爆発先輩と爆発後輩
トウジは覚悟を決め、ドアノブに手を掛ける。
銀色の錆びたドアノブがゆっくりと、回転して外の世界と中の世界の間の壁を崩壊させる。
「何の様だよ」
ぐっしょりと掌が湿り、べとべと、とする。
目の前に、チェー・・・
___ウサギ面のテキ。
『みぃつけたぁ』
高速で刃が回転し始め、キィィィという音を鳴らし、耳にその音がこびりついてくる。
微かにずれた面の隙間から、紫色の髪が汗を乗せて風に靡いている。
「王国軍なのか?反…乱軍、なのか?」
気味の悪い濁った眼が歪み、笑いかけてくる。
揺れる細い体はコートで隠され、時折チラリと見えるだけ。
チェーンソーを持つ黒い皮手袋の手は、骨が浮き、手袋の上からでもわかる。
「___はんらんぐん、でもね殺せるなら、誰でもいい。味方でも」
心臓が口から出て来そうな気分だ。
でも、誰も助けてくれない。
力でダメなら、頭___無理だし。
でも、セイの兄弟なんだ。
少しだけなら、何か出来るかもしれない。
一歩下がり、薄いピンク色のカーテンで仕切られた個室から出て、薬品が置かれた通路に出る。
鼻を衝く薬品の匂いに、一瞬意識が飛ぶものの、頭を振り敵を見る。
揺れるカーテン
カーテンが靡き、個室の中の様子が見える瞬間を繰り返し、その度に男は近づいてくる。
銀色の天板が釘で打ち込まれた台に手を置き、滑らせ何かないかと、探し回る。
しかしながら、指に当たるものは消毒液____?
これだ!
アルコールが入っているから、爆発するかもしれない。
あと、ビールを飲んだ後のアルミ缶もあるし、(誰だよ、飲んだの)紙コップも汚れたガーゼを入れたものがある。
後は、火をつけるものさえ、あれば爆発するはずなんだけれど。
あの人、煙草吸ってなかったっけ?
吸ってないよね。うん。
でも、マッチとかなら・・・
引き出しを物色し続けるが、なかなか火を付けられるものは出てこない。
木の棒と板と木くずで火おこし?・・・そんな無茶な。
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そのころ、天界では。
「トウジ、なかなか爆発させられてねぇじゃねぇか」
「まぁまぁ、皆そんな方法なんてふつう、知りませんから」
ゲーム失格組の、下界眺めの真っ最中。
トウジの様子を興味津々に、紅とミミは眺めている。
紅はというと、爆発をいとも簡単に起こし、ほぼ自殺行為の巻き添え事件を起こしたわけで、爆発のプロでもある。
ミミはというと、炎でほぼ焼身自殺的な事をしている。
「俺なら、_____」
「トウジ君は、一般人ですからね!」
はいはーい、と紅は呟きながら、指先で雲をいじり、下界を眺めつづける。
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