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幻獣 アンネ

窓から飛び出したとたん、目の前の人間とぶつかってしまった。

落下した。私がジタバタとしていると、柔らかいような声がした。


「あぁ、大丈夫かい?」

「そんなの心配しなくていいだろ?大丈夫か?」


初めて聞く声とほんの昔、聞きなれた声に私は顔をあげた。

一人は、お決まりの金髪隻眼。問題ない。

が、もう一人、獣人の鷹に出る真っ赤な瞳、闇のような黒い髪。

よく知る人物。

私と対極の【幻獣】の称号を持ったのは、お前だったのか。


「久しぶりだな。まっしろけ。」


うるさいな。真っ白と罵るなら私の色素を返しやがれ、まっくろけ。


本来の鷹種は自然種、つまり動物の鷹と同じような黒い羽根と白い羽を持っている。が、彼はメラニズム。とにかく黒い。

そして、私はアルビノ。とにかく白い。

この違いは、圧倒的な差を生み出す要因にもなる。

空を飛ぶ鳥類に取って、紫外線は辛い。色素が多い彼はいいが、色素が全く無い私にとって、外自体が毒の雨。より弱い体が日光に当たれないので、さらに悪くなった。

そう、殻のなかで彼に色素を奪われたばっかりにこんなことになってしまった。


「アンネはこの子の事、知ってるのかい?」


彼は同じ殻を共にした双子の兄、アンネ。


「ふん、できの悪い妹だ。」


アンネは、こちらを見ないでそう言った。

目だけは並みの私、カイトとアンネのうしろにアリスが飛び出してきて、二人を見つけ怒りを押さえ込んだらしく、笑みを浮かべてアリスが歩いてきた。


「あの、カイト様?」

「あぁ、アリス嬢。」

「すみません、うちのバカ鷹がなにか?」

「いいえ、それにしても美しい。」

「え?」


アリスは頬を赤らめた。

何がいけなかったか、王子はアリスに好意を持ってしまった。

どうにかしなければ!


「とっても綺麗だ。凛々しさも備わっていて、アルビノというものですかね?お名前は?」


私かよ!紛らわしいわ!

頬を赤らめたアリスが、ポカーンって口開いてるじゃないか!


「こいつはアンナだ。獣人の落ちこぼれで俺の双子の妹。俺がメラニズムで優秀な代わりに、こいつはアルビノででき損ないってわけさ!どうだ?満足か?!」

「どうしたのです?」


珍しくアンネは興奮ぎみに叫んだ。

そこまで彼が怒るのは、久しぶりだ。

まだツンツンとしていなかった頃に、人形になれなかった私をいつも励ましてくれたものだったが。


「ふん。こんな平民のペットか。プライドはないのか?」


あんなのがご主人なわけ無いじゃない。私のご主人は貴方の契約者の婚約者よ。


「はぁ?お前が?」


ふふふ、今後の地位としては私の方が上だったわね。なんせ私はペット(かぞく)なのだから。


「面白い。」

「アンネ?」


そろそろ契約者(マスター)が不振がってるわよ。


「ふふ、はは。さすがアンナだ。やっぱり俺の妹だから天才だよ。人形になれればもっといいけどな。」

「??」


そんなことで兄と再会し、試験を受けたのだけれども。

当然、試験は不合格で試験官には苦笑された。

が、中に一人だけ試験後に話しかけてきた試験官がいたのだ。

その人は目の前にいる。

私一人とその人だけ、アリスとその父親はマリーとマリーの父親に頭を下げている。

満足はしていたが、今は目の前の人間に注意を向けなければ、殺されるかもしれない。


「アンナちゃんだね?カイト様の幻獣アンネの双子の片割れ。

君は鷹の姿なのにとても賢いようだね。試験では鷹のように振る舞っていたけど、少し考えていたのが僕は分かったよ。」


話ナゲぇなこいつ。


「少々口が悪いようだけど、そこまで考えられるのは血のおかげか、素質か。」


面倒な奴が出てきたもんだ。動物の言葉が分かるというホラ吹きが数多くいるが、こいつはどうやらホンモノらしい。

演技がバレていたということは私よりも賢い。

まぁ、年は私よりもとっていて当然だ。


「どうして、人形にならないのです?君ほどの知力を持っているなら人型になることなど簡要だろうに。」


どうも上手くいかなくてね。まさかバレてたとは。私は教育係が嫌いでね。バカバカと罵られちゃ仕方ない。いい仕返しになったさ。


そう、目の前の試験官に話しかけると、笑われた。


「君はかなり賢いようだ。」


手を振りながら去るのは、かっこいいと思っているようだが、全然格好良くはないのです。

それを知らずに去る彼は悲しいものですよ。

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