人の人生なんて関係ない
休憩中は、雑談タイムだ。鬼もいない事だしゆっくり休む事ができる。
「なんか、参加者増えたね。みんなは、どうやって参加したの?」
欠伸をしながら凛花はボワァ、という言葉とともに質問をした。
まず、紅が答える。
「俺は、気が付いたら参加してた」
やる気なさそうに、頭を掻きながら答える紅。
来夏はニヤァ、と笑いながら、
「あたしは、寝てたら勝手に!ニシシシシ」
と答える。とくに法則はないようで、プレイヤーにも決まりがない。
「私は、アナウンスがあって強制的に」
最後に凛花が答えると、紅は、
「ふーん。なんかバラバラだな」
と答え、俯き居眠りを始めた。
「確かに!でも、その方が面白かったりして!ニシシシシシ」
来夏は顔をクシャリ、と曲げて変な笑い方をした。
その時、アナウンスが流れ、3人に本部に来るように促した。
「はーい」
来夏は笑顔で手を挙げ、答える。
気怠そうな紅も「はいはい」と2回繰り返しながら承知した。
「救出って何処にだよ」
「紅、今本部って言ったよ」
少し抜けている。
「本部って?」
来夏が凛花に問う。新人さんには分からないかもね。
「町の中心の教会だよ」
と、街の中心の方を指差しながら凛花は答えた。
「救出しなくてもいいんじゃない?私は、元から協力するつもりはないから」
いきなり、来夏が意見を変えた。そのお陰で私の脳内はショートを起こす。プシューっと、耳から煙が出て行くような気がした。
「助けに行かないと、その人は死んじゃうんだよ!?」
「街の中心まで、何メートルあるかは私は知らない。けれども、そこまで行く間にもリスクがあると思う。助けに行くために命を落とす結果になるかもしれない」
「助けに行くのは危険だ。残った方がいい」
紅も、意見を変える。
「紅まで!」
「助けに行けばペナルティ、科せられる場合もあるかもな」
「紅・・・確かにそうだけど、でも、このゲームは人の人生を動かすんだよ?もし、その人がこのゲームで死んじゃえば、この後の人生が無くなるんだよ!」
凛花の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。紅は顔を顰め、手で顔を隠すように覆い俯いた。
「っ・・・」
その時、場の空気を読まない冬華が口を出した。
「人の人生なんて関係ないわ」
「冬華!」
なんて奴なんだ。こんな奴、鬼に食われて仕舞えばいいのに。
「凛花だけで、行くよ!皆は、残ればいい。団体で行って皆死んじゃったらいけないもん」
その言葉に紅がまた、反論する。
「命捨てに行くようなもんだぞ!」
「人の勝手じゃない。どーでもいいわ、好きにしたら?」
冬華は隠れた右目をギッ、と吊り上げ凛花を見つめた。
隠れた右目は赤く光る。
「冬華・・・私の自由だよ。紅、冬華ちゃん、逃げ切ってね。紅、今までありがとう。もし助かっても、ペナルティー科せられたらみんなの足手まといになるからここでお別れだね!さようなら」
凛花は、2人に背を向けて教会に向かった。力強く地面を蹴って、前に進んで行く。
もう、振り返らない。絶対にだ。振り返ったら・・・もう先へ進めない。
顔にパチパチと小さな粒が当たる。
(負けない、絶対、助けるんだ!もし、失敗しても皆がいる。ゲームを進めてくれる。だから、私が死んだって大丈夫)
すると、急に肩の力が抜けたように体が地面に崩れ落ちた。今まで、肩に力入っていた事に全く気づいてなかった。
ゴーンゴーンゴーン
教会の金の音がする。重い音は、耳に響き頭の上で金色の金が揺れた。
「着いた…」
そこは教会。屋根の上には十字架が乗っている。金色に光る十字架が、今日は黒く見えた。扉を開く。木製のドアのドアノブに手を掛け、力一杯押した。
「お待ちしておりました。中藤凛花さん?お1人ですか?」
支配人が不気味に笑った。
「皆は、人の命なんてどうでもいいって思ってる。私は・・・違う」
ふぅ、と支配人はため息をつき、
「皆さんは、長いゲームの中で精神的にもお疲れなのですね。」
「!!」
「モルモットのあなた達は、新型ゲームのテストをしているのですよ?」
「そんなの聞いてない」
凛花の視界が歪んだ。骸骨野郎もグニャリ、と体を曲げたように見える。
「あら、口が滑ってしまいました。ハハハ!あなた達は、表向きの理由で挑んでいたと思いますが、裏は、モルモットなんですよ!ええ、大変いいデータが出てます」
「騙したの?」
目を抑えながら、凛花は支配人を見つめた。カタカタ、と骸骨は揺れる。
「まぁ、そうなりますかね?」
支配人は、白い骨の顔を撫でながらそう言った。かんぜんっに馬鹿にされる。こんな奴、砕いて海にでも投げて仕舞えばいいのに。
「もう・・・嫌だ!早く、帰りたい!」
「どうします?ゲームしますか?」
「はい」
「そうこなくては」