正義と罪
「お前…………颯斗、だよな?」
トウジはただ、その場に立ち尽くすことしか出来なかった。
手にはガラス瓶を握って。
もう、狼に面影は残っておらずただの獣、だ。
「…………お前も死んだのかよ」
いや、死んでしまったからにはもはや、毛の塊でしかない。
魂はもう、この世には無いのだから。
震える手でガラス瓶の蓋をトウジは取ると、飲ませようとするが。
__________『死んだ人間を生き返らせる事は罪』_____________
ギリッ、と奥歯が音を鳴らし蓋が瓶に収まっていく。
一度退場した人間は引き戻してはならない。
それは、命を弄んでいるから。
「でもよ……このまま、手振って去れって言うのかよ」
目の前にいる人間は、生き返る可能性が残されている。
なのに、なのに、無視して去れって言うのか?
『んで、トウジは如何したいのだニャ。あの獣を生きかえらせたいのかニャ?命を弄んでいるのは、あの骸骨野郎だニャ。トウジは、違うニャ。って、ミーが全ての答えを導き出すのも良くないニャよ。“最後の判断はお前”がやるにゃよー』
気がつけば、また現実に戻って来ている。
”もう一人の自分”の意見は、アレ、か。
確かに、あの支配人って自称してる、骸骨が命を弄んでいるといえばそうなのだが。
___________________
「うわぁぁぁ!鳥さんが死んじゃったぁぁぁ」
幼いトウジの手には小鳥が横たわっていた。
勉強机に向かい合っていたセイが、トウジを睨みつける。
「仕方ないのですよ!そんな運命だったんです。生き物には全て、ストーリーが割り振られてるのですよ!それに沿って俺らは生きてるだけです。"敷かれたレールの上”を歩いているだけなんです。その鳥のレールはそこで終わっていたのですよ!」
トウジは目に浮かべながら、セイに歩み寄り、手の中の鳥を突き出し、見せつけ、
「セイが、鳥さんを生き返らせてよ!科学者になる為に、勉強してるんだろ?」
そう、言い終わった時、いきなりセイがペン回しを始める。
シャープペンシルが窓から差し込む光でピカピカ、と光り部品が音を立てる。
セイの怒った時の行動、だった。
いつもはペン回しなんてしない。
間違いない。
長年共に生きて来たものだけが分かる。
「俺は命を弄んで、運命に逆らう為に勉強しているわけではありません!鳥が本当に生き返る事を望んでるのでしょうか。そこを無理矢理生き返らせて、それが鳥の為でしょうか?」
視界がゆらゆら、と揺れ顔が熱くなっていく。
__________________________
「もぅ、ワカンねぇよ。もう………よ。死ってなんだよ。生きるってなんだよ」




