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二重人格のプレイヤー


「フワァァァ!」

という掛け声とともに、少し、背伸びをする。鬼は、どうやらまけたようだ。足音もなくなり地も静かになった。服は、汗でベタベタになっている。着替えたいが、これ以外の服はない。

「紅、大丈夫か?」

紅を気にしながら、凛花は服をパタパタと動かし、風を入れた。

「ああ、大丈夫だ」


紅は辺りを見渡しながら、答える。凛花は、ふと思った事を口にした。

「もっと、人数増えたらね・・・」

そう、もっと人数が増えてくれれば鬼を引きつけるかかりと倒す係りに別れられるのに。その時、あの迷子放送のようなアナウンスが世界に響いた。

『ピンポンパンポーン!新人さん救出ゲームを開始します』

「おっ、ピッタリじゃねーか」


紅は嬉しそうに口の端を吊り上げる。

『今回は、そのままのコースで救出ゲームを行いますのでそこを動かないで下さい』

アナウンスが途絶えると、凛花は地面に腰を下ろした。右上を見上げれば、鬼が停止している。赤い大きな体は前のめりになり、足は一歩踏み出した形だ。

『はーい』

2人の声が重なった。紅を見て、笑顔を作る。


『今回は、鬼の頭についている救出ボタンを押して頂きます。その他あり』

「ラックショーじゃねーか。俺が、鬼を止めればいいんだろ!?」

紅は刀を抜いて、笑う。

「紅、天才」

そっかぁ、と凛花は手を叩き、準備運動を始めた。

「俺が、止めてる間にお前が押せよ」

「オッケー」

凛花はパシンッ、と頬を叩き鬼を見つめた。鬼に人語が理解出来るのかは知らないが、この会話は聞かれてはいないだろう。




ドスン、ドスン、ドスン______

鬼は一歩ずつ、重い体を持ち上げながら進んできた。

「紅、どれくらい止めれる?」

指を鳴らしながら凛花は紅に問う。

「30秒」

刀を肩に乗せながらぶっきら棒に紅は答えた。

「楽勝」


ピタッ


鬼が止まった。空気も止まったように思える。鬼の黄色い目が光る。

「30秒、過ぎたら延長。OK?」

凛花は、眉間にしわを寄せながら言った。もし止めてくれなければ、即死間違いなしである。

「アイヨ」

紅は、めんどくさそうに返事をする。そして刀を振り、鞘に収めた。


凛花は、鬼の体を登り始めた。ゴツゴツした体に手や足を掛け、登っていく。

残り10センチ。もう手が届きそうな部分にボタンはある。しかし、


グラリ


鬼の停止術が解けてしまった。クッソ、あと少しだったのに。

体が揺れ、危うく落ちそうな状況だ。鬼の背中に爪を立て、落ちないように皮膚を掴む。凛花は紅に合図を送った。コンクリートのブロックに座った紅が刀を振り、鬼に停止術をかける。


鬼はまた、人形のようになった。その間に鬼の背中を走り、ボタンへ飛んだ。頭まで飛べるだろうか。しかし体は、鬼の頭まで飛ぶ事ができていた。手の下に赤いボタンがある。そのボタンに手を乗せ、力を加えた。

ピコーーーン

(何このボタンの音?成功?失敗?)不安げに見守る2人。そして、

『ミッション1クリア』

アナウンスが流れた。喜びたいのだが……。

「ミッション・・・1?」

『ミッション2。鬼の背中のレバーを下げろ』

「紅、止めれる?」

鬼の頭の上から大声で叫ぶ。

「_____スタミナ切れ。なんか食わねーと動かねぇ」

「紅のバカ」


そう言って、何かを食べ物はないか調べた。凛花は、服のポケットの中を探った。

(ラッキー)

「紅!」

凛花は、ポケットから手を出し、紅に1つ、自分に一つ。茶色い四角い物体を投げる。

「何、チョコ?」

「うん、そうそう。チョコだよ」

紅は包み紙からチョコを取り出し、口の中に放り込み刀を持ち直した。

「さんきゅ」

紅は、くるりと凛花に背を向けた。そして刀をブンッ、といつもより力強く振り下ろした。ピタッ。刀を紅が鬼に当てるとピタリっと鬼が止まった。


「よし、登る!」

凛花は、鬼のくるぶしに足をかけ、登って行った。くるぶしから、ふくらはぎの皮膚を掴んで上に上がる。10分かけて(延長何回か入れる)背中についた。

「レバー・・・あった!」

鬼の背中に明らかな人工物が付いている。四角い鉄製の箱から長い棒が伸びてるから___。

「レバー、発見!」

凛花は、赤いレバーをグイッと下げた。

『鬼、爆発まで10・9・8・・・・・』

これまたぶっ飛んだ事してくれたな。凛花は、後ろへジャンプした。


地面に「スチャッ」と着地して、鬼を見上げる。

まだカウントダウンは続いていた。

そして、1秒前。

紅は凛花の上に被さり、爆発から守った。

頭を抑えられ、地面に伏せた。

頭の上に、紅の頭がある。

動けなかった。(頭、動かしたら顎強打だよね……)

目の前で炎が上がり、黒い煙が空へ登っていく。

鬼は大爆発を起こした。

鬼の肉塊(ハヘン)があちこちに飛び散り、焦げ臭い匂いを広げる。


「うっ……」

凛花は顔をしかめた。

紅は腕で鼻を押さえていた。

「紅……サンキュー」

「どーいたしまして」

二人は起き上がった。鬼の姿は何処にも無い。

その時、

「あのぉ、お話中済みません。

助けていただきありがとうございました」


すっかり忘れてた。《NEWプレイヤー百名来夏・冬華》

「えっ?もう1人は?」

「二つの人格なんです。今は、冬華バージョンです」

2重人格の少女か…。前髪で目が隠れた少女は凛花たちに頭を下げた。

「ふーん。これでまたプレイヤーが増えたな」

紅は帽子をかぶり直した。

「やった!冬華ちゃんだね?ヨロシク」

「イシシシ!今は来夏だもんね!ばっかだなぁ!」

やっ……ややこしい。2重人格の子を扱うのは初めてだわ…。



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