終盤
「やぁああ!」
茜は王に向かって毒腕を振り下ろす。
が、王はそれをアッサリと交わし茜に向かって毒を飛ばしてくる。
しかし、それは翠の刀に弾かれ、敵に放った攻撃が自分に返ってくる形となる。
だが、王はそれを握り潰し______
「消えた!」
茜は額から汗を流しながら、辺りをキョロキョロ、と見渡す。
王の姿はどこにも無い。
「何処へ行きやがった………」
『ここじゃろーん!』
あの喋り方、間違いない!
王だ!
茜は両腕をパシン、と合わせ毒を身体中から一点へ集中させる。
ドクドク、と毒が体を周りブシュッ、と首筋から噴き出してくる。
そして、茜の姿は消え、代わりに紫色の巨大なドラゴンが佇んでいた。
『変幻系か……フム。ならば、わしも______」
ズブズブ、と毒のドラゴンが王の体からまるで脱皮をするかの様に出現する。
この姿になったという事は、つまり……。
「おいおい、まさか二人の決着の時って訳じゃあ、ないよな?」
「翠、逃げるなら今のうちだ。そうだよ、決着の時。私たちの疲労はピークに達している。これで、終りにするんダァ!」
(おいおい、嘘だろ……。俺、邪魔?いやいや、逃げるなんて出来ねぇよ!)
「翠!逃げないのか!?故郷で待ってくれてる人が____」
「いねぇよ。幼馴染はみんな死んだ、俺の故郷も_______」
「死んだ」
翠は刀を抜き、王のドラゴンへ向かって走り出す。
「翠!無茶だ!おいっ……まさか!」
「その"マサカ"だよ!茜、逃げろ!」
ズドッ、と音がして茜の体が廊下の端へ吹き飛ばされる。
ガハッ、と赤い血を吐き出しながら茜は頭をあげる。
「お前!死んだ仲間の、墓をまだ作ってねぇんだろうがぁ!!」
「お前は、兄の墓をまだ、作ってねぇだろ!?俺は_______」
その時、茜の目の前が白く光り、目が眩み爆風が茜を吹き飛ばし、壁に頭をぶつけてしまった。
揺らぐ視界の中で茜は不思議な光景を見る。
その光景は、ピカピカと光る宇宙船の中で翠と同じ様に爆弾を作り出そうとする黒いコートの赤髪の男の姿。
それは、今の翠に重なっており、その時茜はハッとして、
「翠!まさか!赤髪の男と同じ死に方をするつもりじゃ!」
少し、光が弱まり光の中に翠の影が浮かぶ。
「お前が、なんで知ってんだよ……紅の事。まぁ、そのつもり。ありがとう、今まで。楽しかったし、嬉しかった____」
「ばかっ!やめろ!」
茜は駆け出していた。
足についた足枷に足を取られながらも、翠に向かって走り出す。
「やめろ!お前!仲間に、死ぬ前に会ってから………そして、いやぁぁぁぁ!」
ゴトッ
焦げ臭い匂いが辺りに漂い、翠は目を覚ます。
辺りは瓦礫の山となっており、砂埃が舞い上がる。
白く霞んだ視界の先に、真っ赤に染まった球体が転がっているのが見えた。
立ち上がり、近寄ってみるとそれは王の腹。
瓦礫を退かしてみれば、王の首から上は吹き飛んでおり絶命していた。
「茜?茜は………?」
瓦礫の山を歩き回り、茜の姿を探す。
白いマスクをした、少年。
猫耳マスクの、少年______
砂埃を手でパタパタ、と仰ぎ辺りを見渡す。
ガラッ、ガラッ
瓦礫の山が動き、白いマスクを真っ赤に染めた少年が起き上がる。
「茜!」
「ゲホッ、ゲホッ……フグッ……翠?」
良かった、茜は無事だった様だ。
ユラユラ、と茜は歩き翠に飛び掛かってくる。
「ゲホッ、ゲホッ……なんだよ」
白い砂埃が茜の顔を隠し、表情が読み取れない。
けれども、茜の掌を掴んだ両手に雫が落ちてきて、翠はハッとする。
瓦礫の上にしゃがみ、茜と目線を合わせる。
「泣いてんのか?」
「グズッ……グズッ……翠、生きてる。良かったぁぁああああ」
ポンッ、と茜の頭に手を乗せて笑顔を見せる。
「俺は、死なねぇからな」
「うぐっ……死亡フラグ立てないでよ。グズッ……その台詞、死亡フラグ、立ってる。さっきの、爆発前も死亡フラグ立ててた」
「変な事、言うな!俺は、紅の墓を作るまで死なねぇんだからよ」」
うん、と茜は頷き王の元へ近寄っていく。
プニプニ、と腹の肉を押しながら死んだ事を確認する。
ピクリとも、動かない。
「おに……翠、ちゃんと王死んでる」
「なんか、変な台詞だな……えっと、死んでるんだな?」
翠は王の遺体をツンツン、と押してよいしょっ、と蹴り上げ廊下の……瓦礫の山に放り投げる。
「反乱軍の仲間と連絡できる?」
「みんな、千里眼で確認したけれど死んじゃったみたい。王国軍も全滅したみたい」
「そっ……か」
茜は翠のパーカーの端を掴み、歩き出す。
少し顔を顰めた翠だが、茜を見て溜息をつき少し笑顔を見せると歩き出す。
「翠、何処へ行くの?」
「城の外」
「なんで?」
「茜を……お前を家に返す為」
茜は首を傾げて翠を見る。
「家なんて無いよ?みんな死ぬ気で来てるし、王国軍に家を放火されたから」
「まじかよ!」
翠は目を丸くして茜を見る。
だが、すぐに正常な顔に戻って、
「俺の故郷に、来る?」
茜は一瞬、驚いた顔をしたがすぐに目を輝かせ、大きく頷いた。
「ちょっと遠いけど、な。でも、俺はゲームのプレイヤーなんだけどな……」
「ゲーム?」
「あぁ、殺人ゲームのプレイヤーだけど?」
茜はクスッ、と笑うと翠の背中にいきなり乗り、(重い)
「きっと、そのゲームはもう、終わる。翠は自由の身になるよ」
「え?」




