表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/204

怠け者の能力


翌日、太陽が空に登る前。早朝に凛花達は起床した。

外を見れば、霧があり鬼が姿を隠してしまう為、霧が無くなるまでは倉庫で待機することにした。

「紅・・・もう独りぼっちにしないで……」

屋根の穴から顔を出し、外を見渡す。地上より数十メートル高い屋根からの景色は全く違う。普段は見えない景色を見ることができた。


「お前なら、何回も一人ぼっちなんだから大丈夫だろ?」

足元から紅の声が聞こえた。冗談半分のセリフでも頭にくる。

穴から顔を抜き、下を見下ろす。そして叫ぶ。紅より偉くなった気がして、その日は一番滑舌が良かったと思う。

「んな訳ないじゃん!大丈夫じゃないから言ってんのに!」

口からスルスルと言葉が出て行った。

あり得ないほど、言葉が溢れてくる。

紅はスッカリ怯んでしまい、顔のパーツを中心に寄せて感情を表現していた。


_______


「おっ鬼が来た!」

いきなり、紅が凛花の目の前に飛び降りてきた。

あの穴から外の景色を覗いていたのか…

「本当に来たの?」

「本当にきた」

紅は額から汗を流しながら、慌てている。

ドスン、ドスン、ドスン_____

地面が揺れ、体が跳ねる。

あの音が耳に入り、今までの音との一致して、脳に伝達された。

「鬼だ……」

凛花は、ピタリっと停止してしまった。(なんで、動かないの!?)

足が地面に吸盤のように吸い付けられて動かない!

(これを、足がすくむって言うの?なんで、こんなときに)


自分に苛立ちながら、足を動かそうとするが全然動かない。

動けない。まるで、石になったかのように。

メデューサに石にされたかのように。

「しっかたね~な」

その声とともに、凛花の体は浮き視界の位置が高くなった。

紅がおぶってくれたのだ。

紅の首に腕を回しながら、その景色に目を輝かせた。

空気中のチリが朝日に反射して、煌めき空へ登っていく。


「うわっ、お前重い!」

紅は顔を顰めた。そう言いつつ、軽々と背負い走り出した。

その足取りはウサギのように軽快で、楽し気。

「んなわけないじゃん!重いわけないよ!」

紅から笑みが溢れる。頬が緩み、楽しそう。

「鬼の見張りはお前な、お前がやれよ」

紅はタタタタ、と道路を走り路地に入って行った。

用水路に石を蹴散らし、波紋を作りながら走っていく。

「うん、鬼は・・・すぐ後ろ」

凛花は振り返しながら、声を震わせて話した。

「えっ・・・」

紅の顔が蒼白になった。口元が引き攣り、走るスピードがやや落ちる。


「お前、さっきなんて」

「ん?真後ろ」

紅は気絶しそうになった。

首だけを動かし、後ろを見ると____

大きな巨体でこちらへ歩いてきている。

踏まれてしまえば、ひとたまりも無いだろう。


「鬼だァァァァ!」

鬼はもう数メートルしか離れていなかった。

(なんで、俺、能力が働かなかったんだ?)

まぁ、そんな事どうでもいい。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ