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【道の果てまで】
今
私が歩いているのは
細くて狭い田舎道
だけどずうっとたどっていけば
あなたの住む街まで
繋がっている
姿は見えないけれど
この道の果てに
あなたがいる
必ずあなたがいる
大丈夫、まだ、歩ける
【ヤマユリ】
着物にヤマユリの匂いなんて
染み込ませて来たのがいけない
ヤマユリのあの
青臭い
甘い匂い
長く伸びた雌しべの
ぬるりと湿った
淫靡なその頭
そんなものを思い起こさせるから
君もヤマユリになるといい
濡れ光る先端を
指で弄んだら
ねっとりと糸をひく
君、ヤマユリになれ
【レントゲン】
大きく息を吸って
吐いて
息を止めて
そのまま
時々こうして
このまま息を止めて死ねるか
試してみる
だんだんだんだん
苦しくなる
我慢すれば
死ねるかもしれない
それでもいつも
我慢しきれず
息をまた吸い込んでしまう
死にたい私の中に
生きたい私の姿が見えて
私の病魔はむしろこちらだと
そうやって確認する
【世界救うのはあんなのじゃなく、あなた】
ねえ先生
あなたは
「自分には世界を救える」
そう思ったことがありますか?
「そんな馬鹿げたこと」
とおっしゃるなら
いいえ
確かにあなたは救えるのです
私の世界を
今もこれほどまでに
救ってくれるのです
「そう、僕にはそれができる」
そうおっしゃるなら
まさにその通り
あなたはあなたの選ぶ道を
ただただ進んでください
そして私は私の世界を創る
いつかあなたに
あの時救われた世界は
こんなに素敵になりましたって
伝えるために
【あいたくない】
遠く
遠く
遠くて
よかった
顔も見られない
話しもできない
そんなあなたで
よかった
こんなみっともない
私を見られなくて
会えなくて
よかった
よかったよ
【けど暴言はあたしを救う】
汚い言葉はいけません
神様が聞いていらっしゃいますよ
そんなこと
助けてもくれない神様に
罰されるいわれもないの
「死んだらいいのに!」
【S神】
嗜虐趣味の神様は
うっとりと運命かき混ぜる
泣いたら悦ばせてしまうから
こんなこと何でもないふりをする
【そうあれ、そうあれ】
長く生きても
いいことはない
生にすがるは
醜いこと
老いて行く末
苦しみばかり
そう思うのは本当で
何一つ嘘はないけれど
あなたは長生きしてください
苦しめばいいというのでなく
しかし主張を曲げる気もなく
矛盾しかない
馬鹿げた願い
それをわかっていて
なお願ってやまない
どうか長生きしてください
生きて、生きて、生き抜いて
【ggrks】
「死にたい」って
Googleで検索しても
Yahooで検索しても
どうしたらいいのか
わからなくって
どうしたらいいのか
わからない
【ヒカリ ヘ】
暗闇はこんなにも
あたしを愛してくれるから
光なんていらないわ
そこじゃ安らげないの
だけど
どうして
期待してるの
いつも
「君の暗闇は綺麗だね」って
「でも僕の光も綺麗だよ」って
あたしの価値観を
鮮やかにねじ曲げてくれる
誰かの手を
だからあたしは
今日も窓を開ける
溶け込めない光に
それでも向かい合う
【生存下手】
息をするのも
食事をするのも
不得意です
ふと
のどに詰まりそうな気がして
生きるための
基本的なことが
苦手です
生きてるだけで
苦しいです
【でっきるっかな】
グッドモーニング
崩壊の日の始まりだ
丈夫なロープは用意できたかい
よく眠れる薬は
死ぬ気になったら
なんでもできる
それなら死ぬ気で
死んでみよう
できる!
できる!
君ならできる!
できる!
できる!
なんでもできる!
死ねる!
【お茶会のお知らせ~本日、月の下にて】
月の綺麗なこんな日は
満月クッキー
焼きましょう
でこぼこナッツは
クレーター
少し焦げたの
ご愛嬌
とっておきの
紅茶を淹れたら
月食茶会へ
いらっしゃいませ
一口かじって
三日月に
もう一口で
新月に
【母親】
ままならぬ
世ははらんでは
血にまみれ
まざまざ死に行く
赤子かかえる
【必然】
届かぬ手に苦しむのなら
言葉すら通じないほど遠く
産まれればよかったのですか
それでもいつか出会ってしまう
そんな気がする
【おかげさまです】
あなたが酷く醜いから
私は美しくありたいと想う
反面教師とはよく言ったもので
薄汚いあなたの言動は
私に
「真っ当でありたい」
と願わせる
私のことを
優しいと言う人がいる
それはすべて
あなたのおかげ
あなたが
下劣で
最低で
ゴミクズ以下の
糞野郎なおかげ
ええ本当に
ありがとう
あなたみたいには
なりません
【なみだふぇち】
眼鏡押し上げて
涙拭う
そんな仕草が
とても好き
それが嬉し泣きならば
身震いしてしまうほど好き
「良かった」
と泣く君
「本当に良かった」
と私
一緒に泣けたら
きっと素敵
【痛み、お分けします】
時々傷口開いて
他人に見せつけたくなるの
「痛そうでしょ!」
「痛そうでしょ!」
「とても痛いの!」
それは
「治してあげる」
と言って欲しいのでなく
「可哀想に」
と言って欲しいのでなく
だから
「かまってちゃん」
とか
「同情ひきたい」
とか
言われるのは心外
ただ
この傷口を見て
同じ痛みを味わったような
そんな顔をさせて
今痛いのは私だけじゃない
私は独りじゃない
そう思いたいだけ
ただそれだけ
【生きてるだけで】
「生きてるだけで
よかったなぁ」
私には
そんなふうには
思えなくって
そんな世の中甘くない
生きてるだけじゃ
どうにもならない
文句の一つも
言いたくなるけど
その実内心
うらやましい
「生きてるだけで
よかったなぁ」
私だって
そんな言葉
信じられるように
そんなふうに
生きてきたかった!
【獣語】
誰かのために
媚びたり
遠慮したり
嘘ついたり
そんな歪な言葉じゃなくて
思うままを
吼えたてる
野生になるの
獣になるの
【友達じゃないもの】
馴れ馴れしくしないで
友達でもないのに
そんなふうに心
許した覚えないのに
独りになりたいのよ
わかる?
あなたは独りが嫌いでも
私は独りと親しいの
いつも踏み込んでくる
私の場所
汚さないで
邪魔しないで
友達ができたって
ぬか喜びしたくない
そうやって皆いなくなる
友達なんて思ってないくせに
近寄らないで
心覗かないで
寂しいなんて気付かないで
友達じゃないもの
【羽が生える病】
あなた方の言葉を聞いて
私の背中には羽が生える
羽は育つ
大きくなる
苛立ちと涙を栄養に
いつか飛び立って
私を連れていくんだ
誰もいないところへ
そうして私は全部から
逃げ出せるんだ
私には羽が生えて
羽が助けてくれる
そう信じてる
馬鹿げていたって
【いなくなったら】
朝靄の中に
行き交う人混みに
浅い眠りの夢に
どこにもいない
私見つけて
【やさしさをそのままで】
優しい君が
優しいままで
ありますように
誰も傷つけたくないと
自分ばかり傷つける
君の傷がもう増えないように
君が優しいことに
つけいる奴らに
飲み込まれないように
優しいことに
疲れはてて
優しさを止めてしまわないように
君が優しいのを
知っています
その優しさが
壊れないように
いくらかでも助けられる
自分になりたいです
【相互嫌悪】
お前のことが
嫌いと言われた
不思議なことを
言うものだ
そんなことは
お互い様で
別に言うこと
ないはずなのに
「お前は俺を好きだろうが
俺はお前が嫌いなんだ
さぞやがっかりしただろう」
そんなふうに
言いたげに
滑稽ですね
思い上がるな
【己れ見ぬ馬鹿知らぬ馬鹿】
自分に都合の悪いことは
世間のせいと喚き散らす
それこそ正しい説などと
得意顔してご満悦
そんなのにごまかされるほど
世間は馬鹿じゃあないよって
馬鹿げた理論引っ込めて
いい加減に気付けよ、馬鹿
【≠】
価値観の相違が
不快じゃないんだ
知らない世界が
見たことない風景が
そこにあったんだ
ぶつかったら
変な音がしたよ
異質がぶつかり合う音は
新しい音楽かもしれない
違ってて
だから
いくらも
歌が
歌が
響いた!
【激しき日々】
平穏に
平穏に
そう生きるのが素晴らしい
そう思ってはみるけれど
生きるって激しいこと
穏やかなんて
無理
明日どうなるかわからない
そんな賭けの積み重ねの果て
終わらせてようやく
本当の無為を抱き締める
【龍宮のお姫様の見た夢】
永遠ならば
そう願って
それでも
ここを去ったあなたへ
声は届きましたか
うたう声は
遠い海の遥か向こう
あなたのいるところへ
少しでも
思い出しましたか
私がいたことを
私の言葉は
舌で溶け
甘く苦く
あなたの胸に
いつか忘れてしまうとしても
もう言葉を無くして
押し黙ったまま
深く沈む
私の龍宮
こんな海の底から
今も
あなたのことを
想っています
【完】
海に帰るその日まで
待っています