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龍宮のお姫様のドロップ  作者: 八田硝子
5/9

☆☆☆☆☆

【あの娘天使】


あなたが言ってた

「彼女は天使みたいだ」

あの時私は

嫉妬したわ


だけど本当ね

白い服

よく似合うわ

優しく目を閉じて

まるで天使ね


ねえあなた

何故泣いているの

あの娘

天使になったのよ

嬉しいでしょう


とても素敵ね

あんなに白が似合う娘

なかなかいないわね

真っ白な肌と

白い服

周りには

白い花

まったく天使様そのものね

天使にしてあげた私に

感謝しているかしらね


ねえどうして泣くの

わからないわ

あなたが言ったのよ

あの娘は天使って

言った通りになって

嬉しいでしょう

嬉しいわよね

私もとっても嬉しいわ


ねえ見上げてご覧なさい

空はこんなに晴れて

白い雲

ほら見てあの上に

あの娘がいそうよ

白い羽根ひろげて

踊っているわ


素敵

とても綺麗ね

あの娘天使様

白が似合うわ



【血も涙もただ落ちるの】


初めての傷は

鮮烈で

私は

痛むのも

悲しむのも忘れて

ただ

流れ落ちる血に

みとれてた


それからは

苦しむということも

よくわかったけれど


今はね

なんだか

その傷すら愛せるから

私にもう敵うものはないって

うれしくなるの



うれしいの


【エール】


先頭を行け

力一杯の速さで

負ける訳がないと笑え

他を

私を

見下せ



そうでなければ

つまらないだろう



他を侮っても

全力を尽くせ

No.1を

胸に描いて

落ちぬスピードで

駆け抜けろ



フレー

フレー

あなた



私はあなたの

知らぬ間に

全力のあなたに追い付いて

追い抜いていくつもりだから


その時のあなたの

絶望する顔が見たいから



あの時は手を抜いたから

なんて言い訳できないほどに

あなたのベストを尽くせ



フレー

フレー

あなた



私のために

がんばって


【脳パン】


脳みそパーン

脳みそパーン

お前の脳みそパーン


地面に思い切り

叩きつけて

パーン


銃口を

こめかみに当てて

パーン


ダイナマイト

仕込んで

パーン


脳みそパーン

脳みそパーン


どうせお前に

要らないだろう

そのくだらない脳みそ


パーン



【どこまでも】


どこまでも広がる世界



どこまでも広がる青い空



私はどこにも行く場所がない



【音楽と君の違いについて】


音楽が好きだよ

君のこと好きだよ


どっちも好きだけど


より好きなのはどちらか

なんてわからない


君は君の方が

好きじゃなきゃ嫌だって言うけど

けどなあううん

わからないよ

だって


寂しい時

聞きたくなるのは

音楽と

君の声


嬉しい時

口唇からこぼれるのは

音楽と

君の名前


どちらかって言うかね

うん

君は音楽なんじゃないかな



君も音楽も好きだよ


【ぎおんごであそぼ!】


かちかちかち

すぅー

じわじわ

ぽたっぽたっ


どんどんどん

がちゃ

ぎゃあぎゃあ

ぷちっ


どごっ

げしっげしっ

ちゃき

ざすっ

ざっく、ざっく、ざっく

ざしゅっ、ざしゅっ

ずぶっ

ずるっ

ずるずるずる

ぐちゅ

ぐちゃっぐちゃっぐちゃっ



ひゅー…ひゅー…



かちゃかちゃ

ばんっ




しーん



【逝く年】

今年も生き延びてしまいました


来年も生き続けるかもしれません


醜いことと知りながら

恥でしかないと知りながら



どこかで見かけたら

笑ってやってください



【ふぁいなる】

生きて生きて

灰になる


全て終えた後

ただの燃えかすになる



何かを成し遂げても

何も成さずとも



我々が最後に手に入れるのは

両手に抱えるくらいの灰



灰になる為に生きる


【鼻】


あなたの高い

高い鼻


天より高く

伸びた鼻


天の川の橋にでも

打ち付けられたの?


そんな高い鼻なんて

横からちょいと押したなら

ぽきり折れてしまうもの



だけど誰も何も言わないのは

皆やさしいから




それと

滑稽なものを見たいから



【笑顔の標的】


笑顔というのは

ひとを嘲るためのものだと

ママも先生も

とてもよく教えてくれたわ

私は賢い子

よく学んだわ


なんでそんなふうに笑うの

馬鹿にしてる

いつも笑顔ばかり向けるの

蔑んでる


笑わないで

馬鹿にされて

黙っていると思っているの

笑わないで

好意のはずがない

はずがないのだから


あなたみたいに笑えば

騙されるとでも


ふざけないで

笑わないで


笑うな

刺されたいのか



ポケットの中

握り締めた

カッターの柄が

力が強すぎて

少し震えた



【苦労なんてした者負け】


嘘なんかついてない

ちょっと誤魔化しただけ


ずるくなんかない

私はひとより上手いだけ

生きるのが得意なだけ


不得意な奴がいけない

そうでしょ

反論なんて

できないの知ってる


楽に生きた方が勝ち

やぁい


【愚かな者は幸いなり】


「馬鹿にされたのも気付かないほど愚かだというのはとても幸せなことよ。ひとはそれをとても気に病むのだから」



「そうか僕は幸せなのか」



愚かな人が本当に幸せそうに笑うので鼻の骨が折れるほどなぐった



【退屈同盟】


窓越し青空

薄笑いの教室

長いだけの昼休み


大きなあくびが

君に移って

退屈を共有しているんだと


それだけがただ

うれしかった



【まだ】


疲れはて

倒れていても

この指先は

まだ動く


表現できるんだ

胸がドキドキする



叫びすぎて

喉は痛む

でも声は

まだ響く


伝えられるんだ

胸が熱くなる



まだ大丈夫

本当ぎりぎりだけれど

まだ大丈夫



泣きそうだ

胸が苦しくなる


なんてすばらしい

まだ大丈夫なんだ


【ひとつになりたい】


もっと近くへ

隙間などなしに

重なれ

ひとつになれ


君と

君と

ひとつになりたい

隔てるものは

何もなく


この体の

細胞ひとつも

磨り潰すほど

微塵に砕いて


君の体の

穴という穴

口から目から耳から皮膚から

君の中に侵入する


君の体

僕の体

同じになる


近くへ

近くへ


重なれ

重なれ



ひとつになりたい



【影踏み童歌】


おにさんこちら



かげふみしましょ

かげふみしましょ


あのこのあしに

チョイとのろ


あのこのあしにゃ

かげがある

いつもずるずる

ひきずっておる



かげふみしましょ

かげふみしましょ


あのこのむねに

チョイとのろ


あのこのむねにゃ

かげがある

いつもぜえぜえ

いうておる



かげふみしましょ

かげふみしましょ


あのこのあたまに

チョイとのろ


あのこのあたまにゃ

かげがある

いつもあやしい

めをしとる



ゆうやけこやけで

かげのびる


みいんな

みいんな

のみこむまえに


さいごにのった

かげだあれ



【死体の部屋】


冷たく固い床に

頬を押し付けて

静かな部屋

横たわれば

心臓が緩やかに

止まっていくような

儚い幻覚に

溺れていきそうで


【向こうの空】


手を伸ばしても


けして届かない


牢獄の空


遥かなる青



【いつでもできるから】


かっ切るなら

ここじゃなくて

首筋


わかっているよ



根性無しの跡

刻みながら

今日も

人生の縁を

歩いている


いつでも踏み外せるように



【そんなのいやだよ】


いやだよ

殺したくないよ


君のこと

愛してるって

ずっと傍にって

そう願って

どうして

いつもこう

ちょっとのずれで

全部崩れるの




いやだよ

刺したくないよ

こんな真っ赤なの

いやだよ




こんな

破片の君

いやだよ


殺したくない

殺させないで

愛してるの

もういやだよ


【査定は無料?】


自分の価値が

定かじゃないから


何かの価値に

すがりたくなる


大切なもののため

死んでみたり


要らないもののため

よみがえってみたり



【飽きる、ということ】


飽きるってことは

実は大事なことで


例えば長年愛用してた

あのマグカップ

君は壊してしまって

とても謝っていたけど

僕はそんなに悲しくなかった

やっぱりどこか

飽きていたんだね


だからね

君はもっと

僕の傍にいて

はやく飽きてしまうといい


いつか僕が

先にいなくなって

君が悲しんだりしないよう

君が悲しむことだけは

僕はどうにも許せないから


そんな顔もう見たくないって

思えるくらいずっと

近くにいるから



どうかどうか僕なんて

飽きてしまってくれないかい



【禁断の果実】


アダムとイブが

食べたのは

林檎じゃなくて

桃だった




君の桃にかじりつく


【底無しに】


愛しかたなんて

知らなかった

愛されたことなんて

なかったから


だから

この想い

止める方法も知らず

底無しに

愛してしまう


足をとられ

もう

身動きできない



【夕焼けは滲む血の色】


見上げれば飛行機雲




夕空に切りつけた傷



【こここころ】


私のこころは

あなたにじゃなく


私のこころは

誰かにじゃなく


私のこころは

ここにあらずじゃなく


私のこころは

ここにある

私の中にある

確かに


否定されても

称賛されても

ゆるぎなく

想うままに


ただ純粋に


私のこころはここにある


ここにあります


【肉の幸福】


腐ることのないまま

綺麗に切り分けられ

人々の食卓に

その舌を楽しませ

おいしかったと感謝される

死後も役に立つためにある


ああ彼らなんて

幸福な肉


病気や事故や老いで

傷んだ身体

食べる人など

あろうはずなく

ただただ業火に焼かれ

灰となるのみ

そうなることで

周りは悲しむばかり


ああ僕らなんて

不幸な肉


かわいそうな肉



【もやっと】


得体のしれない

なにかもやもやしたものに

身体中包まれて

身動きできない

そういうことがある


進もうにも手足は空振り

ただ居るにも息は苦しく

救ってくれる人などおらず

この息がいつ止まるのか

それだけをぼんやり考えている


そんな時がある


いつまでも

終わらない気がする


現にもう何年も

終わる気配がない


そういうことがある

本当にある



【消えいく心】


この想いも

この身体も

いつか消えてしまうものなら


今あなたの目の前で

全て燃やしてしまおうか


灰になっていくのを見ていて

消えいく様を見ていて



そんなあなたを

私は見ていたいから



【あなただけを】


純粋に

ひたむきに

真っ直ぐに

真剣に

正直に


ただひたすらに

君を愛す


病んでいると言われても

それが真心と思うから



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