王の最終兵器
呆気に取られた逃げ遅れた客達は、頭を抱えて丸くなっていた。
色取り取りの衣装は、砂埃ですっかり茶色に染まっている。
床には椅子の木屑が落ち、大きな破片も落下している。
それが足に当たったのか、破片の横で蹲っている人も視界に入る。
「こっ、国王は……」
血肉が飛び散った椅子の背もたれを掴み、よろっと立ち上がる。
ずるっ、と床に広がった血に足を取られ転んでしまう。
服は真っ赤なトマトの様に変色してしまい、濡れて重たい。
冷たい服は体力を奪い、起き上がるのもやっとだ。
背もたれをもう一度、掴み椅子の向こう側の世界を見た時_______
「あ………」
王の座っていた椅子には、王の姿はなく、血がベットリと付いているだけだった。
シモベが死体を運んだのだろう。
あのデブをよく運ぶよね……。
そのせいか、床には引きずった血の跡もある。
辺りを見渡すが、怪我人が医療班に治療されているだけで人の姿はマバラ。
特にここにいる必要も無くなってくる。
こうなった場合、私は如何すれば良いのだろう。
その時、王の血の跡がずるっ、と動き、次第に天に昇り始める。
凛花は千里眼でそれに気がつき、ハッとして体の向きを変え、『その物体』と向き合う形となる。
目の前には、王が死んだ後抜け出た魂と血が合体してできた、王の道連れ作戦が広がっていた。
あんにゃろう。
その姿はまるで、ドラゴン
大きく口を開け、捕食しようとしている。
私を食べる気!?
冗談じゃない。
てか、あの国王戦う事もできたのね。
初めから自分で戦っておけば、全勝出来たのではなかろうか。
この国が。
ドラゴンは口から炎ではない、毒の塊をどぷっ、と吐き出した。
それは空中へ一瞬、浮くとその後、まるで隕石の様に、流れ星の様に、宙を駆け、凛花へ迫ってくる。
きっと、もう王の意思はないのだろうな。
ドラゴンが王の魂を操る形となっているはず。
魂のドラゴンには、銃弾は効かない。
だとすれば……。
「こうなったら、逃げるが勝ちだ!」
バッ、と体の向きを変え出口へ走り出す。
勝ち目無し!
未来予測をしても、毒まみれになって即死が目に見えている。
逃げた場合は助かる確率が、まだ、ある。
タッ、と床を蹴りスライディングで床を滑って移動していく。




