さようなら、颯斗~最初の脱落者と新たなプレイヤー~
「第2試合行きます。カードを出してください」
凛花は、2のカードを引き抜いた。まぁ、これは負けても構わない。あとが、ある。
支配人もカードを出す。
ニタリッ
支配人が笑った!?カードはまだ見せてない!何で!?
「裏返してください」
凛花は、カードを裏返しながら支配人の裏返すカードを見つめる。
「私は、10ですから私の1勝になりますね」
支配人は笑った。骸骨は、嬉しそうに目を曲げた。骨をカタカタ言わせている。
「でも、まだ引き分けですけど?」
凛花の言葉に、少しながらテンションを支配人は落とした。
「2人とも残り3枚ですね?」
けれども、ニヤニヤしながら、ゲームを続けている。
「はい、出すよ?」
「行くよ」
ペシッ
「裏返しましょう!」
笑顔の支配人は、カードを裏返した瞬間、顔を強張らせた。
「やった!!」
凛花は、椅子から飛び上がりながら、喜びの舞をする。
「ん~凛花さんの勝ちです」
「残り1枚だね」
「次で決まりますね」
次で、決着がつく。
(私は、キングが残る。ジョーカー入っている確率は54分の1の確立。この勝負、勝てるかもしれない!)
「行きますよ。私は、ジョーカーです」
支配人は、骨の指に挟んだジョーカーを見せつけた。
「えっ・・・」
こいつ、最後の最後に「最強」を残してきやがったのか!
「あー引き分けになりますかね?アァ、引き分けで終了ですから、1人だけ解放しましょう!」
「どうやって、その一人を選ぶの?」
「それは、ルーレットです。そこに、ルーレットがありますね。ボタンで決めます」
支配人は、椅子から立ち上がり、ルーレット台を「これだよぉー!」と叩き続ける。
「これを押せばいいの?」
言われるがまま、赤いボタンに手を乗せた。
ポンッ!
「ルーレット開始です。10秒後に自動的に止まります」
自動アナウンスが流れ、ハイテクだなと感心する。
10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・0
カウントダウンも、電子掲示板に表示される。
「ルーレットはぁ?「森山ミミ」!」
知らない女の子の名前が読み上げられていた。呼ばれたのは、颯斗ではなかった。
「颯斗は?」
ルーレット台の結果に驚きながら、静かに呟く。
「死にます」
支配人が、視線の先で何かにメモをしているのが見えた。
「えっ?」
凛花の目の前にはいつの間にか、檻が現れていた。人間を、動物園の檻に入れたような感じだ。颯斗は、その出来事に驚き、凛花に手を伸ばしていた。凛花は慌てて駆け寄っていく。しかし、辿り着く前に檻は姿を消していた。
「死にます。颯斗くん、グッバーい!」
ブヂュッゥゥ……
凛花は檻の前で、力尽き座り込んだ。
「颯斗・・・?」
潰された檻の隙間から白い腕がピクピクと動いているのが見える。凛花は、颯斗に近づく。手を握ると、まだ体温で温かかった。
「颯斗・・・ごめん、約束したのに。颯斗は私を守ってくれたのに、私は颯斗を守れなかった」
次第に冷たくなっていく手。それは、魂が肉体から離れて行くことを現しているようだった。
「復活ゲームしますか?」
その様子をみた支配人は、ニタニタ笑いながら、呟いた。
「復活ゲーム?」
「その者を復活させるゲーム」
これから起こることは、すべて良くない事だろうと凛花は悟った。
「どうするの?」
「今から、1時間だけ解放する。鬼は追ってこない。その間に代わりの死ぬ人間を探す。そいつを殺した後、ここに戻ってくれば、この者は生き返っている」
凛花は、あまりにも支配人が淡々と喋る為、一瞬殺りそうになってしまう
「人を殺すなんて・・・」
「どうした?このゲームに優しさなんて要らないぞ?」
支配人は、凛花の前に顔を突き出しながら囁く。
「分かった。颯斗を助ける」
背後から、何かが聞こえたような気がしたが凛花は無視する。
「お前は、このショットガンを持って行け」
「うん、分かった。約束は、守ってね」
凛花は、外に出た。外は、中とは違い真っ暗だった。
(代わりの人間・・・)
すると、目の前にキョロキョロと辺りを見渡す中学生くらいの少年がいた。
少年もプレイヤーなのだろう。まず、凛花は話しかけてみる事に。
「ねぇ、君だれ?」
少年は、凛花を見ると嬉しそうに手を挙げた。
「こんにちは!僕、なんかこの世界がよく分からないんだ!俺は…………」
「可哀想だけど・・・」
少年とこれ以上中を深める前に、殺すべきだと判断し安全装置を外した。
パンッーーーー
少年は、肩を抑えて倒れてしまった。血を流し、地面にうつ伏せに倒れる。
「殺っちゃった……でも、これで颯斗は助かるんだ!」
凛花は、スキップで教会に戻った。扉を開け、教会のなかへ。
「おめでとう。颯斗君、復活だ!」
・・・ということは、分かってるだけで現在のゲーム参加者は。
中藤凛花・田村颯斗・森山ミミになる。
「凛花・・・お前、俺を助けるために、罪のないやつを殺したのかよ!」
「仕方ないじゃん」
拳銃を支配人に返しながら、凛花は話す。
「お前・・・お前は、そんな奴だったのかよ!見損なった」
「颯斗?」
凛花は、首をかしげる。
「だから、罪のない奴を何で殺すんだよ!」
「でも・・・」
その時、二人の間に見兼ねた支配人が割り込んできた。
『兄弟喧嘩はそこまででーす!ミミ、颯斗、凛花の3人で逃げて下さいね!』
「兄弟じゃねぇ!まだ話はーーーー」
颯斗が、言い返そうとした時、教会の奥から鬼が出てきた。
「ヤバイ!鬼が来た、みんな逃げて!」
教会の椅子に座っていたミミが立ち上がる。軽装の彼女は、手を動かし二人に合図を送る。
「えっ!」
「おい、みんなボサッとしてないで行くぞ!」
3人は、慌てて教会から飛び出した。
「何なの、このゲーム!」
「何処か、身を隠す場所を探しましょう。拠点も、必要かと」
ミミは、笑顔で的確な指示を出し続ける。
「このまま、1ヶ月も逃げ切るなんて無理だよ」
「弱音を吐くな!1ヶ月逃げ切れないなんて決めつけるな!」
まぁ、確かに風ヶ丘は広いし身を隠す場所も沢山ある。
「何処に隠れればいいんだろう?」
「痛っ!」
ミミは、耳を抑えて立ち止まった。
「どうした?ミミ」
颯斗と凛花は同時に心配する。
「鬼が来た・・・痛っ!半径20メートル以内にいる」
「えっと・・・20メートル、プールくらいの長さか」
冷静な颯斗に苛立ちを覚えつつ、
「めっちゃ、近いじゃん!早く、何処かに!」
「痛っ!今、鬼が走り出した。距離が縮まってる」
なんだか、ミミも面倒くさい。
「そんな!」
颯斗は振り返りながら、走り続けた。
「あっ!あそこに倉庫があるよ」
数メートル走れば、茶色い農業用の機械を保管する倉庫が現れた。
「そこに隠れよう。」
3人は、近くにあったもう使われていない倉庫に入った。
「ここなら、鬼も分からないだろう!」
颯斗は中を見渡し、溜息をつく。ガラガラガラと、扉を開け、中に置いてあったランタンの灯りを灯した。
「やっと、休める」
3人は、床に座り込んだ。足が、痛い。
ドスン、ドスン、ドスン
鬼が来てる!
『何処にいるかなぁ?この倉庫かなぁ?』
喋る鬼は、遊びの鬼ごっこの時と同じようなセリフを話す。
「まさか、もうここに来たんじゃ・・・」
ミミは、立ち上がり耳鳴りを確かめる。痛かった。激しい痛みが、ミミを襲う。
「大丈夫だ。ここは、倉庫がたくさんある地区だ」
颯斗は、ミミに座るように促す。凛花も黙り休んでいた。
「デッでも」
「落ち着け」
苛立ち始める颯斗に、凛花は「落ち着いて」と注意する。
「鬼・・・来てます」
「今、何処?」
「今、この倉庫の前です」
ミミは、顔を真っ青にしながら耳を抑え続けた。
『ここかなぁ?3人はどこダァ?』
「ヒィ!」
その時、
『鬼が1分間停止しまーす!その間に脱出ルートから逃げて下さい!』
アナウンスが流れ、鬼の気配が止んだ。本当に、停止したようだ。
ゴゴゴゴ……
大きな地震が起きたような音がして、倉庫の壁が動きゲートが開いた。
「おめぇらから逃げろ!俺は、最後に逃げる!」
「颯斗、ありがとう!ミミちゃん、行こっ!」
凛花は、ミミと共に脱出ゲートから飛び出た。そして鬼を横目に民家側の方へ走っていく。小さな坂を走り、隠れれる場所を探し続ける。
「あっちの畑の中に隠れよ!」
「いえ、そこは見つかりやすいと思います。そこの、家の床下がいいと思います。」
2人は、扉が開けられたままの家の中に入った。中は、暗く人の気配はしない。大丈夫そうだ。そこから、食料を保管する床下の小さなスペースに忍び込んだ。
「ここって、地下になるの?」
「多分」
凛花の質問にミミは冷静に答え、凛花の口に手を当てた。