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透明人間と戦う



2人が廊下を歩いて行くと、遠くにまた、少女が見える。

廊下の端のライオンの彫刻の前に視線は何処に向けられているのか、分からないが何かを見つめていた。

その少女には見覚えがあった。

金髪のドレスを着た姫である。


翠は顔を歪ませ、後退りをする。

「消えたんじゃ、ねぇのかよ」

視線の先にいたのは、レオウだった。

翠が倒し、消したはずのレオウだ。


ドサッと床に尻餅をつきながら、翠は刀を抜く。

レオウはロボットの様に、ガクガクと頭を動かし、2人を見つめた。

そして、シュンッ、と音を立て上へ飛び上がったかと思うと消えてしまった。

その後には何も残っておらず、人影すらない。

「死んだんじゃ、ねぇのかよ」


翠は目を見開き、床を引っ掻くように後退りをして行く。

また、シュンッ、という音がして、今度はもっと近くで聞こえて______

二人が振り向くと、そこには不気味に笑うレオウが居た。

トウジは叫び、駆け出した。

パタパタ、と足音を立て走って行く。


残された翠は、レオウを見つめた。

後退りをしても、レオウはこちらへ近寄ってくる。

「なんで、生きてるんだ……。消えたじゃねぇかよ!」

「馬鹿だね。私が簡単に死ぬわけないじゃない。人形(マリオネット)を殺したって、それを作り出している本体を倒さななければ、ずっと私は生き返る」

マリオネット!?じゃあ、さっき殺したやつもマリオネットか。


「どうやって、マリオネットを作り出している?」

レオウのマリオネットは、うーん、と唸り、

「これだけ教えてあげる。私のマリオネットには、分散された私の魂が入っていて、そのマリオが死んだら、その魂は別のマリオに移動して……。の繰り返しだから、死なないよ」

「俺は、マリオネットの作り方を聞いたはずだ!」

レオウはアハハ、と笑い、

「ちゃんとあんたの質問に答えるとは言ってない。で、無駄だってわかる?」


レオウはブンッ、と手を振り釜を召喚する。

「そして、マリオネットは新しい程強くなる」

足がすくんだ翠に向かって、レオウは鎌を振りかざす。

翠は刀に手を伸ばし、鞘を投げ刃で鎌を抑えた。


「マリオネットは、強くなるって言ったよね?前に戦ったマリオと同じと思わないで」

そう言うと、レオウは鎌を振り刀に引っ掛け手から跳ね除け、翠の肩を踏み、押し倒した。

「調子、乗ってるからこうなるの」



_______目の前からレオウは消えていた。

翠は起き上がることができず、ただ天井を眺めていた。

ミオウと同じ状況になってしまっている。


体が斬れてしまっている為、起き上がることができない。

「俺、死ぬのかよ……。まだ、紅を故郷に帰してないじゃないか」


日が傾き、斬れた部分が乾燥を始めていた。


その時、スタスタと音がしてドレスを着た何者かが翠の顔を覗き込んでいた。

金色の長い髪に、碧い目をしている。隣の奴も碧い目に金色の髪を後ろで結んでいる。


「貴方は、自分を見失ってしました。今の状況はその償いです。私はこの屋敷で医者をしているグローリーです。そして、隣にいるのが助手のシスル。貴方の命はもう、3分しか在りません。もし、今後この様な行為を行わないと誓えるのであれば、蘇生させてあげます」


「本当に生き返らせてくれるのか?」


グローリーは、頷いていた。シスルも、「はい」と呟く。


「代償は?」


「代償は、少しだけステータスが下がる事。スピード、攻撃力その二つが下がります。先ほどまでとは、同じ戦いが出来るとは思わないでください」


翠は頷く。グローリーはすぐに蘇生薬を翠に飲ませた。そして、鞄を手に取り足早に去っていった。

翠は起き上がり、刀を手に取った。体力は変わらない様だ。


走ってみれば、本当に遅くなっていた。脳からの伝達が遅い気がする。そうなると、攻撃を避ける事が出来なくなるかもしれない。


困ったなぁ、と思いながら翠は歩き出した。

その時、背後から何者かに押され、翠は危うく転びそうになる。


「まだ、生きてたのか」


レオウだ。翠を睨みつけ、傷を調べている様だ。


「おかしいな。お前、傷はどうした」


そう言って翠を睨む。さっきの出来事を話すわけにはいかないし、ただ黙っていた。そして、何も話さない翠に苛立ちを覚えながらレオウは鎌を召喚する。


「まぁ、いい。また殺せばいい話じゃない」


そう言ってレオウは飛び出した。ズズッ、とレオウに押され翠の体が後ろへ下がっていく。防御力が下がるとは、聞いてないぞ!レオウは手応えを感じず、


「どうした?本気を出せ」


と言う。向こうは余裕の表情だ。しかしながら、今でも翠は本気である。刀で鎌を抑えたまま、翠は刀から手を離してしゃがみ、前方へ転がりながらレオウの背後へ回る。そして、そこから背中を蹴り、倒した後刀を手に取り息を切らしながら背中に乗る。


しかし、そこでレオウは苦しみもせず体を起こし、立ち上がった。


「戦闘能力、素早さ、共に落ちているよ。どうした?」


翠は肩で息をしつつレオウをにらんだ。弱くなった俺では、レオウには勝てない。もし、紅だったらどういう手を打つ?



「なー、なんか、俺さぁ今呼ばれなかった?」

「紅を誰が呼ぶのよ。ふわぁ」

こちら天国1丁目。紅と碧は並んで寝転がっていた。

碧の前にはおにぎりが用意されている。

「ちょっと下界へ降りて、人間界を覗いてくる」


刀を手に取り、紅はフワフワ揺れる雲の上を歩き出した。

「ちゃんと帰ってこないと、浮遊霊になるよー」

碧の言葉に苦笑いしながら、紅は手を挙げ、天国1丁目の外れの大天使様がいる場所へ歩く。


「おーい!ジジイ!下界へ降りたいからさっさと、通路を用意してくれ」

ジジイという単語に顔を歪ませながら大天使は通路を用意。

コートを雲の上に置いたまま、紅は刀を持って下界へ続く通路を降りていく。

『ジジイ』が用意した通路は人間界へ続いていた______



紅が着地したのは、翠の数メートル後ろ。物陰から翠を見ると戦闘中のようだ。

「うっわー。俺が離脱してからこんなに強くなったんだ」と、涙ぐみながら刀を抜いた。そして、色度を低くしてほとんど見えない形にしてから飛び出す。


翠は何が起きたのか、よく分からなかった。レオウの攻撃を姿の見えない何者かが受けているのだ。刃物がぶつかり合う音がする。

レオウにも何が起きているのか、分からなかった。


(私は、見えない敵と戦っているの!?攻撃がよめない!)


紅の攻撃は全て、レオウに当たっている。

「翠!逃げろ!レオウはまだ、お前には相手できない!だから、強くなってから挑め!」

その声は、キチンと届いていた。姿の見えない紅が、助けに来てくれたんだ。

翠はそのまま逃げ出し、走って宮殿を飛び出していった。

目に涙をためて、走り続ける。


「何よ!なんで見えない透明人間と私は戦ってるの!?そして、なんで押されてるの?こいつ、さっきの奴より強い………」


ドサッという音とともにレオウの足が切り落とされ、体は床に倒れてしまった。

血が床に広がっていく。


「俺の、大切なライバルを傷つける奴は誰であろうとぶっ殺す」


紅はそう言ってまた、光の粒になり天界へ帰っていった。




「紅……………!」

翠はまだ、自分が弱いことを知った。紅は、死んでも強くなり続けている。

パタパタ、と走り翠は丘を駆け上がった。

「俺は、弱いよぉ。紅!どうして死んじまうんだよ」




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