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フラグはたったのか?

・アンナ視点・


マリーと出会って三年の月日がたち、私は成体となった。

16となったマリーとカイトは公に婚約を発表した。

これはいい展開。

ゲームではこの時点でアリスがベッタリと付いていたが、アンネの情報からその気配はない。

そこで出てくる問題は、アリスと魔王と呼ばれる魔界の王が恋愛の果てにこの国を滅ぼすという、【悪役ハッピーエンド】だ。

早々に魔王と親交を深め、配下にしようと息巻いていたが、この私が病を患ってしまった。

それが一年前のことだ。

少々、はしゃぎすぎた。己が日光に極端に弱いことを忘れていた。

私が倒れた日に、いつも通りアンネと口喧嘩をしていて、いつも通りカイトがなだめに入ったとたん、クラっときたのだった。

まだ、特効薬が見つかっていない不治の病というものだ。

感染は、感染したものを食べると感染するので、隔離される必要はないが、最後は脳が溶けるらしい。

そのせいで一年前からずっとベットの上。あの日の審査官は私のお世話役というものに滑り込んできている。

そして魔王を仲間に率いれなければならないのに、これじゃあ何にもできやしない。



「アンナ!魔女の秘薬だ!もしかしたらそれを飲めば治るかもしれない!」


魔女の秘薬。

伝説に登場する薬で、魔物と戦う戦士の手足を治してみせた万能薬のことだ。

しかし、所詮は伝説。

存在するかもわからない物に頼れる訳じゃない。


魔女の秘薬ったって、存在するかもわからないもの……。


「お前が何時も言ってただろ!伝説には元となる事実が存在するって!」


幻獣であるお前が治せないなら、薬よりも痛み止を頂戴よ。


「……俺は諦めないからな。」


あの日からアンネは変わった。

昔のように接しているし、ずっと側にいる日もあった。

蝕まれてから、「二人が一緒にいるのは好ましい。」と漏らした際には、泣きながら怒りだして驚いた。


「アンナ。どう?」


入れ替わりにカイトとマリーが部屋に入ってきた。

マリーは私の口を撫でて心配そうな声音で話しかけてくる。

それに私はピッピーと声を出した。


「アンネが魔女の秘薬を見つけ出してくれるまで、頑張りましょうね。」


別に頑張らなくてもいい。死ぬときは死ぬよ?


私の方が声はけして届くことはない。


「そうよ!頑張りましょうね!」


カイトも同じように口を撫で、部屋を出ていった。

私はこの時間が退屈でしかない。

せめてリモコンに脚が届くなら、テレビでも見てのんびり出来るというのに、アンネは今日に限ってリモコンをこっちに持ってきてくれていない!


リモコン!こっちこいー!


私が一人で騒いでいると、目の前に影が現れた。

瞬間移動を取得しきれていない私にとって、この距離からは壺なんか動かすことなど無理な話とわかってる。

つまり、侵入者。

首を巡らせ部屋を見回せば、 曲者の姿を発見できるわけで………。


くせ者だぁーーーー!


と叫んだ。

当然、甲高い私の声は王宮(私の病気治療の理由上、婚約者ながら王宮暮し。)にきれいに響いてくれる。

すぐに、近くの衛兵が駆けつける音が聞こえていて、ボロボロの体に鞭を打ち、シャンデリアに飛び乗ったが引きずり下ろされる。

そこで眼球狙いで起き上がり曲者の腕に爪を食い込ませる。

それと同時に扉が開かれ、衛兵が。遅れてアンネが部屋に入る。

私を掴んだまま窓枠に足をかけた曲者に対して抉るように嘴で頬をつつくと、私を外に放り投げる。


放り出された私は、無理をした痛みに動かせないまま落ちていく。

鳥なのに。

無風の空中で曲者の顔をはっきりととらえる。


あいつは魔王だな。


そんな気がした。

いつの間にか重くなった体で羽ばたこうとして人間の腕が見えた。

その腕は真っ白で手を伸ばし空気を掴んだ。


これを思いっきり動かさなければ!


そう、思った。

だから空気を掴んで動かした。

それでも、叩きつけられ私は意識を手放した。


・アンネ視点・


この俺が幻獣となり、二年半がたった。

2年前に再会した最愛の妹は、ずる賢く奔放に生きていてじーんきた。

アンナの主人であるマリー嬢と俺の契約者のカイトはアリスという女に妨害されつつも愛を深めていっていた。


そんな俺は転生者だ。

この世界は乙女ゲームサイドだが、親ゲームとして別の攻略ゲームが存在していた。

元々はアクション戦略ゲームで、恋愛ゲームはついでに妹から借りてやったことがあった。

もちろん男なので、攻略キャラにときめくこともなく、こんな風になりてぇな。ほどの意識だった。

その上イラストが素晴らしかった。戦略ゲームと同じ風調で魔物のグラフィックにはまり、イラストレーターにはまった俺はそのゲームをイラスト目当てだけに進めていったりもした。

フラグ等の選択で考えながら集めていっていたので、頭に残っている知識をフル活用して生きてきていた。

貴族は公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の順に身分が高く、契約者、カイト=アエトス・タイル・ジャーレフはその上の王子。

カイトは王太子、つまり第一継承権を持つ第一王子でひとつ下に弟がいる。

そしてアンナの主人、マリー=イェラキ・アルパクティコ。

アルパクティコ家は建国時代から王家を支えている古株の公爵家で、その縁があり二人が婚約した。

そんな物知りの俺の死因は、友人の妹の葬儀中に突っ込んできたトラックに引かれて上半身と下半身が別居してしまったからだ。

その時、友人も巻き込まれていたが、俺が突き飛ばしていたので骨折程度で済んだだろう。

ニート確定なジメ男な俺より、イケメンが生きていた方が社会に貢献できるからな。

あいつには妹が死んだのにその葬儀で友人の俺まで死んでしまい申し訳ないと思っている。

もし叶うなら土下座して謝りたい。

抱いた恋慕は伝えたかった相手も自身も死んでしまい仕舞いこむことにした今は、妹との口喧嘩が楽しくてしょうがなかった。まだ素直に妹を褒めれないまま、また失うのは嫌だと思った。


そんな中今度はアンナの叫び声が聞こえる。

俺はすぐアンナの部屋に向かって飛び込んだ。

窓に足をかけた男はアンナを放り投げる。

すぐさま男を倒すとアンナに手を飛ばした。

アンナは人形となって手を伸ばす。それでも届かずにアンナは重力にそって落ちていった。


「アンナ!」


俺は飛び降り、アンネに近づく。

気絶をしているが、頭から出血をしている。


「アンナ!」


すぐに回復魔術をかけるが、気を失ったままだ。

ここは乙女ゲームのはず。これは戦略ゲームのイベントのはずだ。

アンナは魔王と知り合ってもいない。

このイベントは遠征地でアンナと共に魔王に出会い、魔王がアンナに恋をしなければ始まらないイベントの筈だ。

それが転生者がいるために現れた歪みなのか?

それよりも次のアクションに気を付けなければならない。

窓の上から降りてくるのだから。


曲者が窓を割って降りてくる。

俺は剣を抜いて切りつける!


「避けただと!」


くそっ。タイミングイベントを外してしまったらGAMEOVER確定だというのに!

タイミングイベントの失敗は、曲者の剣が倒れたアンナの心臓に突き刺さるという回避必須のイベントだ。

ゲームではアンナがとても重要な位置に付いていて、ほとんどのイベントの必須要因だ。

俺がやってたゲームは、タイミングイベントで即GAMEOVERする事はなく、後々のストーリーイベントに影響が出てくるのだ。

やっていたゲームの正規ルートのグッドエンディングの必須要因は、カイト、魔王、アンナで、ゲームはアンネ視点のもの。

フラグ立てを、きちんとしておかないとアンナの死亡確定イベントだ。

が、混じりあった状態でリアルとなってしまっている以上枠組み(シナリオ)は成立しないのかもしれない。


アンナに突き刺さる前に、一人の男が曲者を突き飛ばす。

アンナの世話役の男だ。

世話役の男はすぐに馬乗りになり、腰からナイフを取り出して曲者の首もとに当てた。

あまりよく見てこなかった彼の顔は、魔王の顔そのままだった。


「フラグは立ってたのか。」

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