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師匠


「なにそれ!それじゃあ、犯人は一向に分からないままじゃない!」


ガルルル、と碧は唸り紅を睨みつける。


「俺らが犯人を捜すなんて不可能だ。警察に任しとけ!」


「このど田舎に警察はいません!お巡りさんさえも居ないのよ?」


うー、と紅は唸ると碧を見る。

碧はあぁ?、と声を出して服の襟を正し立ち上がる。


「よし!お散歩行ってきまーす」

「おぇ!?怪我はどうするんだよ!?」


ギリッ、と碧は紅を睨むと「大丈夫よ」と叫んで部屋をズカズカ、と出て行った。

ポカーン、と拍子抜けしたまま紅はその場から動くことができなかった。

本当、めんどくさい奴。



「ん?碧、散歩行ったの?元気になったんだね!」

「あぁ、元気過ぎてほんっと、腹たつわ。アイツ」


翠はニコニコしてパンに噛り付く。

パリッと外側が音を立て、小さな皮が落ちていく。

紅もパンに噛り付き、顔色をサァアアアアアアア、と変えてしまった。


「翠!まさか………これは……」

「あぁ、クリームあんパン?」


「なんで、クリームパンとあんパンを混ぜるんだよ!こいつとこいつはバラバラに食べるべきなんだよ!」

「しらねーよ。でさ……犯人についてなんだけど」


紅は愚痴を溢しつつも、クリームあんぱんを口の中に放り込む。

噛まず、飲み込むと今度は顔を真っ赤にしてバタバタ、と暴れたり喉を叩いたりしている。

あ、詰まった。




「犯人が誰なのか、全然分からないんだ」

「あったりめーだろ」


「いや、見当はつくんだよ。でも……証拠がない」

「ケントウ?」


翠はうんうん、と頷きながらパンを齧る。

パリッと心地よい音がまた、響く。


「きっと、師匠なんだ」

「知ってる」


翠はえええええ!、と叫んで紅を見る。

ポロッ、と地面にパンが落下する。


「俺らはみんな、師匠が犯人だって思ってる。

でも、お前の言う通り証拠がないんだ。

そして、俺にはもう時間も無いんだよ」


そっか、と翠は呟くと足元の木の枝をとって土に文字を書く。

何を書いていたのか確認しようとしたが、すぐに靴で消されてしまう。

ザザッと砂の波に文字は飲み込まれていった。

一体何を書いていたのだろう。

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