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龍宮のお姫様のドロップ  作者: 八田硝子
8/9

☆☆☆☆☆☆☆☆

【逆十字医療団団歌】


痛みますかね

ここはどうです?

ご心配無用

どんな病も治しましょう


神からもらった「命」を

勝手に延ばす行為


我々は神に背く医療団


ああ

逆十字

我らが誇り


この魂

地に堕ちようとも

医の志

忘れはせぬ


ああ

逆十字

我ら

逆十字医療団


【史上最強のかわいい生き物、なまこさん】


なまこさん

なまこさん


暗褐色の体

ぶにぶに

突起があるわ

セクシー


魚カゴの目にはまって

ひっぱったらぶつり千切れた

なんて儚い

繊細すぎる


抱き締めてあげるから

吐き出して

内臓

私とあなた結ぶ

白い糸

キュビエ器官


ぶびりゅわびぴゅるるるばびゅぴゅりゅぶりりゅずじゅっずじゅっ


ああなまこさん

生きる神秘

なまこさん

1kg2000円

酢の物に

なまこさん

うみねずみ

なまこさん

なまこさん

フォーエバー



【負け試合でも不戦敗よりかマシって信じてる】


正直嫌で仕方ないよ

うまくなんて行きっこない

降水率90%

傘なしで出掛けるみたいだ

負けが見える賭け

できるならおりたい

できないなら……?


思えば病んじゃうよ

頭痛い

お腹痛い

布団戻って寝たい

もしかして熱あるかも


だけどそれじゃ

どうにもならない

現実さんに

立ちふさがれてまして


弱音吐きたいよ

愚痴りたいよ

全部ヒトのせいにして

逃げ出したいよ



それでもどうしても

これを何とかしなきゃ

何とかできるのは

僕だけなんだ



ああうん

大丈夫

一人でなんとかできるって

涙と鼻水

止まらないけど

どうせ手伝ってくれないんでしょ

なら変な同情いらね

無様にすっころぶ様

笑ったらいいよ

ちょっと今から

かっこ悪いことしてきます

わかってて行く僕の

勇気だけは認めて



鉛みたいに重い

扉開けてさあ

「いってきます」

ひけてる腰に自分で笑った



【脳内霊園(空きあり)】


朝の電車

下品そうな女子高生が

あたし見て

笑ったの


だからあたし

あの子たち

殺したわ

頭の中で


もうあの子らは死んだから

腹をたてることないの



頭の中

地平線が見える平地に

お墓建ててあげたわ

もう何基目かしら


懐かしい名前

刻んであるの

お久し振りね

パパ

ママ

先生

クラスのみんな


名前知らない誰かの

名前の無いお墓もたくさん



花を供えるのは

一番古いお墓にだけ

一番最初に殺した

あたしのお墓にだけ



【声が大きい親戚のおじさんのこと】


ふらりと遊びにくるけれど

私はあの人が苦手です

あの人が来ると私は

部屋に引っ込んでしまうから

話をするわけじゃないけれど


部屋の壁を隔てても

聞こえてくるあの人の声

大きい声


私は

男の人の

大きい声が嫌い


聞いているだけで

酷く萎縮してしまって

動悸がおかしくなる


酒場で大笑いしている

サラリーマンの集団も

コンビニ前で群がっている

男子高生も



そしてたぶん

すべての原因の

父が嫌いです


【休み時間2-C前】


終業のチャイムが鳴りまして、教室を出た先生に一人の生徒が話しかけます。


「先生、私、中学の頃は詩というものがわかりませんでした。智恵子は外国人じゃないのに、青く澄んだ眼なんておかしいわ、そんなふうに思っていました」


先生は黙って聞いています。


「でもね先生、私は今日、見えたのです。智恵子の眼が見えたのです。その青さがわかったのです。光太郎の情熱が、愛する想いがわかったのです」


生徒が興奮した面持ちでそう告げますと、先生はにこりと笑っておっしゃいます。


「詩がわかるというのは、言葉の向こう側が見えるようになることです。人の心の内が、見えるということです。君、もっと学びなさい。美しい言葉を探してごらんなさい」


生徒は口をむずむずと動かして、でも何も言わずに深く礼をして、逃げるように教室に戻りました。


「私には先生の言葉が一番美しく感じます」

と、伝えたかったのですけれど。



【愛される私】


「運が無かった」

まったくそのとおりです

どうかお嘆きにならないで


私は神様に愛されていて

あなたはそうでなかった


それだけ


真にご愁傷さまです



【二体】


体は二つもいらないよ


君の体と

私の体


同じものを見ていたい

同じものを聞き

話し

味わい

触れ

同じことを考えたい

同じことを感じたい


泣くも一緒

笑うも一緒

苦痛も一緒

快感も一緒



だからねぇ

体は二つもいらないよ


一つあったら充分だ



君の体を捨てようか

私の体を捨てようか



【焼け火箸】


君の言葉は焼け火箸のよう


触れれば熱く焼けついて

けして治らぬ痕を残す


君の言葉は焼け火箸


水膨れと火傷にまみれ

熱にうかれて死ねそうで

とっても気分のいいあたし



【for you,to you】


思い返せば昔

「あなたを心から応援します」と

送った手紙の後で

私はとても不安だった


あなたにはたくさんの

応援する人がいるから

きっと私の言葉など

とるに足りないものだって

そう思っているのかなって


でもね

私にも

応援してくれる人達がいて

私はその人達の

一人一人の真心を感じるの


きっとそう

あなたもそう

たくさんの中の小さな私の

真心を感じてくれている


それを教えてくれた

私を応援する「あなた」に


私の真心を受け取ってくれた

私が応援する「あなた」に



「わかってくれて、ありがとう」



ああ

それは

それは

私がずっと表現したかったこと


【ちいさく・おおきく】


小さくなりたいな

君の目の前では

小さくなりたいな


そうして君の

邪魔にならない

どこか片隅で


君を私は

ずっと見ていたい



大きくなりたいな

君の心の中で

大きくなりたいな


そうして君の

悲しい寂しい

全部追い出して


君の中を

私で満たしたい



ちいさくなあれ


おおきくなあれ



【鳥になりたい】


君は鳥になりたいと言う

あのように飛びたいと言う




鳥の苦しみも知らぬのに

言う



【よんもじ】


それでも



【緑の呼気】


こんな湿度の高い日は

森の香りの

むせかえるほど


大きな影を作るあの木も

膝まで埋まるあの草も

それぞれに息を吐き出して

体の水も吐き出して


呼吸

蒸散

中学科学

懐かしい教科書の言葉

まだ覚えていたんだ


彼らと空気を共有して

彼らを肺に詰め込めば


僕も緑になれるかもしれない

森の一部になれるかもしれない



【革命の朝】


反論すら許されない

支配するものと

されるものの関係


あちらの正しさで

理不尽も通る

道理も引っ込む


そう思われている



いつか

革命の日

あなたに銃を突きつけて

「あなたのものでなくなったの」

そう言える日を


革命の日の朝は

晴れているか

そんなことすら

まだわからないけれど


【陸の鯨】


うち上げられた

船たちは


陸にあがった

鯨のよう


海に帰るのを諦めて

悲しそうに横たわる



【そんなことを言えば「ひとのせいにするな」と言うのでしょうけど】


例えばそうね

思い出せるかしら


私が90点のテストを見せた時

あなたは言ったわ

「10点も間違えた」



「なぜそんなにやる気が無い」

って聞くのね

なぜ私が

何もかもにやる気がなくなったか

原因を考えたことはある?



【犬と姫】


踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで踏んで


噛んでください

俺のお姫様


俺はあなたの犬

あなたは俺のお姫様



踏んで!

そのぷにぷに

肉球で

顔が歪むほど

この頬を



噛んで!

鋭い犬歯で

はみはみして

時には強く

跡がのこるほど



あなたの体

どこもかしこも

セクシーすぎて


腹毛がエロい

耳毛もエロい

いや一番尻毛がエロい



俺は犬です

あなたの犬です

あなたにご飯を運ぶため

稼いでくる奴隷です


わがままをいって

いくらでも従うから

でも時々は

ごほうびにぺろぺろして



俺のお姫様に

犬って言うなよ

犬は俺

勘違いするな


ああお姫様

あなたの笑顔で

世界は平和

そして世界は

あなたのために

あなたのためにあるのさ


わんわん!



【流星ソーダ】


真夜中の喫茶店

マスターがグラスに注いだ

炭酸水


眺めていたら

流れ星ひとつ

グラスに飛び込んだ


しゅわしゅわぱちぱち

炭酸がはねる

青く光って

ソーダ水になったよ


口に含めば

爽やかに

薄荷の香りがした



喫茶「SODA POP」

いらっしゃいませ

真夜中限定

流星ソーダは如何


お帰りも大丈夫

飲み込んで

胸に落ちた星が

夜道照らしてくれる



浮かべた氷

アクアマリンになった


グラスの夜空

ラピスラズリになった



【マイナスよりはゼロを選ぶ】


独りでいるのは嫌だけど

「誰でもいいから傍にいて」

なんて

想いたくはないの


こんな人といるのなら

独りのほうがよっぽどまし


そんな人達が多くって



望んで独りじゃないけれど

望んで独りになっている


【きみまもる】


命懸けて

君を守ろう


世界中の誰もが

犠牲になったとしても

君だけは

生き残るよう


君が世界最後の

一人になるように



そうしたら

ずっと

ずっと

僕のこと

思い返しては

泣き叫んでね


他の誰も

想わないで

ただ僕一人

それだけを

その命尽きるまで



そんなことが叶うなら

僕は君を守るよ

命懸けで守るよ


僕の命惜しくなんかないよ



【○○陰謀説】


国会ではお偉いさん

大汗かいて弁明中

「これは誰かの陰謀だ!」


これは某党の陰謀です

奴ら

引きずり落とすためなら

なんだって


これは組織の陰謀です

手をひいてんだ

いつも裏で


俺が悪いんじゃないよ

辞めるわけない

当たり前だろ



そのころネットじゃ

名もない誰かが

名もない誰かを

罵ってる

「情弱め!」


これはマスコ(゛)ミの陰謀です

メディアはいつも

情報操作ばかりさ


これは某国の陰謀です

あいつらならやるさ

汚い国なんだ


ニュースソースはネットの誰か

その誰かのニュースソースは

そいつの頭の中



国はどんどん混乱さ

そこにあらわれた救世主

みたいな格好の連中

「信じなさい!」


これは宇宙の陰謀です

深淵の果てから

電波で言ってます


これは神の陰謀です

おおついに来たのだ

終末が


信仰は救い

さあ奴らに負けぬため

お布施をどうぞ



ああ世の中は

正しいことを言う人と

嘘を言う人だけじゃなくて

正しさに嘘を混ぜたり

嘘に正しさを混ぜたり


誰が本当言ってるの

誰も本当言ってないの


わかるわけないさ

だってそいつら

みんなただの

渦巻く


インモーだからさ!



【サティおじさまへの手紙】


おじさま

ご機嫌うるわしゅう


おじさまは今もそちらで

ピアノをお弾きですか


新しいものは見つかりまして?

きっとまだね

みんなあなたの真似をしようと

ただ突飛なことをしてみるだけ

時代を変えた新しさは

あなた以降に産まれていない



おじさま

私、あなたを尊敬します


他の誰かと同じじゃない

あなたにしか書けない音楽

批判されても貫いた

あなたの意志


そんな尊いものを

私も持ちたいです



ねえおじさま

私、あなたの傍にいてみたかった


恋人に、とは言わないわ

恋愛は病と言うあなたですもの


ただピアノを弾くあなたを

見つめていたかった


ご友人たちの輪の中で

静かに微笑みながら

奇妙なことを言う

あなたと笑い合いたかった


おじさま

あなたと

お友だちに

なりたかったです



そちらにいったら

叶うのかしら

その時はどうぞよろしく




愛するおじさまへ


あなたの大ファンより



【悪意と衝動のオブジェの作り方】


なんだっていいのよ



それは

そこにあった段ボールでも

私自身の腕でも

そこに寝転がっている犬でも

もちろんあなたでも


ただ衝動でできるものだから

材料は何か

決まってないの


あとはひたすら切りつけて完成



【過剰摂取】


摂りすぎはいけないんだって


栄養も

おクスリも


余計体を

悪くしちゃうって



だからきっと

ごめんね

あなたを

病ませてしまう


そしてやがて

死に至る



私からあなたへ

愛を致死量


【あいどき】


平気だよって

笑ってみせる

心配かけたくないからね


だけどそれじゃあ

冷たい奴だと

誤解されてしまうから


涙流して

声をあげて

泣いたっていいんだよ


私は

私は

哀しんでいます



苛立ちは

押し込めて

それが大人の対応


だけどそれじゃあ

調子にのって

無理難題を言われるから


眉吊り上げて

大きな声で

怒鳴ったっていいんだよ


私は

私は

怒っています



恥ずかしいから

そっけなく

クールに見られたいじゃない


だけどそれじゃあ

誰かの想いに

報いることができないから


目を細めて

大口開けて

笑ったっていいんだよ


私は

私は

喜んでいます



伝えたい

伝えたい

本当の感情


そしてそれで

あなたが

どんな顔をするのか

知りたい

とても

知りたいです



【泣いてくれてうれしいです】


もしも私の傷を見て

どんなに痛かっただろうと

泣いてくれる人がいたなら


そしたら私は幸福だ

傷があってよかったと想う



【もしも願いが叶ったら】


あなたを私のものにしたい

あなたのことを手にいれたい

それが私の一番の望み



もし本当に

あなたが私のものになったら

私は

人生の最大の目標を無くして

何もかもつまらなくなって

何にもやる気がなくなって

死んでしまうかもしれないね



【日々(サティ的に表現された)】


segno(記号)



どうして

そんな傷をつけるのかと

激昂

叱責


ごめんなさい

私はいけない子です


存在しては

いけない子です


罰さなくてはね

罰さなくてはね


ざくざくざくざく



dal segno(記号まで戻る)


Fine(終わり)は存在しない



【げじげじさんのこと】


げじげじさんは困ります


殺虫剤でなかなか死なないので困ります


魔法攻撃が効かないモンスターに魔法攻撃をしかけているようです


でもそういうモンスターと同じで、直接攻撃には大変弱いです


ええ、本当に弱いです


弱すぎて、ハエタタキの一撃で……ちょっと表現するのがためらわれる状態になります


遠回しに言うと、ぐちゃっとなります


だからげじげじさんは嫌です


お友だちにはなりたくないです


なのにあちらは私が好きらしく、今日も今日とて家を訪ねてくるのです


まったくうっとうしい


あとメールとか電話もいちいちしつこくていらいらする


何の話でしたっけ


そう、げじげじさんでした


あのこじゃなかった


【世界創作者の手】


君の手は

世界創る手

その指が

この心に触れ

ここにも世界



【傍観者でいい】


心に積み重なった

整理しがたい「問題」

今にも崩れ落ちそうだ


ただ傍らに居て


手伝ってなんて言わない

相談したいけど

答えはいらない

大変なんだって愚痴るから

大変そうだねって

心から言って


それでだいぶ救われる

時間はかかるけど

自分で片付けられるから



【無宗教者のはかない信仰】


出来ることは出来る限り

やったつもり

だけど

不安は尽きなくて

迷ってばかりで


どうしようもなく焦った

その後に


信じてもいない

神様に祈るの

助けてください!

助けてください!



通じてるはずと

確信した想い

だけど

返事はこなくて

泣きたい気持ちで


それでも愛してしまう

その果てに


居もしない

神様にすがるの

助けてください!

助けてください!



【白い烏】


烏は嘆きます



私の羽根は

黒いから

人は忌むべきものと言う


もしこの羽根が

あの鳩のように

白かったなら


私もまた

平和の使者などと

呼ばれていたのだろう



ただ

羽根の色だけで!



【確かにね】


確かなことは

おかしいということ



私の

頭は

確かに

おかしい



確かなのに

おかしいね


【アイムヒア】


呪文のよう

繰り返すの

大きな声で


アイムヒア!

アイムヒア!

アイムヒア!


呼ばれなくても

主張するの

「私はここに!」



ふと気付けば

没個性に埋まったり

自らを

消し去ったり


けれどだめ

そうしてもいつしか

私の中の私

訴えるの


アイムヒア!

アイムヒア!

アイムヒア!


誰も聞いていなくても

叫ぶの

「私はここにいます!」



返事はなくていい

聞いて欲しかったのは

誰でもない


私を確認したかったのは

私なの



よかった

ここに

いるのね

よかった


【非実在少女】


どうして私は私のいない世界を望むのだろういつもいつも





私は初めから存在しない子供


【脳フェチ】


見た目なんかどうでもいいんです

パッケージに興味ないの

大事なのは中身

そうでしょ?

あたしあなたの

脳が好き



その頭蓋の中で

どんな素敵

産み出してるの?

それを聞くのがとても好き

あなたの脳味噌世界一



外から見えない

だからいいの

時々その脳が発する

信号の証し感じるから

その信号がいつか

あたしを好きだと示せばいいな


あなたの脳が大好きです!



【こんなところで自己紹介】


初めまして、こんにちは

私の名前は硝子です

小さな硝子の欠片です


うっかり触れてしまったあなた

大変申し訳ありません

あなたのその指先に

傷をつけてしまいました


どうってことないと

こんなのは傷じゃないと

おっしゃいますけれど

生憎です

私の小さな欠片は

あなたの中に入り込みました


恐ろしいことです

その欠片は

血流にのって

血管をめぐって

いつしかあなたの心臓に

そこで大きな

傷をつけるでしょう


それは無理です

お止めなさい

そんなところを切ったって

私の欠片は取れやしない


静かに待つしかないのです

その日が来るのを待つのです


あなたの心臓めがけて

一目散な私と

その心臓を高鳴らせ

私を待つあなたと


なんだかまるで

恋のようです

そう思いませんか?



思いませんか



【千々の物事全て君に見え】


君はどこにもいないのに

どこにも君がいすぎて困る



庭に咲く白百合に

覗いた川の煌めきに

通り過ぎた誰かさんに



【ヨダレだらだら】


物知らぬなら

口を閉ざせ


そらその口から

溢れてるぜ

ヨダレみたいに

無知と矛盾とウマレソダチ


口を閉ざせば

バレないものを

口を開くから

だだ漏れる


笑ってる皆が

本気でその口

縫い付ける前に


自分で気付いて口閉じようか



【熱帯夜の亡霊】


23時を過ぎても

収まらない暑さ

高い湿度が

不快感

なのに

この感じは知っていて

なんだか懐かしくて


そうだこれは

小学生のころ

あの夏と同じ

あの感じと同じだ



花火の後の不思議な寂しさ



思い出したら

切なくなって

今夜は余計

眠れない


じっとり湿った

夏休みの亡霊

まとわりつかれて

寝苦しくて



額から汗

流れて

落ちた



【ご欠席させていただきます】


同窓会のお知らせに

「会いたい人がいないから」

と返した


あの言葉を

彼らはきちんと

「お前らなんかに会いたくない」

読み取ってくれたかな




どうでもいいけれど



【冷凍心臓温めますか?】


連日の猛暑だってのに

ここはとても冷たいよ

外側は溶けてぐちゃぐちゃなのに

真ん中は凍ったまま

温めようと手のひらで包んでも

手まで凍りつくばかり


電子レンジに入れてみようか

爆発して綺麗かもしれない



【恋をしてあたしは産まれた】


ママ

聞きたいことがあるの

パパとはどうして知り合ったの?


ロマンティックだったのかしら

素敵な夢をみた?

幸せな家庭

想像したの?


そう

それは素敵な話

ねえもしその時

二人が出逢って

恋に落ちなかったら


あたし

産まれて来なくてよかったのに



苦しまなくてよかったのに



ええ

とても残念ね

こんなあたしが

産まれてしまった


ええ

とても残念よ

こんな所に

産まれてしまった

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