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もう、こんなところは嫌だ



「凛花、なんて言ってたっけ?フェリアスの………」


颯斗は、モゴモグと口ごもる。


「ファラリスの雄牛」


「あっ!ソレソレ♪なぁ、この行列追い越して、その牛見に行こうよ。」


馬鹿か、コイツ。


人が、処刑されているところを、自分からワザワザ見に行くなんて。


炙り殺される、人間を見たいのか?


あり得ない。


プパープパー


また、炙り殺されている。


どれだけ、苦しいだろう。


どれだけ、熱いだろう。



また、ラッパの音がした__________



グイッと、颯斗の服の袖が、誰かに引っ張られた。


体が、後ろに倒れそうになる。


颯斗を掴んだ腕は、列から伸びていた。


「うわぁ!」


それに気がついた凛花は、慌てて颯斗の服のフードを掴んだ。


巻き込まれないように、と係員が言っていたのは、こんな事があるからか。


誰かと、共に死ぬ_______


そうすれば、寂しくないから?



ビチビチと、糸と布の間に隙間ができる音がする。


(千切れる!_____)


ギュッと、目を瞑り、フードを掴む。


ビリっ


布が千切れる音が、凛花の耳に飛び込んで来た。


ドダンッと、地面に尻もちを凛花はつく。


颯斗は、その間に列の人混みの中へ消えて行った。


「颯斗!!!!!!」


ゾロゾロと、進み続ける列____________


何百、何千もの死者達の中に、

1人の子供が紛れ込んでしまえば、

探し出すことは、ほぼ不可能になってくる。


どうすれば……………


しゃがみ込み、頭を抱えた。


颯斗が、冤罪で死んじゃったら‥……


嫌だよ。



その時、ある一つの考えが浮かんだ。


ファラリスの雄牛の、処刑の先頭へ行き、顔を確かめればいい.


急いで、立ち上がり、バンッと地面を蹴った。


急げ、急げ………


列は、何m続いているだろう。


ざっと、1kmはあるだろうか。


白装束の受刑者達が、嫌という程、目に入ってくる。


急げ、急げ………


走る、走る………






視界の端に、牛の姿が見えた。


牛の前に、人が、子供が‥……


颯斗!




「だから、俺は違うっつってんだろ!巻き込まれたんだよ!」


必死に、抵抗していた。


両手足を、骸骨に掴まれ、牛に詰め詰め込まれそうな状態。


「颯斗!」


そう、叫び、手を伸ばす。




ガルルルルル……


獣が、叫び、骸骨をバシンと跳ね除けた。


奴らはクルリと一回転した後、地面に落下し、バラバラに砕けた。


獣は骸骨が、いなくなると白い翼を使い空へ駆け上がった。


そして凛花の元まで来ると、ヒョイと背中に乗せ、また空へ駆け上がる。


「もう、こんなところは、ごめんだ。」


そうつぶやきながら。



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