おにぃ!?
「おにぃ、これで獣化できるかな?」
「やってみれば?」
しかし、茜はもじもじ、として獣化しようとしない。
黒マスクの少年は首を傾げ、茜の顔を覗き込む。
「どうした?」
「獣化の仕方が分からないよ」
黒マスクの少年は顔を顰め、そっかぁ、と呟く。
そして何かを思いついたのか、両手をパンッと鳴らして、
「ならさ、なりたい獣を思い浮かべてみなよ」
「なりたい獣…………」
茜はうーん、と頭を捻り、
「私は鷹が良いなぁ」
「なら、思い浮かべてみなよ」
茜は頭の中で鋭い嘴、鋭い爪、大きな羽、を思い浮かべていた。
しかし、上手く獣化出来ないのだ。
変わらない、人間のままだ。
すると、颯斗が笑い、
「慣れないと難しいけどな。獣化は細胞を体内で変化させて、俺の場合、狼の細胞に変化させている。だから、なりたい生物のイメージだけだと無理なんだな。それなりの努力が必要になってくる、一番難しい能力だと言えるよ。お前は鷹だっけ?なら、もっとイメージする力を鍛えないといけないかもね。それと一度獣化したら細胞がそれで固定されちゃうから、別の動物に変幻する事は不可能になる。よく考える事が必要。まぁ、鷹ならそれでいいんじゃない?空飛べるし」
「全くその説明、理解できないな」
茜はハァー、と溜息を吐きもう一度しっかり頭の中に思い浮かべる。
私は何になれるの…………?
しかし、何回やっても、茜は蟻にもなれなかった。
颯斗は期待はずれかぁ、と呟きながら獣化して駆けていった。
颯斗が去って数秒後、化学部隊が目の前に現れていた。
今、使うべきなのだ。
獣化能力は……………。
「おにぃ、私一人で倒してくるよ」
黒マスクの少年はうん、と頷き後ろへ下がった。
茜は頭の中で鷹を思い浮かべ、全身に力を込める。
しかし、茜は人間のまま何にも変化できなかった。
すると化学部隊は、拳銃を取り出していた。
茜は慌てて毒腕を発動させ、毒のバリアを張って弾丸を溶かしていく。
「おにぃは、逃げて!」
しかし、黒マスクの少年はその場から動こうとしない。
「お前を置いて逃げるかよ!」
「おにぃ!逃げて!」
(私一人で倒してやる!)
しかし、おにぃが……。
もし、流れ弾が当たったりしたら困るよ。
茜は毒腕を発動させ、毒の壁を作り出す。
しかし、化学部隊は驚きもせず、その壁を溶かしてしまった。
ベチョッ、と床に毒が溶けて飛び散っている。
毒が効かない
分かっていたけれど、完全に完敗だ。
茜は慌てて黒マスクの少年の手を取り、走り出す。
「おにぃ、ごめん。私じゃ、無理だった」
「茜は頑張ったよ。だって苦手な化学部隊に勇気を出して立ち向かったんだよ」
茜は「ありがとう」と小さく答えると振り返りながら毒の壁を作り、道を塞いでいく。
あいつらには効かないと知っているが、少しでも時間稼ぎになればいい。
おにぃが逃げる時間さえ、できればそれでいい。
タッタッタッ……
足音が廊下に響き渡る。
「おにぃ、絶対国王を倒すから!」
「おにぃは応援してるからな」
その時、ピシュッ、と音がしていきなり、おにぃが床に倒れ込んでいた。
首から赤い液体が流れていく。
「…………」
グッタリとしておにぃは動かない。
茜は慌てておにぃを揺するが動かなかった。
「なんで………ねぇ、おにぃ!おにぃ!」




