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第十五章

「タイムアウトだと!」


鉄は合流したとたん大山さんに怒鳴りつけた。


「まあまあ、校長先生は変わった人なんだ……こんなゲームをした理由も君たちを楽しく見学させるための1つであって」


大山さんはとても困った様子だ。


「でも、楽しく見学どころか、危険な目にあわされてばかりでした」


真妃もさすがに黙ってはいられないらしい。


「だから、その……少しずれた人なんだよ」


「そういう問題じゃないと思いますが?」


賢も嫌味たっぷりに言った。


「とにかく、落ち着いてくれ。このことは僕の方からお詫びする。でも……、タイムガードになるという事は、こういう危険な事さ」


大山さんは俯いていた。


「でもまあ、ホントに校長先生変わってるよね? こんなやり方で僕たちの力を見て、危険性を学ばせるなんて……」


心は笑う。


「たしかにね、他に考えられなかったのかな?」


私も心と同意見だ。


「確かに君らが言うように、オーバーすぎたかもしれない……。でも、本当に僕にも理解できないほど校長は変わってて、それでもこの学校を支えるほどの力と頭脳を持ってる。入学して1年も入れば何もかも理解できる!」


大山さんは頭を深く下げた。


「だけど俺、完全に入学しようとは思えなくなった」


鉄は首を振った。


「鉄! それは不可能……反対されるだけ!」


真妃はいきなり慌てた表情になった。


私達には何の話なのか分からない。


「確かに、2人にはお世話になったけど、信頼できないものに俺は近づきたくないんだ……。例え反対されたとしても!」


鉄はあまりこの話をしたくないのか真妃から目をそらしている。


「でも、2人は引きずってでもあなたをここへ連れて来ると思う!」


真妃は心配そうに鉄を見つめた。


「いや、そんな事されることぐらい承知だ! 出て行く覚悟もある。それに俺は自分の人生ぐらい自分で選択して切り開く。反対されるぐらいで意志は曲げないし、自分1人でもやっていける」


鉄はだんだん言葉に力が入っていた。


「そんなこと無理! だって鉄はもともと……」


「やってみなきゃ分からないんだ! お前には関係ないだろ?」


鉄の口調に真妃は黙りこんだ。


「もうこの話はやめよう!」


気まずそうに鉄は俯いた。


「と、とにかく次は中庭に案内したい! ついてきなさい」


大山さんはそう言って私たちを誘導した。


みんなはすっかり黙り込んでいた。


鉄と真妃に事情を聞くわけにもいかないが、他人とはいえ気にはなる。


足が痛いのでゆっくり歩きながら進んだ。


何人かの生徒ともすれ違い、そのたびに頭を下げられたり、指をさされコソコソとされたりした。


数分歩くと広い中庭に出た。


まるでグランドのようだが、ところどころに木が生え、机といすが置かれ、まさに生徒達のくつろぎの場といえる。


「ここは自慢の中庭! すぐそこに図書館もあるから本も読める。休み時間になるとたくさんの生徒がキャッチボールや昼寝、読書やお茶をする。快適で空気もよくてストレス発散や気分解消にはもってこいさ」


大山さんはそう言って伸びをした。


「君たちもお昼までくつろいでいいよ! そこにはさっきも言ったが……図書館に売店もあるから、本もここで読めるし、お菓子もジュースも外で飲み食い出来る。昼寝もよしだ」


「先生、その前に僕犬に手を噛まれたので少し手当を」


賢は少し赤く腫れた手を見せた。


「ああ、そうだな。すぐそこに医療室もあるんだ! 案内しよう。ああ君もだったね?」


大山さんは鉄を見たが、鉄は即答で


「平気ですよ! 慣れっこですし、これぐらいなんてことないです」


とすました顔で言った。


「じゃあ、昼まで自由時間としよう! 中庭、図書室、売店以外の行動は禁じる」


そこから自由時間に移った。


私は木陰に座って疲れた足を休めながら、風に当たった。


「気持ち良さそうな場所……私もいい? 足が痛いし」


真妃は私にそう言って隣に座った。


「さっきは、ごめんなさい。みんなの前であの話はすべきじゃなかった……」


真妃は私が聞くよりも早く話を切り出した。


「私はいいけど、何か大変そうだね? 相談にのってもいいよ」


私はそう言ったが真妃は首をふった。


「これは、私が軽々と他の人に言っていいことじゃないから」


「ごめん。会ったばかりで話せるような事じゃないよね。何も知らない赤の他人が首を突っ込むのなんて余計な事だし」


「違う……そういう事じゃない。私の口からは何も言えない。鉄の事はちょっといろいろあってね、前々から心配してたんだけど」


真妃はいろいろと悩んでいる様子だった。


私はその事にふれてはいけないと分かった。


「図書館、行ってくる……調べたい事があって」


私は何かを思い出したふりをした。


「調べたいことって? あ! 別に言いたくなければ……」


「大丈夫、この学校の事少し探るだけ。私この学校の事、知らないこと多いし。それに見るからに秘密だらけって感じでしょ? 秘密が潜んでいるとしたら見つけないと気が済まないし」


私は嘘をついて図書館へ小走り。


足はかなり痛かったけど……。


おしゃれなドアを開けると中はびっくりするほど広かった。


棚は高すぎるし、本は上から下までギッシリ!


見て行くとあらゆる種類のジャンル本が置かれ、はしごまで付いていた。


「おはようございます。いえ、はじめまして! あら、川下の娘さん?」


眼鏡をかけたしわだらけの真面目そうなおばさんが話しかけてきた。


「はじめまして、えっと〜」


「おばさんで結構よ、それでこの学校じゃ通るの」


「お、おばさんで? ホントに……いいんですか?」


「ええ、私は昔からそうなの」


「昔からって? いつからですか?」


「私はそこまで馬鹿じゃない! そんな事言ってしまったら年がバレてしまいますからね」


「じゃあ、あの……どうして父を?」


「ああ、やっぱり当たってたのね? だって、眼がそっくりだもの」


「いえ、私は母似です!」


「ええ、お母さんにも顔の輪郭とスタイルは似てるけど……まあ、子供の頃のお父さんにもそっくりなのよ」


「え! そうなんですか? 知りませんでした……えっと、子供の頃って?」


「あら、聞いてなかったのね? あなたのご両親はこの学校を卒業したのよ」


「や、やっぱりですか?」


私はあの男に父さんの話題を出されて以来少し感づいていた。


「そうなのよ! あなたのお父さんもお母さんもよく知ってる。2人はよくここに来てたし、お父さんはクールでかっこつけで」


「え! そうなんですか? 私父の事も母の事もあまり……知らなくて」


「自分のご両親なのに?」


「は、はい」


「全く相変わらずの性格だね!」


「何もかも知りつくしてるんですね?」


「もちろん、話せば長くなりそうだけど……時間はある? 座って話しましょうか?」


「ぜひ、そうしていただけますか?」


私は少し興奮していた。


聞いたこともなかった2人の過去は興味も持ったことがなかったが、今となっては別だ。


私はきれいなテーブルの周りの椅子におばさんと腰をおろした。


「私はこの図書館の管理人として何年も働いているの。たくさんの生徒を見てきたんだけども、その中でも最も印象に残っているというか……驚いた生徒がいたの! その子は妙に不思議な子だったんだけどね。今じゃ、この世界からかけ離れて好きなように伸び伸びと暮らしている事でしょう」


おばさんは微笑んだ。


「じゃあ、その生徒っていうのが父なんですか?」


私は待ちきれずに聞いた。


「そう、その通り! 最初その子がここに入って来た時はごくごく普通に見えた。『ここには歴史の本もおいてますか?』って初めて話しかけられて、私はその子を歴史の棚に案内した。それからの事だった……毎日ここへ来てはノートにずっと、歴史の太い本を日をおくことなく写し続けていた。私はただの歴史好きかと思ったけど、1年間で全冊240冊を写し終えた時にはただものじゃないと確信した!」


「さすがに1年間もここに通っている子なんだから、私とあなたのお父さんはいろんな話をしたりして、すごく親しくなった。私が初めて写した理由を聞いたら『覚えるためですよ』なんて真面目に答えてた。でも話すとユーモアで面白い! だからクラスでも人気者だったし、成績もトップ。どんな子にも負けず卒業しても、超エリートのタイムガードとして、その若さでチームを仕切り活躍し続けていた」


「で、でも今は違いますよね? だってのんきに商売してますし」


私は意外な父の過去を聞かされて戸惑った。


「うん、あの事件があって間もなくタイムガードを引退して、田舎に移り住んだと聞いていたけど……。少し残念ね、仕方のないことだけど」


「あの、事件って?」


「それは、ごめんなさい! 私に関わりのないことだったから言えないの。でもね、これから先いつかその事を知る時が来ると思う。でも今じゃない!」


私はまだ気になっていたがもう聞かないことにした。


「お母さんも元気にしてる? あの子は昔は悪ガキだったからね!」


「え! 母がですか?」


おばさんは優しく頷いた。


「本に落書きをするは、学校で問題を起こすはで何かと騒がせていた。でも優秀でお父さんとチームも組んで、卒業後タイムガードの最高チームになっていたの。まあ、2人とも周りからひがまれやすくて、よく愚痴をこぼしにここに来てた! でも2人ともすごく面白い話をしてくれた……。あの例の事件から2人は少し変わったみたいだけど、あなたがここに来たこと、私は歓迎する! もちろん入学となると2人は、絶対に許さないでしょうね」


また話が謎の事件に戻ってしまったので、少し聞きたくなったが何とか抑えた。


「そこはあなたが自分で判断しなさい! 2人が嫌でも、あなたは1人の人間であり、2人に縛り付けられるような人生を送る必要なんてないから。人の道をそれない限り意志を尊重すべき! それに少し期待してるの。エリートとエリートの間に生まれた子が馬鹿なはずないでしょ? だから今きっとあなたは注目されていると思う。この学校でね」


私は教頭のあの一言が心の中で引っ掛かっていた。


『噂は本当か』


「とにかく、あなたのご両親はあなたが思ってるほど悪い人じゃない。しっかりとしたいい2人の親をあなたは持ってる。大切にしてください!」


おばさんはそう言って、大事な用事があるからと私に別れを告げた。


どうやら私と両親とこの学校……謎が多くあるらしい。


「み、みゆさん、あ、あなたも、ど、読書ですか?」


匠が現れた。


「あ〜、うんちょっと……調べ物が」


「て、手伝いましょうか?」


「あ、大丈夫だから、ごめんありがと」


私は一冊の本を持った匠にそう言うと、例の歴史本が置かれている棚を探した。


棚にはジャンルが書かれているのだが、歴史という文字はなかなか見つからない。


そして8列目の棚でやっと見つける。


「す、すごい!」


思わず声が出た。


どれも古い本で分厚い。


それが1列ごとにズラッと並んであった。


『タイムガード育成校の歴史』


1番最後にこんなタイトルの本があったので、開いてみることにした。


思ったより重く、内容も深いようだ。


古くて読みにくい文字もあるが、謎をつきとめるべくその本を持ち近くに置かれた椅子に座った。


タイムマシーンの仕組みや作った人物たち、歴代校長、大事件などが書き記されていた。


私はパラパラとめくっていったが、大きな事件の記されているページに父と母の名前はなかった。


私は本をパタンと閉じて元の場所に戻すと図書館を出た。


外には心と真妃と賢がそれぞれいた。


賢は真面目に本を読み、真妃は木に寄りかかって考え事をしている様子だ。


心はただ地面に座って、アイスをペロペロなめていた。


私は心に声をかけた。


「そのアイス売店でかったの?」


「うん、そうだよ!」


心はそう答えてまた遠くを見つめながらペロペロとアイスをなめる。


「鉄は?」


「ああ、鉄君なら手当てしてもらってどこかで寝てると思う」


「寝てる?」


「ただの昼寝だよ!」


そう言われ私は鉄を探した。


なんとなく真妃や賢は今は話しかけずらいし、心は話したくなさそうなオーラが出ていた。


それに匠は少し苦手だ。


誰かと話していないといろいろ考えてしまうので、残るは鉄しかいない。


そう思ったのだがグランドを歩き回って見つからなかった。


「どこに行ったのかな?」


と呟いていると、そばにあった木から声が聞こえた。


「俺を探してんのか?」


鉄の声だ。


私は真下に行って、太い枝に寝そべっている鉄を見上げた。


「そんなとこにいたんだ!」


私がそう言うと


「ああ、一度はこういうのやってみたくてさ。テレビとか映画とかでこういうの見たことあってね、ここで寝てみた」


と答えて木から飛び降りた。


「それで? なんか用?」


私は特別何も話す事がなかったので首を振った。


「用もないのに探しに来たのか?」


「そうじゃなくて、ただ暇だから」


言った後にこんな言い方したらいけなかったかなと思った。


「そっか、だよな! ところでお前はどうなんだ?」


いきなりの問いかけに反応できない。


「え?」


「だから、見学会終わったらここに入学するのか?」


鉄の表情は真剣だった。


「いや、まだ決まってない」


「ふ〜ん、やっぱりまだそんなもんだよな」


鉄は何か考えているようだ。


「う〜ん」


「どうしたの?」


「いや、いろいろ考えてんだ! 今後の事」


鉄もいろいろあるらしい。


真妃がいう鉄の事情も何かと複雑なのかもしれない。


「だけど俺、やっぱりこの仕事はちょっとな……。俺には不向きなんじゃないかなって」


鉄は遠くを見てそう言った。


「どうして?」


「何に関しても適当な俺が、こんな簡単に人の命を背負うなんてすべきじゃないと思うし、だいたい過去の人間を命はって守るなんて、カッコいいけど実際死ぬのは怖いだろ? いくらかっこつけても、心の隅に恐怖があったとしたら、その時になったら逃げだすにきまってる。それが人間なんだし、人間なら当然だ! 俺みたいに見かけだけで、実は臆病だったらこんな仕事、勤まるわけがないんだ。タイムガードになるなら、もっと意志も体も強くないといけないと思う」


鉄は落ちている石を手に取って勢いよく投げた。


「私はそこまで考えたことなかった……ただ飛び込めばいいってそう思って」


鉄は私を見て少し笑った。


「それでもいいんじゃないか? そう思えることも1つの強さのように感じるけどな」


私はそれを聞いて少しホッとした。


「でも、鉄だって弱いわけじゃないと思う! 勝手に意見するのもどうかと思うけど、私的には、しっかりと先の事も考えてるし自分の足で立とう立とうとしてるから、十分強さを感じるよ」


私は鉄をそう元気ずけようとしたが、鉄は苦笑いで


「いや、俺は憶病なんだ。親だってそうなんだ! 俺もそうだよ……」


とだけ答えた。


私はかける言葉が見つからずに目をそらした。




結局沈黙が続き、昼になった。


大山さんが大きな声で私たちを呼んだ。


私たちはお互い何も言わずに走った。



ここまで読んでくださりありがとうございます。

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