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昔の俺はいない

トウジは、耳を抑えつつ歩き始めた。


鬼が………近付いているかもしれない。


翠は、首を傾げながらトウジを見つめる。


「おい、トウジ。大丈夫なのか?」


「っ………」


痛みは、どんどん強くなる。激しい痛みが耳を襲い、壊れてしまいそうだ。


「「「「オニィ!隠れてないで、出てこイィ!」」」」


トウジは、耐えきれず叫んだ。喉が痛くなるまで、叫び続けた。すると、霧の中から巨大な殺気が現れた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


殺気は、ドンドン強くなる。正直、怖い。死んでしまうのだろうか………


そして、遂に姿を表す。望んでもいなかった奴が。


途轍もなく、デカイ足。雲を突き破る頭。ギラギラ光る目玉。


「おい、嘘だろ。なんで、呼び出すんだよ!」


翠は、イライラをトウジにぶつける。


「いや……呼び出すつもりは……なかっ………あったかもしれない」


コイツ、死にたいのか。こんな奴、呼び出して。『馬鹿』なのか!?


「トウジ、戦闘方法あんのか?」


無いですよ。俺、一般人ですし。フルフルと、首を振る。すると、


「何の、能力の無い人間は生き残れねぇんだよ!誰かの、力に頼ってばかりじゃ、ダメなんだよ!戦え!鬼に、また背を向けるのか!?俺は、向けない!剣士は、背を向けない!」


翠は、刀を鞘から抜き出す。


「俺は、紅よりも強く、碧よりも強く、誰にも負けない《最強》になる。その為には戦う」


トウジは、どうする事もできなかった。俺は、武器を持っていない。


「トウジ、殺れるか?」


翠が、振り返りトウジに問う。トウジは、傷だらけの顔を翠に向けた。そして、上下に頭を振る。


よし、翠はそう言うと上着を脱ぎ、背負っていたトウジに刀を渡した。


「お前、持ってたのか。刀………」


「そんな事、どうでもいいだろ?闘えよ、自分なりの殺り方で」


そう言うと、翠は刀を持ち鬼に向かっていった。トウジの手に握られた刀。そこには、名前が彫られている。しかし、翠の名前では無い。


「千光寺 碧」


そう、書かれていた。その刀は、翠が碧の形見として受け取ったものだった。


(その刀……碧が助けてくれる、トウジ)


トウジは、ブンッと刀を振った。思ったより重く、初心者にはキツかった。しかし、刀を持ったまま何もしないわけにはいかない。


俺も、殺る


刀を持ち、翠の後を追う。俺だって、殺れる。もう、昔の俺はいない。


「うわぁぁぁぁ」

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