残飯処理班のレン
レンは放心状態のまま、ミオウが消えた庭を見つめていた。
跡形もなく、ミオウは消えている。
「な、んで……」
風が吹き、レンの体温をサッ、と奪っていく。
翠は大きく溜息をつき、ザクッザクッ、とレンの側へ歩み寄る。
「レン、あれはマリオネットだ。本体は別にあるから、レオウ………ミオウの体は無事だ」
「人殺し………」
レンは静かに呟くと、フラフラとした足取りでその場を立ち去った。
翠は大きく溜息をつき、背中を見送る。
フラフラと体が揺れているが、手はギチッ、と握り締められている。
(ミオウは、無事?確かに、死体がないわけだが____)
しかしながら、脳は働かず、何も答えが浮かばない。
食事を摂らなくては。
レンの体は不思議と、屋敷へ向かっていた。
翠はレンに背を向け、歩き出す。
なんなんだ、あいつは。
『ニセモノ』を守る護衛隊かよ!
『ホンモノ』を探す方が優先だろうに。
ほんっと、馬鹿な奴だぜ、レンは。
レンは屋敷へ入り、厨房へ走る。
銀色の重い、大きな扉を開け冷蔵庫の中の食材に手を付ける。
食材といっても、残り物で作られたマカナイのそのまた、残り物のようなもので明日には廃棄される予定だ。
特に、怒られることはない為度々ここを訪れている。
逆に、感謝されるだろう。
この残飯を処理するだけにも金貨数億枚はするからだ。
それは、この食材を用意する値段よりも遥かに高い。
そうなると、レンの胃袋によって0金貨で処理される方が良い選択なのだ。
廃棄されるといっても、別に腐っているわけではない。
王族の食事に使った食材の余りで作ったものなわけで、余りにも食材の輸入量と消費量に差があり、その差となった食材がレンの胃袋に収まる話なわけだ。
お陰でレンのおやつはここで作られ、どちらにも利益がある。
「うっメー!」
さすが王族、使用する食材が違う!
薬品や魔術を使わない自然野菜や、魔術で成長を促進していない家畜たち。
どれも美味しい!
その他、市民はというと上記の事を使って作られているわけで、美味しいのだがやはり格が違うというか……なんというか。
レンはムシャムシャと残飯を処理していった。(残飯処理班)
レンの腹が膨れる頃には、すっかり厨房は綺麗になっていた。
「腹ごしらえ終了!さぁ、加勢にいくか」
レンは弓を背負い、大きく伸びをして膨れた腹を叩き、眠気に耐えながら厨房を出ていった。
丁度、厨房の横で反乱軍と王国軍が戦闘を繰り広げていた。
レンは反乱軍に向け、矢を放つ。
レンはあえて急所を狙わない。
そのまま吹き抜けから開花へ飛び降りていった。
(始末は、自分の力でやってくれ!)




