崩したぁぁ! 二年生スピードダウン。おっとここで反撃出ました。こちらも煙玉だ」
賢と真妃は機内の中央へたった。
心は実況を面白がって聞いている。
すると匠が真剣な表情でこちらに顔を向けた。
「い、いいですか? 集中してくださいね。こ、これから危険な賭けにでます」
なんだか緊張感が高まってきた。
賢はポケットから四角い物を取り出した。
携帯のような感じだがボタンは1つしかない。
「危険って?」
私が尋ねると匠はメガネをクイッとあげ、苦笑いして見せた。
「だ、大丈夫ですよ、き、気を抜かなければ! では、も、もうすぐなのでトム君頑張ってください」
トムは必死になっていて何も聞いていない。
賢は手に持っていたボタンを押した。
『ウィーン』
何か大きなレバーが下から現れた。
丈夫そうである。
「三年生、どうやら一年生に狙いを定めたようだ。和君下の方に何かをぶち込む気だぞ」
村田先輩の実況に私たちは凍りついた。
匠は賢と目を合わせた。
賢は頷く。
「い、いいですか、2人とも僕と一緒にハンドルをしっかり握ってください。そ、そして左右にハンドルが傾かないようしっかりとつかんでおくのです」
私と心は匠の握っているハンドルを横から握る。
「この状況で何をするの?」
私の言葉など聞きもせず、賢と真妃はレバーを握った。
その瞬間潜水艦はグラッと揺れたが、スピードだけは出ていた。
「和君一体何をやらかした? 実況不可能の攻撃がなされた模様。一年生は無事か?」
村田先輩の声はさらに興奮を感じられた。
「フフフ、この程度でこの潜水艦は沈まないさ」
賢は満足げに笑った。
「で、では行きますか。しっかりと集中してください。3・2・1」
匠の合図で賢と真妃はガチャッとレバーを引いた。
その瞬間まるで爆発で吹き飛んでいるかのように私たちはすごい力に押されていた。
機内なのにもかかわらず、強風に襲われたようだ。
ハンドルが左右に揺れるが私たちは必死で押さえた。
賢や真妃もレバーをしっかりと握り、力と戦う。
トムはというと自転車から吹き飛び、後ろの壁に張り付いていた。
「も、もうすこ……し……です」
匠が食いしばりながら言った。
もう耐えられないと思うほど力を込めハンドルを握っていた。
「まだか?」
トムの怒鳴り声がした。
「匠……君! もう……限界だよ」
心がそう言った時、いきなりフッと力がなくなり私たちは床に転がった。
潜水艦が空に飛び上ったように軽くなった。
「な、なんと! 潜水艦が数十メートル先に飛んでいます! 信じられますか? 飛んでいます」
村田先輩の言葉で本当に飛んでいるのだと分かった。
「け、賢君、レバーを倒してください」
匠が大声を上げた。
賢は体を起こすと引いたレバーを今度は思いっきり前に倒す。
『ガガガガ』
大きな音がした。
「おっと、潜水艦に翼が生えた! なんということ」
先輩の実況で私たちはガラス越しに外を見た。
先程までこわくて見ないようにしていた外の風景。
下に海が見え、先の方に島が見えた。
「飛んでる! 僕たち空を飛んでるんだ」
心が飛び上った。
「こ、今度は着地します」
匠はハンドルを握り、額の汗をぬぐう。
賢と真妃はトムを引っ張りおこした。
「ひどい運転だな」
トムは嫌味っぽく言うとため息をついた。
空飛ぶ潜水艦は無事、島の砂浜に着地した。
匠はフゥーっと一息つき、みんなの顔を見つめた。
「す、すいませんでした。で、でもこれで先手を切ったことになります。は、早いとこ賢君とトム君に旗を見つけ出してもらいましょう」
トムは壁にもたれ、賢を横目で見ていた。
賢は微笑むと『いよいよ』とばかりに首を回した。
「さぁ新入生に先手を取られた二年生と三年生急げ急げ! 一年生諸君は急いで緑の旗を捜したまえ。先輩達に逃げ切るのかな? 続きが気になるところです。おっと三年生またも二年生に攻撃開始!」
村田先輩の声が聞こえ、匠はモニター画面を切り替えた。
これには後方の様子が映し出されている。
「ウァーオ大乱闘だ」
心が興奮気味に言った。
賢とトムは緊張しているのか表情をひきつらせていた。
匠が出入り口のドアを開ける。
「け、賢君とトム君、こ、これをかけてください」
匠が取り出したのは黒ぶちの眼鏡だった。
「なんだよ! 邪魔になるうだろ?」
トムが不機嫌な口調で言った。
匠は少しひるんだが、賢とトムに黙って渡した。
「こ、これは潜水艦のモニター画面とつながっていて、つ、通信もできます。こ、困った時にも使えるし僕らも君達の状況が分かるんです」
トムは無理やり持たされた眼鏡を疑わしげに眺めた。
賢は黙ってそれをかけた。
「ね、念のためですが、こ、これも持ってください」
さらに匠は黒い高級そうな腕時計を二つ取り出す。
トムは眼鏡をかけ、乱暴に腕時計を奪った。
「これは何の役割だ? 時間ならお前らが教えてくれればいいだろ?」
匠は微笑んで誇らしげに腕時計を指差した。
「こ、これは武器なんです。こ、これを投げるとトム君の腕時計は高音の耳が痛むような音が鳴り出します。な、投げるだけですから、あ、後は逃げてくれればOKです。け、賢君は耳がいいので逆効果にもなってしまいますから、け、煙が出るようにしておきました。ぶ、武器というよりは防御に使えます」
トムは黙って手首に腕時計をはめ、賢も指示に従った。
「さぁ、いよいよ三年生がご到着! 二年生あと少し。さあこのレースどうなる!?」
村田先輩の声は上空で聞こえた。
もう追い付かれているようだ。
賢とトムは顔を見合わせ、頷いた。
「ぶ、無事を祈ります」
匠の言葉と同時に二人は外へ飛び出し、林の中へはいって行った。
モニターには二つの目線で映像が映し出された。
右は賢、左はトムだ。
「この二人に任せて大丈夫なの?」
真妃は不安そうに匠に言った。
しかし、匠の代わりに心が答える。
「いいんじゃないかな? このさい決着付けてしまえば」
「おっと一年生二人がさっそく、潜水艦から飛び出しました。二、三年生いそげ!」
村田先輩の声が響き渡る中、私たちは不安ながらもモニターの様子を見守った。
どちらも草をかき分け進んでいく。
「緑ばっかだな」
トムの苛立ちの声が聞こえた。
トムは賢と距離を離してから、なるべく慎重に速度を落として、そこら中を見渡している。
なぜか、彼の周りは草で覆われている。
一方賢の方は、草のない方へと進んでいた。
耳を澄ましつつ、走りまわっている。
二人から必死な様子が伝わってきた。
「ここで三年生の和君、何やらバイクを持ち出しました。これは、反則? いいえ、違います。もちろんありですよ! 和君を先頭になんと三年生男子集団がバイクに乗り島の中へ乗り込んだ! これは他学年のピーンチ」
匠の表情が曇った。
計算外だったという表情だ。
武器は使ってくるだろうと思っていたが、乗り物で来るとは思っていなかったのだ。
賢とトムも焦りを見せた。
賢は冷静さを失い、何やら、暗い道に入ってしまった。
「こんなところで、僕がくたばるわけない。父親の血を引いた立派な息子だ」
などと変に呟き始めた。
と、心が通信のボタンを押して怒鳴った。
「賢君! 後で君の秘密をみんなに暴露しちゃうよ。もっと冷静に道を選べ」
今の言葉に効果があったのかと言えば、なんとも言えない。
賢の機嫌は損ねてしまったようだが、走るのをピタッとやめた。
「想像以上に過酷だ」
賢は息を切らして呟いた。
一方トムはというと草の中を抜けて、大きな坂を登っていた。
しかし……、
「おっさき〜♪」
バイクに乗った和先輩がトムに手を振って、坂を上がった。
トムは必死になったそれを抜こうとしたが、あちらも速度を上げた。
「悪いが、優勝は三年のものだ! じゃあな」
高笑いが聞こえ、トムは悔しそうに膝をついた。
真妃が顔をしかめて、何か言いかけたが、匠が手で制した。
「ぼ、僕らの力はこの程度じゃありません。で、出来る限り二人を援護しましょう」
真妃は仕方なく島の地図を広げた。
賢をなんとかこの道から脱出させるためだ。
「本当に勝てるかな」
私はみんなに聞こえない声で呟いた。
賢もトムも自分自身の勝敗しか頭にない気がしていた。
「なかなか、旗が見つからないようですね! 二年生、熊君、大きな岩を転がし、川を渡りました。素晴らしい怪力だ。未だどの学年も旗を手に入れておりません!」
つづく
最近作者が都合により忙しいため更新がかなり遅れておりますがご了承ください。すいません




