クロロホルム
「んー、毒腕使うと体力削られるんだよねー」
タッ、タッ、と階段を上りながら王宮のテラスへ向かう。
国王が今、そこにいる筈なんだが。
その時、足元が突然大地震のように揺れ始める。
ハッ、として目の前を見ると鎧の騎士が3人立っていた。
どうやらテラスへ向かうこの石造りの螺旋階段には、隠し扉があるようだ。
左の階段の壁を確認すると、石が少しずれている。
「あの石を決まりに従ってずらせばいいかも……」
騎士を避け、壁の石の一つに指を掛け、触ってみるがビクともしない。
(ズレない!?予想外……)
その時、背後に気配を感じる。
そういえば、背中がガラ空きだ。
凛花は壁を右手で掴んだまま、左手を離し左足から回し蹴りを騎士に向かって蹴りを入れる。
ガシャ、ガシャと音を立て騎士の鎧が揺れる。
が、自分は馬鹿だったと思う。
油断していた所為で足首を騎士に掴まれてしまっていた。
ギュッ、と足を握る手に力を入れられる。
(足首を折る気だ!)
慌てて体の向きを変えようとした時、掴んでいた石がガコン、とレバーを下げるかのように下に降りてきていた。
(もしかして……)
その途端、ガラガラと音を立てて岩の壁は崩れだし、そこには人1人やっと通ることのできる穴のようなものができていたのだ。
(ビンゴ!)
凛花は回し蹴りで兵士の腕から足を離し、穴の中へ転がり込んで行った。
(本当はテラスに行きたかったんだけどなぁ)
と、思いながら丸めた体を戻し、起き上がり頭を振って辺りを見渡すと、そこは国王の居るテラスへ繋がっていたのだ。
頭を上げ、上を見ると赤いカーテンが垂れてきている。
「っぁあぁ」
体を丸めたまま、頭を押さえ目線を上げる。
そこには肉ボール……じゃなくて!
国王が凛花の顔を覗き込んでいた。
「何しに来た?」
「迷ってきた」
体の下で拳銃に弾丸を込める。
そしてユックリ、体を起こし見上げると、
「なら、不法侵入じゃろん」
「ちげぇ!」
ダッ、と起き上がり、拳銃を国王に向ける。
「ふぅ、戻ってきてくれたのじゃな」
「え?」
「お前が姫になるんじゃろん」
「NO」
凛花は拳銃で国王に威嚇発砲をする。
すると、目の前に金貨を取り出し、
「これをやる」
「私の国じゃ使えない」
「何を言っとるんじゃ」
凛花はイラッとしながら国王に弾丸を打ち込む。
「お前がこの国の姫になればいい話じゃろん」
「………頭大丈夫?」
拳銃を降ろし、首を傾げる。
国王はニタニタ、と笑いパンパン、と手を叩く。
すると妖精……な訳なくて、イキナリ小人じゃなくて……小さな子供が現れる。
皆、フワフワした虹色の裾野広がったワンピースを着ている。
「こちらです」
「いや、ついていかないからね!怪しすぎでしょ!」
子供は始め、笑顔だったが顔を顰め、いきなり凛花を引き摺り始める。
凛花よりも小さい癖に、年下の癖に……………
「んだよ!こいつの馬鹿力!」
弾丸を撃つが、子供の体が弾丸を吸い込み、弾丸は消えてしまった。
聞かない馬鹿力の妖精みたいな子供の小人!?
「ちょっとうるさいです」
凛花の口に布を当て、引き摺り始める。
(クロロホルム………!?)




