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アンナの知らないことは何?

私が目覚めたのは、あの日から丸々3日たった日のことらしい。

寝ていた私にとって、三日間の記憶がないわけであっという間なもの。それでも、大粒の涙を溜め込んだアンネの顔を見れば、長く眠って居たのだと実感させられる。


「あぁ、人形になれたんだ。お早う。アンネ。」


そんなことよりも、人形になれたことを嬉しく思った。人型であれば獣人として馬鹿にされることもなくなり、様々な代償があれどやれることが広がる。

ただ、考えをかえたマリーに契約を申し込まれれば、本格的に受けるか去るかの選択肢を選ばなければならない。

ペット契約か普通の契約か。

ペット契約の場合、飼い主に媚を売り、清く美しく居なければならない、犬や猫、インコやオウムなど向きの契約。

それにたいして単なる契約は、契約者の隣で戦い、強く美しくてはならない。我々鷹などの猛禽類や爬虫類向け。

そしてそのどちらも結ぶ契約もある。

それは良家のお嬢様に多い。

さて、どれか。


「良かった。アンナ様。」


涙目のアンネの隣、私の先生たるケビン先生がにっこりと微笑んでいる。

どことなく魔王ににている顔つきだが、世界には3人のそっくりさん。つまり、同じ顔をした人物が四人いる。とまで言われているので、そんな感じだろう。

それにしても、体の節々が痛い。


「アンネ、ケビン先生。もう駄目かも。」

「ダメ何か言うな!」

「そうです!大丈夫ですよ!」


そういってもダメなものはダメだろうに。

ある人が聞けば【根性が足りない】だとか、【気持ちが足りない】等というが、そんなこといわれたって、頑張りたくないと思ってしまえば、いかなる励ましの言葉さえ苦痛とかすのだ。

治るかも。何て希望をちらつかせるより、いっそ痛みを無くす麻薬をくれればいいのに。とでも思ってしまう。

からだがボロボロになっても慢性的な痛みを知らずに、マリオネットの糸が切れるように痛みがほんの一瞬、ちくっと指を針に刺してしまった痛さで死んだほうがいい。

しかし、アンネやマリーはきっと許さない。


「無理よ。いろんな所が痛いもの。あまり頭も働かないし。半分ぐらいとけてんのよもう。」

「溶けてなんかありませんから!気を確かに!」

「いや、無理よ。私が死んだらアリスという女に飲ませて頂戴。」

「な、なにをいってんだ!諦めるな!」

「ムリムリムリ、ムリよ痛いわ。」

「直ぐに病気を鑑定する魔術師を呼んであります!診てもらって改善策を考えましょう!」

「無理よ!それとも東の国からやって来た人間の血を輸血しろって言うの?やよ!ムリムリムリ!」

「はぁ?なんだそれ!なに?輸血?輸血で治るのか?」

「やだー!痛いのやだー!なに?輸血で治るの?」


いきなりアンネが輸血で治るのか?等と聴いてくるが、もう訳がわからない!

私もアンネもお高い、怒鳴りあっていて疲れてくる。

もう取り繕うのさえ嫌になってくるほど!


「くそぅ。死んでたまるか!こうなったら魔術で乗っ取りを!」


私もこれでも獣人だ。皆が皆、人間とは違い魔力を個人差があれど持っている。

私は、魔力は膨大だけど魔術型の獣人より遥かに体力が劣るというものだ。

魔術にはそれ相応の体力がいる。それゆえ、戦士型の獣人は馬鹿にすることはなく、体力と筋力しか鍛えられないので、【魔力が少ない】と馬鹿にさせる。

その他に魔導戦士型と呼ばれ、アンネはこの部類に入り、筋力や体力と魔術を両立し上げていくというものだ。

魔術型とにているが、魔術型はアシストや遠中距離での攻撃になるが、魔導戦士型はそれに近距離攻撃が追加されることになる。

魔術型でも出来そう等と思われがちだが、魔術型はスタミナを。戦士型はいわゆるHPを。魔導戦士はスタミナとHPを消費していく。

それで私は魔術型。

簡単な乗っ取りや憑依、転換や移転、除霊や呪符そういった知識ならばあってもやらなかったのは、そういった簡単な魔術でもギリギリ命がけで行えば出来るかも。という体力のせいでチートは出来ないでいた。なんてことはないはず。

もちろん、人型になる前の事の話で、基本能力が上がってるはずなのだ。

やろうと思えば出来るはず。


「おちつけ!バカ!」


ゴツン!という音とゴッ!という衝撃が私を襲う。

もちろんアンネが、殴ってきたためなのだけれど。

こんなことになったら当然、現実と向き合わなければない。


「ケビン先生。アンネがアンナを殴ったぁ!アンナ病人よ!」


私の訴えをやさしくケビンは受け止める。そして殴られた所を優しく擦ってくれると、痛みがなくなった。治癒魔法だ。

ケビンは人間にしては様々な魔術が使える万能人間だ。生まれ持った才能と気質でここまで上り詰めたと聞いたりもしている。

しかし、それでも天才は存在する。隣国の前王は火の海を作り上げアスファルトを、溶かしたり、かの国の女王は天候を予測、つまり未来予知をするなど、才能と気質と残りの一つがあるものが本物の天才。

かれは常人からする天才だろうが、なんせ最後のひとつをうまく使いこなせていないようだ。

それを私は感じたのだ。


「はぁ、落ち着けよ。大丈夫だ。お前、前より元気になったじゃないか。体質の変化、いや人形になると寿命も病気も治るっていうし。」

「そもそも、人形ってなんなのよ!人型でいいでしょ?土は何処行っちゃったの?」

「それを言われても困る。」


・・


それにしても、人形になると寿命も病気も治ると言うのは本当かもしれない。

人型化して前よりも体の調子がいい。

魔王を探して配下にするのもこれなら簡単だ。

魔王なんて魔力の強い人間とたいしてかわらない。

肉体(ハード)は少し強い程度の人間と思えば、簡単に洗脳でも精神攻撃でもして、配下にできてしまえる。

情報収集をしなければならないけど、顔の広いアンネにやってもらおう。


「アンナ様。」


ケビン先生が私をなでる。


「アンナ様、魔術師のかたがいらっしゃったようです。」


魔術師のひとはよぼよぼのおじいさんだった。

おじいさんは私のおでこに触れて、足、腕に触れる。


「アンナちゃん。どこかいたいところあるかい?」

「おもに全身が痛い。」

「ふむふむ。たしかこの部屋から落ちたとか。」

「うん。落ちた。」

「うむ、流行病は治ってる見たいたが、落ちたことでヒビが入っているよう、暫くおとなしくしていればなろうじゃろうな。よかったな、不治の病を克服したようじゃな。」

「え?」

「骨にヒビが入ってるが、獣人ならでわの回復力に助けられたようじゃが、アンナちゃんアルビノじゃろ?残念じゃが、寿命は人間とかわらないだろうな。」

「延命はできないのか?じいさん。」


アンネがおじいさんにくらいかかる。

それでも、人間と同じぐらいの寿命ならなんとかできる。

子孫を見守れないのは残念だけど。


「ワシにはできんよ。できるとしたら、魔女の力を取り込むか、それこそ不治の秘宝や魔王に頼むしか、それしか方法はないじゃろうな。」


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