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右手は鬼の餌食



ーーーー颯斗サイドーーーー


「あいつら・・・逃げれたかなぁ。鬼はそろそろ動き出すか?俺も逃げるーー」

颯斗は頭を掻きながら、立ち上がった。ふと、見上げると倉庫の屋根には大きな穴が開いていた。何があったのかは、知らないが不気味すぎる大きさである。腐食した鉄が落ちたのだろうか。


しかし、何か違和感を感じ穴を見つめているとその穴はいつの間にかふさがっていた。(あれ?)よく見れば、目玉のようなものが・・・・

鬼だ。キラリと黄色い丸い眼玉を光らせ颯斗を見つめる鬼。


「あ、ああああああ」


颯斗が叫び声をあげたと同時に、鬼は顔を上げ穴に自らの足を突っ込む。

颯斗は足がすくみ、その場で固まってしまった。


_____


「颯斗の声だよね?今の」

凛花は耳に手を当てながら、ミミにも確認した。ミミは耳を抑え鬼の確認をする。このゲーム上で、ミミは攻略のカギになると凛花は感じた。

「うん、多分。痛っ!鬼が近づいてる!」

突然、ミミは顔をゆがめ辺りを見渡し叫んでいた。その突然の出来事に混乱する凛花。


「えっ!」

「凛花さん、ヤバイ!鬼が来た!逃げて!」

ミミの顔は恐怖に歪んでいた。そして食糧庫の階段を真っ先にかけが上がり始める。2人は、食料庫からはい出て裏口へ通じるドアに向かった。


「開かない!鍵が外側からかけられてます!」

ミミは『絶望』という言葉が激しいくらい落ち込む。このまま民家ごと一緒に潰されてしまうの?

「そんな!」

凛花は天井を見上げていた。もう最期が近づいてるんだ____

その時、ミミは凛花の肩に触れ耳元に顔を近づけた。

「凛花さん。短い間でしたが、お世話になりました」

悲しそうな声に、その言葉の意味を深く凛花は理解した。

「ミミ、もう1人にしないで!」

必死に叫んでいた。

「あなたが助かれば、いいんです!」

ミミは凛花の頬をつねりながら、笑顔を作る。しかし作り笑顔はぎこちなくて_

凛花は、涙目になりながらミミの腕を掴んだ。


「ミミが1人で行くなら、今、私は死ぬ!どうせ、1人になったら死ぬんだ!」

「私が捕まれば、鬼は停止します」

冷静なミミの判断。何故、知り合ったばかりの人間の為にそこまでできるの?

「もう、颯斗みたいになる人が出て欲しくない!みんなで『現実』に帰ろ!」

ミミは、低い声で項垂れたように言い放った。

「凛花さん。気付いてないんですか?これは、夢ではありません!『現実』なんです!世界が変わったんです!鬼は幻ではありません。現在の科学で作られた、

人形(マリオネット)なんです!いいですか?もう、こうなった以上、人類は死ぬまで鬼から逃げ続けるんです!」


「違うよ!これは夢だ!こんなの、私達が生きてきた世界と違う!」

夢だよ、その言葉を何回もミミに伝えようとした。

「『現実』に帰ってこないといけないのは、凛花さん、貴女なんですよ!」

ミミは大きく息を吐いた。


「私は、夢にいるんだ!誰がなんて言ったって夢なんだ」

ミミは、凛花の迫力に圧倒されたのか少しの間停止した。停止してくれるのが、鬼ならばうれしいのに。その時、屋根から木材が落下してきていた。


「私だって・・・これが現実だって受け入れたくない!これが夢であって欲しいって願ってる。だけれども!現実から目を背けてはいけない!」

そう言うと、ミミは、走り出した。鬼に向かって___

「ミミィーーーー!!」

グシュッ・・・ベチャ。凛花の声がかすれ、消えた瞬間肉がつぶれる音がしてミミの気配と鬼の気配は無くなった。


「もう、生きる意味なんてない!」

「凛花さん。泣かないでください。私は生きてます。右腕ありませんが・・・」

どこからか、声がする。もしかすると、幻聴が聞こえるようになったのかもしれない。しかし、顔を上げるとそこには少女が立っていた。


「あっ___」


少女ミミの右腕は全てなくなっていた。消えた部分からは血がしたたり落ちていた。


「鬼は、私の右腕を食べて停止しています。今のうちに逃げましょう!」

「ミミ・・・」

凛花は頷き、立ち上がった。玄関から外に出ると、鬼はまるで人形の様に固まっていた。さっきまで動いていたことが全く信じられない。


2人は、停止している鬼の横を通って田圃道に出た。

「早く、逃げましょう!」

ミミは、弱みを見せたくないのか強がっているように見えた。

「腕・・・切れて激しい運動は良くないと思う。血液が運動でたくさんそこから出て死ん・・・・」

「さっきも言いましたがあなたが助かればいいんです」

ミミは凛花に笑いかけ、腕を手で隠して凛花に背を向けた。


「どうして、私ばかり?自分を犠牲にして。」



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