消えたレオウ
その時、部屋にトウジが慌ただしく飛び込んできた。部屋の扉がガンッと音を立て、開く。そしてトウジは目を丸くした。
ミオウの上に翠が馬乗りになり、背中に刀を突き刺しミオウは血を流して倒れているのだ。トウジは翠に飛び掛かった。慌てて翠は避け、トウジをの攻撃をかわした。
「ミオウに、何やってんだ」
翠を睨みつけてくるトウジに呆れかえりながら、様子を眺めていた。トウジは混乱状態のまま、あの薬を取り出した。慌てて翠はトウジを止める。
「お前、"偽物"にその薬を使うんじゃねぇ!ミオウは既に死んでたんだ!こいつがミオウを殺したんだよ!そいつはレオウだ!ミオウじゃない」
しかし、トウジは聞く耳を持たなかった。薬の蓋を取り、レオウに飲ませようとしている。「トウジ!目を覚ませ!そいつはレオウだ!いいか、そいつは動物の声が聞けないんだ!カラスしか召喚出来ないんだ!」刀を振り、トウジの手に向かって白い斬撃を飛ばす。ズチャッ……。その時、斬撃は逸れ、トウジの肩に当たっていた。顔をしかめながらトウジは倒れこむ。
「翠!俺を狙ったのかよ!殺す気か!?」
腕から血を流しながらトウジは翠を睨む。
「トウジ!確かめろ!そいつはレオウだ!仲間を信じられないのか?」
すると、「こいつはミオウって自分で言ってるんだよ。仲間を信じられないのか?その言葉、そのまま返してやる」と叫ばれた。頭に血が上り、翠はつい、トウジを蹴り倒していた。
バタッと音を立て、トウジは床に倒れ翠を睨みつけた。
「何やってんだよ!」
「お前な、仲間をどんだけ見てこなかったんだ!こいつはミオウとは違う。ミオウは目は翠色の目をしてるんだ!こいつは、灰色だろ?」
くそっ、折角翠色にする魔術を使ったのに……。もう、効果が切れていたか。
幽霊になったレオウは目を抑えた。そして、口を開く。
「魔術が、解けちゃったみたい。私達姉妹は容姿はソックリだった。でも一つだけ違ったのは、目の色。私はミオウの様な綺麗な翠色になりたかった。なのに、灰色だった。だから、ミオウに変装するときは必ず目を緑色に変えていた」
トウジは驚き、レオウを睨んだ。
「騙してたのか……」
「勝手に信じたのはそっちじゃない。綺麗事ばっかり並べて、そんな事ばかり話す人間がいるなんて驚いたわ。でも、そういうのって_________」
レオウはコツコツ、と音を立て歩きトウジの耳元で囁いた。微笑を浮かべ、翠に聞こえない様に。
「___そう言うの、偽善者っていうのよ」
そう言うと、レオウはスゥッと薄くなり、消えていった。
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