脳震盪狼
ズゴッ、
まるで重い煉瓦を動かしたかの様な音がして、二人の体が宙にフワフワ、と浮き始める。
「なっ……何をしている!」
茜が毒腕を発動させて腕を伸ばし、毒を放つとその毒は石造りの床にべチャッ、と貼り着き、なんとか上昇は停止する。
この王は全てを操る事ができるのか!?
「この城はワシの毒で生成されておるからの、ワシの体の一部のようなものなのじゃ。つまり、歩く事と同じ様に城を操れる」
「はぁー、つまり最強って訳」
ゴキッ、と指を鳴らして茜は腕に包帯を巻き、毒腕を解除してニタァ、と笑う。
ますます倒し甲斐がある。
凛花は目を閉じ、千里眼を終了させる。
パチッ
「茜、が王と闘っている。大分疲労が溜まってる……向かわなければ」
毒の中で目覚めた凛花は体を動かし、毒の硬い壁を押し始める。
グチュッ、と毒の中に手が沈み、激しい痛みが体に走る。
でも、このまま毒の中で黙っている訳にもいかない。
だから…。
「うわぁぁぁぁ」
毒の壁を押す度、体が毒に入り込み神経毒が体を痛めlつける。
でも、少しも希望を諦めなければ必ず…………必ず…………願いは届く。
ズグッチュ……グチュッ……
腕が毒に埋まり、全身の力が少しずつ、抜けていく。
ズドッブチュ……
いきなり上に広がっていた毒が、凛花の上に降り注ぎ始める。
毒の壁が崩壊を始めた。
これが、王の狙いか。
包んで閉じ込める事が目的じゃない。
逃げられない様にして、毒で殺す事が目的なんだ。
「うっわ……狭くなってきた」
その時、毒の壁の上部にいきなり穴が開き毒の『檻』が崩壊を始める。
(何が!起きたの!?)
その時、毒の壁の穴からニョキッ、と白い動物が顔を出す。
「ヘーイ!ヘイヘーイ!」
「……ありがと。行方不明さん」
「行方不明じゃない!神出鬼没だって」
凛花は毒の檻から這い出し、颯斗の頭を撫でる。
「俺は、ペットじゃねぇ!」
「行くよ」
「あっ、ちょっ!待てって……お前さ、毒大丈夫なのか!?」
バコンッ
いきなり颯斗に衝撃が走り、脳震盪を起こし、フラつき廊下に倒れてしまう。
揺らぐ視界に凛花が映り、笑顔を見せる。
「っつあぁ……元気な様だな。はいはい、行きますから」




