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第十二章

『プルルルプルルル』


部屋で寝ていた私は、その音にパッと目が覚め跳ね起きた。


ベッドのすぐそばに置かれた台に電話がある。


音の正体は電話だった。


私は少し不機嫌に受話器を取った。


「はい、どちら様ですか?」


寝ぼけたままでそう言った。


「おはようございます。お着換えになりましたら、8時までに食堂で朝食を取ってください」


声の主はハキハキとした声でそう言うと間を置いてから「失礼しました」と電話を切った。


モーニングコールだ……。


そうか私は昨日から見学会に来ていたんだ!


大事なことを思い出し部屋の壁にあった時計をチラッと見た。


7時か……眠いなあ


私は目をこすりながら部屋を見渡す。


けして広いと言い切れなくても、快適な場所だ。


伸びをしてから布団から出ると、洗面所で顔を洗い完全に目を覚まさせた。


急いでパジャマから服に着替えて、髪をセットする。


よし、今日も一日ボチボチいきますか……。


私は気を引き締めつつ部屋を出た。


廊下は静まり帰っていた。


ガチャッと隣のドアが開き真妃が出てきた。


「おはよう」


真妃は早起きらしい昨日と変わらず穏やかに挨拶をした。


「おはよう、朝食食べに行くんでしょ?」


私がそう言うと黙って頷いた。


私たちは黙って歩き始める。


途中で鉄が後ろから声をかけた。


「よう……おはよう2人とも」


眠そうに眼をこする。


「おはよう」


とだけ言う真妃。


「おはよう、眠そうだけど寝てないの?」


私が鉄に問いかけた直後誰かが肩にぶつかってよろけてしまった。


「おっと、すいません。……ん? お! 見学生か!」


見知らぬ少年が私の目の前に立っている。


「あんた誰だ?」


私が尋ねる前に鉄が言った。


「俺はこの学校の1年! あんたらの先輩にあたる。まあ、まだ入学してないから違うけど、あんたたちが入学したら先輩さ!」


ぱっちりとした眼の先輩はにこやかに言った。


「また遅刻するよ、早く来なさいよ」


前方から女の子が呼びかける。


この人も初めて見る人だ。


「だって後輩に会えたんだぜ! 話してやんなきゃ、俺達先輩なんだからな」


どうやら2人は同級生らしい。


「何浮かれちゃってんの、授業始まるよ! あ、見学生さん達ぜひ入学してきてね。あたしたちは大歓迎だから」


そう言って女の先輩はどこかへ走っていってしまった。


「悪いな、俺今から授業なんだよ! 授業ってのはどの学校へ行ってもいやなもんさ。だけど、ここはその中でも楽しめる方だ! 後輩たちよ困った時は俺に任せろ。じゃあな先輩は忙しいんだ。ここらへんで失礼するよ」


先輩はとび跳ねながら走って行った。


「面白い人だな」


鉄は苦笑いで言った。


「もしかしてこの学校、変な人が多いんじゃないかい?」


しゃくれ顔の賢が現れた。


「早くしないと朝食間に合わないんじゃない?」


真妃が腕時計を見て言った。



食堂にはすでに、匠がいた。


眼鏡をクイクイ上げながら、コーヒーを飲んでいた。


「お、おはよう、ごご、ございます。お、おさきに、し、しつ、失礼、して、ま」


「あ〜、お前話すのがのろいよ! イライラするだろ? 先に食べてたならそれでいいよ、片っ苦しい挨拶だなあ全く」


鉄はそう言って皿に目玉焼きとサラダをのせ、凄いスピードでパクパク食べ始めた。


「しょうがないよ、匠くんは真面目だし話し方は彼のくせなんだ。でも、たまにじれったいけどね」


心がいつの間にかやってきた。


「おはよう心君」


真妃は小声で挨拶した。


私たちはだいぶ普通に会話が成り立っていた。


沈黙はほとんどなくて、騒がしくも静かでもない雰囲気で朝食をとった。



「8時になりましたね、おはようございます。大山と言います、今日1日よろしく」


今までで一番若いのではないかと思われる男性が現れた。


「あなたが今日の担当なんですか?」


心が聞いた。


「その通りだ、えっと……心君」


大山さんは細い目でニコッと笑った。


「今から移動するけど全員いるかな?」


私たちは頷く。


「よしよし、遅れた奴はいなかったようだな」


満足そうに頷き、もう一度ほほ笑むと、


「さあ行くとするか……」


大山さんは食堂を出た。


私たちは慌てて後に続く。


「全員僕の後にしっかりついて来てね、遅れるんじゃないぞ」


大山さんはエスカレーターに乗ると、また手で人数確認をし始めた。


「かなりねんいりですね!」


私は大山さんに声を掛けてみた。


「ああ、今日は失敗しないように少し緊張しててね」


大山さんは照れ臭そうに答えた。


「緊張? なぜです?」


賢がすかさず聞く。


「実は、僕は実習生でね……。ここで教師として働くための見習い中なんだ」


「じ、実習、生、さんが、な、なぜ僕たちを、た、たん、担当するんです?」


匠は小声で言った。


「僕のような実習生じゃ不満? 教師になる第一歩がこの見学会の案内者なんだ。だから、いやでも君たちを、いや君たちじゃなくとも案内することに変わりはない」


大山さんはそう言ってドンドン先を歩いた。


緊張しすぎてあせっている様子が分かる。


「全員いるね?」


大きな扉の前に着いた段階で大山さんは立ち止って人数確認をする。


「よし、じゃあ中に入ろうか」



「早く中へ」


大山さんに言われるまま中へ入った。


凄く薄暗い……これまでにない通路だった。


先は暗くて見えないし、ろうそくが所々壁に設置されている。


「おはよう新入生! いえ、見学生の皆さん」


上の方から女性の声が聞こえた。


「誰だ?あんた」


鉄は見上げて叫んだ。


「スピーカーを通して名をなのるのは失礼かもしれないけど……私はこの学校の責任者つまり校長です」


声の主が明るく答えた。


「こ、校長!」


大山さん以外が声を上げた。


「驚いた? 私4代目なんです! よろしく」


「この人が、校長!」


賢は信じられないというように呟いた。


おそらく賢も私と同じでもっと怖い大柄の男といったイメージがあったのだろう。


ところが、実際は明るい女だった!


「朝からこんな部屋に連れて来てごめんなさい。この部屋薄暗くて不気味でしょ? でもちゃんと理由があってここに呼んだの。この部屋実は迷路になってるんだけど気づいた?」


「迷路? 通路とかではなかったんですね!」


と真妃。


「迷路ってどういうこと?」


心が聞いた。


「そう言い質問ね。私ただ三日間だらだらと見学させるなんてつまらなくて嫌だったから、少しゲームでもして、楽しく見学してもらおうと思ってね。そこで、あなた達には迷路ゲームでもやってもらおうと考えたわけ!」


愉快そうに校長が説明した。


「つまりこの部屋から脱出するゲームって事?」


私が言うと、


「その通りただし、2時間以内にゴールすること! 楽しそうでしょ?」


と答える。


私たちは互いに顔を見合わせた。


「まあ、面白そうじゃないか……早いとこゴールしようぜ」


鉄はやる気を見せる。


「怪我をしてしまったり、万が一何かあった時は大山君を呼びなさい。彼はあなた達をここで見守る唯一の大人だからね。それ以外は彼の手を借りてはダメ! みんなで協力し合って仲良くゴールしなさい。このゲームであなた達の行動力や力、チームワークを見せてもらいましょうか。それではスタート」


私たちが何も言えないままにゲームはスタートした。


「よし、行くぞみんな」


鉄がそう行って走り出そうとする。


「ちょっと鉄、あんた方向音痴でしょ?」


真紀が鉄を止めた。


「でも、2時間以内にゴールしなきゃいけないんだ! 急がないと間に合わないぞ」


「そうあせるなよ、脳みそ入ってるのか? ここは落ち着いて考えるべきときだ」


賢が鉄を睨む。


「と、とにかく、か、考え、を、まとめてから、こ、行動、し、しましょう」


匠が小声で言った。


「そうだね……じゃあどうする?」


私が言うと少し沈黙が起こった。


「じゃ、じゃあ、さ、三組に、わ、わかれるって、い、いうのは、ど、どうです?」


「名案だな! さすが匠!」


鉄はそう言ってまた走り出そうとした。


「ちょっと待って鉄! あわてすぎ」


真紀は鉄を引っ張った。


「それで・・・・・・、どうわかれる?」


賢が聞く。


「と、とりあえず、さ、先に、す、進んで、わ、わかれ、み、道に、つ、ついたら、き、決めま、ましょうか」


匠がそう提案したので、とりあえず進んでみる事になった。


鉄が5歩ほど進んだ瞬間だった。


「う、うゎ!」


鉄が大声を上げ、飛び上がった。


「何だよ!」


賢が不機嫌に怒鳴る。


「今槍が横から飛んで来たぞ!」


鉄は息を切らして言った。


「ごめんなさい。言い忘れてたけど、障害物もたっぷりあるからね!」


校長の声だ。


「障害物!」


全員の顔がひきつる。


「命がけだね!」


と心。


「みんな、もう分かれ道が」


真紀が前方を指差す。


道が三つに別れていた。


「障害物もあるとなると、ここは、慎重に決めないと」


私が言うとまた全員考え始めた。


「私、記憶力には自信があるから、方向を間違ったりはしないよ」


真紀が言った。


「なら、方向音痴の鉄君と組めばいいんじゃない?」


心が提案する。


「それなら俺も何とかなる!」


鉄は賛成した。


「僕は匠くんと一緒でいいよ。考えがしっかりしてるし、行動しやすい」


賢はしゃくれた顎を擦りながら言う。


「じゃあ、僕とみゆちゃんだね」


心が私を見てにっこり言った。


「これで決まりだな?」


鉄の一言にみんな同意する。

「ゴールで会おう!」


賢がそう言った。


鉄と真紀は右に、匠と賢はまっすぐ、私と心は左へ歩き出した。


こうして全員がゴール目指してスタート!



ここまで読んでいただきありがとうございます。

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