表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/204

人の人生なんて関係ない


休憩中は、雑談タイムだ。鬼もいない事だしゆっくり休む事ができる。

「なんか、参加者増えたね。みんなは、どうやって参加したの?」

欠伸をしながら凛花はボワァ、という言葉とともに質問をした。

まず、紅が答える。

「俺は、気が付いたら参加してた」

やる気なさそうに、頭を掻きながら答える紅。


来夏はニヤァ、と笑いながら、

「あたしは、寝てたら勝手に!ニシシシシ」

と答える。とくに法則はないようで、プレイヤーにも決まりがない。

「私は、アナウンスがあって強制的に」

最後に凛花が答えると、紅は、

「ふーん。なんかバラバラだな」

と答え、俯き居眠りを始めた。

「確かに!でも、その方が面白かったりして!ニシシシシシ」

来夏は顔をクシャリ、と曲げて変な笑い方をした。


その時、アナウンスが流れ、3人に本部に来るように促した。

「はーい」

来夏は笑顔で手を挙げ、答える。

気怠そうな紅も「はいはい」と2回繰り返しながら承知した。

「救出って何処にだよ」

「紅、今本部って言ったよ」

少し抜けている。

「本部って?」

来夏が凛花に問う。新人さんには分からないかもね。

「町の中心の教会だよ」

と、街の中心の方を指差しながら凛花は答えた。


「救出しなくてもいいんじゃない?私は、元から協力するつもりはないから」

いきなり、来夏が意見を変えた。そのお陰で私の脳内はショートを起こす。プシューっと、耳から煙が出て行くような気がした。

「助けに行かないと、その人は死んじゃうんだよ!?」

「街の中心まで、何メートルあるかは私は知らない。けれども、そこまで行く間にもリスクがあると思う。助けに行くために命を落とす結果になるかもしれない」

「助けに行くのは危険だ。残った方がいい」

紅も、意見を変える。


「紅まで!」

「助けに行けばペナルティ、科せられる場合もあるかもな」

「紅・・・確かにそうだけど、でも、このゲームは人の人生を動かすんだよ?もし、その人がこのゲームで死んじゃえば、この後の人生が無くなるんだよ!」

凛花の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。紅は顔を顰め、手で顔を隠すように覆い俯いた。

「っ・・・」


その時、場の空気を読まない冬華が口を出した。

「人の人生なんて関係ないわ」

「冬華!」

なんて奴なんだ。こんな奴、鬼に食われて仕舞えばいいのに。

「凛花だけで、行くよ!皆は、残ればいい。団体で行って皆死んじゃったらいけないもん」

その言葉に紅がまた、反論する。

「命捨てに行くようなもんだぞ!」


「人の勝手じゃない。どーでもいいわ、好きにしたら?」

冬華は隠れた右目をギッ、と吊り上げ凛花を見つめた。

隠れた右目は赤く光る。

「冬華・・・私の自由だよ。紅、冬華ちゃん、逃げ切ってね。紅、今までありがとう。もし助かっても、ペナルティー科せられたらみんなの足手まといになるからここでお別れだね!さようなら」

凛花は、2人に背を向けて教会に向かった。力強く地面を蹴って、前に進んで行く。

もう、振り返らない。絶対にだ。振り返ったら・・・もう先へ進めない。

顔にパチパチと小さな粒が当たる。

(負けない、絶対、助けるんだ!もし、失敗しても皆がいる。ゲームを進めてくれる。だから、私が死んだって大丈夫)

すると、急に肩の力が抜けたように体が地面に崩れ落ちた。今まで、肩に力入っていた事に全く気づいてなかった。


ゴーンゴーンゴーン

教会の金の音がする。重い音は、耳に響き頭の上で金色の金が揺れた。

「着いた…」

そこは教会。屋根の上には十字架が乗っている。金色に光る十字架が、今日は黒く見えた。扉を開く。木製のドアのドアノブに手を掛け、力一杯押した。

「お待ちしておりました。中藤凛花さん?お1人ですか?」

支配人が不気味に笑った。

「皆は、人の命なんてどうでもいいって思ってる。私は・・・違う」

ふぅ、と支配人はため息をつき、

「皆さんは、長いゲームの中で精神的にもお疲れなのですね。」

「!!」

「モルモットのあなた達は、新型ゲームのテストをしているのですよ?」

「そんなの聞いてない」


凛花の視界が歪んだ。骸骨野郎もグニャリ、と体を曲げたように見える。

「あら、口が滑ってしまいました。ハハハ!あなた達は、表向きの理由で挑んでいたと思いますが、裏は、モルモットなんですよ!ええ、大変いいデータが出てます」

「騙したの?」

目を抑えながら、凛花は支配人を見つめた。カタカタ、と骸骨は揺れる。

「まぁ、そうなりますかね?」

支配人は、白い骨の顔を撫でながらそう言った。かんぜんっに馬鹿にされる。こんな奴、砕いて海にでも投げて仕舞えばいいのに。

「もう・・・嫌だ!早く、帰りたい!」

「どうします?ゲームしますか?」

「はい」

「そうこなくては」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ