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龍宮のお姫様のドロップ  作者: 八田硝子
4/9

☆☆☆☆

【現実と仮想】



あの人の

死には泣かずに

フィクションに泣く


リアリティーってなんだろう




【ゴッド・ファッカー】


こんな湿った夜じゃ

右手もマシンも

火がつかなくて


生身のカラダ

欲しくてたまらない


ねえ神様

自己犠牲の

尊さを説くなら

今夜一晩

俺に抱かれてよ


唾液絡める

キスはどうだい


宗教画のすました顔

赤らめて

歪めてみせて


口を開いて

全部飲んでよ


肉体の欲望

溺れるのがイケナイなら

それはどうしてか

その身体で示してみせて



だって



俺ら愛しあって

産まれたんじゃない


性欲の果てに

出来た産物


俺ら天使様に

運ばれてきたんじゃない


快楽刷り込んだ穴から

ひりだされてきた



だから



穴拡げて

腰振ってみせて


俺ら産まれる理由は

こんな肉欲が好きだから



ねえ

俺の子孕んでよ

神様


神様ならできんでしょ

俺の虚しさ寂しさ

治せるのはそれだけなら



憐れな俺に祝福を

お願い神様


出すよ




【下がいるから上がいる。】

世の中に

必要のない人間なんて

いないんだよ



だって

踏み台がいなきゃ

上にはいけない



そうさ

そういうことなのさ



【望みは高く 我が価値低く】


私が望むのはただあの人が幸福な世界その願いが叶うなら私なんかは死んだってどうってことはない



【止まらぬ足が私を止める】

すべては通り過ぎていくから


みんなここにはとどまらないから



そんなことは知っていて

すがりつかずに

歩いてきた



それでも

どうして



通りすがり触れた温もりに


こんなにうれしくて


こんなに泣きたくなって



こんなに何度も

振り返るの



【氷の女王】


ここは永遠の冬の国


座り込んだ床は

氷の冷たさ

寝転んだあなたも

同じ冷たさ


ここは永遠の冬の国


熱いのはこの想い

それだけでいい

すべては透明な氷のよう

ただ純粋で



くちづけた

あなたの口唇に

凍った私の口唇が

貼り付いた



永遠に美しいあなた

永遠に腐らないあなたの体

永遠に美しい愛



ここは永遠の冬の国

ここは永遠の愛の国



【やさしい剣】


この手に握りしめ

振りかざしたあたしの剣は


もう誰かを傷付けるものじゃない


誰かを殺すためのものじゃない


とても

やさしい

やさしい

やさしいもの




私を殺して

くれるもの



【フライハイ】


高く跳べ

高く跳べ

大空目指し

高く跳べ


誰の手も

届かぬほど

高く高く

舞い上がれ




落ちたとき

粉微塵

砕け散るよう


舞い上がれ

高きを目指せ




落下地点で僕らは笑う



【凪と炎】


優しい

穏やかな君の心に

一つの炎を灯したい


時には激しく泣くがいい


時には怒り狂うがいい


凪の海のような君が

襲い来る嵐のよう

かき乱されればいい



君に一つの情熱の

炎を灯してみたい




君が僕に恋するといい



【凪の海に溺れ】


波風をたてたくて

さんざ喚き散らした後も

どうして君は

凪の海


静かに

静かに

水量を増し

やがて僕を

飲み込んだ



ああ


ごめんね


愛されていたのだね


君なりのやり方で



温い水が肺を満たし

君が笑って

僕も笑った



【くぱぁ】


腐ったとこ

かっぴろげて

「そら、見ろよ」

さらけ出す


露出癖は止めらんねぇ

気味悪げに見てないでさ

お前もその傷

拡げて見せなよ



案外気持ちいいぜ



【望み通りに雨なんて降らない】


目覚ましなんてかけなくても

否応なしに目はさめて

今日は貴方がいなくなる日

カーテンの隙間から射し込む

朝の光は眩しすぎる


こんな日ぐらい

あたしの気持ち読んで

雨でも降らせたらいいのに

馬鹿みたいに青空



どこかへ行く貴方は

行く先を見てるから

後ろなんて振り向きやしない


ここに残されるあたしは

いつまでも貴方の

去り行く後ろ姿ばかり見るのに



足跡なんて

残されたくないから

雨を、どうか雨を


ぬかるみで

困ればいいから

雨を雨を雨を


ねぇ

雨だったら行くのを

止めるかもしれないじゃないか

ねぇ




雨を降らせてよ



【誰も本当の気持ちなんてわかりはしないけど】


皆さん。皆さんにいいお知らせがあります。皆さんが見たくて見たくてしょうがないものを見せてあげます。だから大丈夫。そんなに懸命に「死ね!」なんて書き込まなくて大丈夫。今から見せてあげますから。感謝してくださいね。「残された人の事を考えろ」には、その人は僕の事を考えなかったと、「生きたくても生きられない人が」には、死にたくても死ねない人もいるけどそれが何と、それだけ答えます。どうか皆さん、忘れないでくださいね。気持ち悪かったでも笑えたでもなんでもいい。覚えていてくださいね。たまに思い出して、笑い話にしてもいいです。時々思い出して、忘れないでくださいね。そしてあなたが死にそうになった時。思い出してくださいね。たぶん思い出すんじゃないかな。あんなふうになるのは嫌だって、皆さんは苦しむのでしょうね。多くの人の心に残る人は幸せだと思います。僕は幸せなのでしょうか。長くなりました。それでは、始めます。さようなら、また会いましょう。





(ネットで公開自殺のニュースを読んで。11月10日)


【賢者の答え】


「生きていればいつかは

いじめから脱け出せる」

なんて

そんな言葉に

誤魔化される気なの


それを言うのは

ただの愚かな人よ



学生が終わったら

いじめはなくなるかしら


そんなことはないわ


社会人になって

仕事場にいても

いくらでもいじめはあるわ


結婚して

主婦や主夫になったって

ご近所さんに

陰口を言われるわ

時にはパートナーや

親、親戚、子供にまで

辛い仕打ちを受けるわ


でも老人になったら……

なんて甘いのよ

老人の狭いコミュニティ

弾き出されたら

もう本当に行き場がない

老人ホームで安楽に暮らす?

知らないって幸せね



終わらないのよ

終わらないのよ

終わらないのよ


そういうのって

死ぬまで


ましてやあなたみたいに

身体や精神に

「いじめられる」要素がある人は




こんなことなら

死ぬが得策?


ええ

そうよその通り


あなたはとても

賢いのね




生き残るのは

先を見ようとしない

愚かな人ばかりよ



【真なる】


あなたが幸せになれないなら死んでやる



理解できない?

でも

これは偽りない

私の気持ち



真心



【おりじなる】


同じ服

同じ髪

同じ化粧


同じ言葉

同じ展開

同じ想い


お揃い

綺麗ね

だけど


没個性に

埋もれていくなら

あたしはあたしを

名乗る意味はない



ほら

この醜さはオリジナル

誰に真似ができて?




誰にも!



【僕の素敵な宝物】


君は僕の宝物


大切な

大切な


君は僕の宝物


誰にも触れさせたくない



だから

だから

扉の奥

しまいこんで

厳重に

鍵をかけるのです



君は僕の宝物


大切な

大切な


君は僕の宝物

僕だけの宝物



【ロッカーズ・ロック】


日々の雑多なもん

くだらねぇって

捨てるつもりなら


入れてくれないか

俺ん中

何、ちょっとしたリサイクル

それ輝かしてやるよ



落書きしかかいてねぇ

教科書にノート

みんな


ロッカーにぶちこめ!

ロッカーにぶちこめ!


そしたらなんか

でかい音がした



道に落ちてるもん

宝石なわけねぇ

知ってるけどさ


大事にしまえば

宝物

ああ、鍵なんか壊れて

開けっぱなしだけど



牛乳雑巾

ホウキのギター

全部


ロッカーにぶちこめ!

ロッカーにぶちこめ!


そしたらなんか

いい音がした



青くせぇコイバナ

オトナへの反抗心

みんな


ロッカーにぶちこめ!

ロッカーにぶちこめ!


そしたらなんか

いい歌ができた



【生花の心】

あなたに渡すつもりで

渡しそびれたこの花が

私の手の中で

しおれてしまったように


あなたに告げるつもりの言葉も

言いそびれていつか

私の心の中で

しおれてしまうのだろうか




それでも造花にはなれない


それでも偽物にはなれない



【ドヤァ】


どう?

いいことを言ったでしょう

とても感動したでしょう


そんなあなたの顔が見えるよな

既視感まみれの「名言」なんて

見たくも聞きたくもないのよ




終わらない不幸はないって

言ったその口で

好きな言葉は

「永遠」

なんて言うの



ああ!【夢語りの罪人】


あなたの語る理想の世界は

とても美しくて魅力的

憧れてしまうのだけれど

けしてそうはならないのに

期待ばかりをさせるなんて

あなたはきっと誰よりも

残酷な人なんだろうと思う



【縁の下には死体がある。】


がんばって

がんばって

がんばっても


認めてもらえなきゃ

無駄働き

目立つように

わかりやすいように

がんばってるって

アピールしなくちゃ

がんばってないのと

同じに見られるのさ



縁の下の力持ちは

縁の下で潰れてる

腐って骨になったって

誰も気付きやしないよ




「縁の下にいるなんて

知らなかったし(笑)」



【龍角散のど飴のうた】


声がかれるほどに

叫んだ

その後には


甘苦い

優しさが欲しい


でなければ私は

もう声をあげることもできず

寒空の下

倒れてしまうだろう



のどが切れるほどに

想い歌い上げた

その後には


薬のような

優しさが欲しい


でなければ私は

もう悲しみを歌うこともできず

自分に溜め込んで

破裂するのだろう



声が届きますように

まだ歌えますように



【支配者は私】


その人を

恨んだりしないで

そんなちいさな人を


怒りで

夜も眠れぬほどに

想うなんてやめて


私以外が

そんなふうに

あなたの心を占めるなんて



許せない

許さない



だから私なら

恨んでも憎んでもいいよ


それであなたの心を

支配することができるなら


そのくらいのことは

本当にどうだっていい



【雨花】


どんな雨だって

かまやしない

ずぶ濡れ気にせず

歩いていくわ


だけど空がふいに

花など降らせるから

「本当はとても冷たかった」と

泣きたい気持ちにもなるの


ああきっと

この花も

降りやめば

また雨に


冷たい雨は

この先も

続くのだろう

だけれど


この日

花が降った日

見た光景を

触れた花びらを


また雨の中に見るのだろう

感じるのだろう


もう二度と

花は降らないとしても


【冬はつとめて】


冬の5時は

目を覚ますのを

忘れたようで

ただただ

酷く冷たい


そのまま

棺に入れて

埋めたくなるほどに


朝の墓標が出来ました



【ひたひた】


私の水は

ひたひたにいっぱい


他の人なら

些細なことも

私には


少しの揺れにも

溢れてしまう


少しの刺激に

こぼれてしまう


自分を

保てなくなる



ひたひた


ひたひたで

いっぱい



【黒い手】


ベッドに身を投げ出す

仰向けになり

両腕を突き上げる

蛍光灯の逆光で

黒く見える手


明日この手は

人を殺すかもしれない


【カッター・ライフ】


制服の内ポケット

忍ばせてるソレは

私の大事なお守り


いつだって切れる

いつだって死ねる

そう思えるから

こんな所でだって

生きていけるの



道は切り開くものよ

刃のようにきらめく

カッター・ライフ


傷ばかり増えるけど

だけどそれで私

笑ってるふりも出来るの


そうやって

切って切って

生きていくことも出来るの



【笑う三日月】


三日月が

笑ってる

高い所から

見下ろして


夜の街を

家に帰れず

泣きながら

さ迷う私を


笑ってる

嘲っている


紛れたい闇を

奪い去り

酷い泣き顔を

顕にし


笑ってる

にやにやと


いやらしく

笑ってる



【私>奴】


あんな人よりずっと

うつくしいことが言えるわ


ささやかで

絶対な

優越感


【海星】


釣り師が防波堤に

並べていったのは

いつか夜空に輝いて

海に落ちた星の死骸

蹴るとそれらはかさかさと

乾いた音がした

落ちた星は

干からびてみっともない

「死体になれども美しい」

などと

それらは強がりを言うが

やはりみっともない


私は初めから輝かずに

いなくなったことも

知られぬような

そういう星になります



【泣きたくなる冷たさを愛する想い】


今さらになって知ったこと


寂しさは

思いの外

心ときめくものだということ



寒い朝の

冷たい空気に

何故か胸が高鳴るように



【翼をちょうだい】


翼が欲しいです

翼が欲しいです

大きな白い翼ひろげて

あの空を飛びたいです



下からは

「それは逃避だ」と

石を投げられます



何が悪いってんだクソが


【喪中につきクリスマスカードはご遠慮します】


きっといつか狂人が

「サンタは死んだ」

と言ってくれる



その日までさよなら



【中身】


私は君の

誰にも見せない

本当のところを知りたい


だから

君がそれを必死で隠してる

皮膚やなんかを取り去って


君の血の色はどうだとか

脳の重さやいかにとか

心臓の温もりはどれほどとか


そういうのを感じてみたい



【イヤーイヤー】


私の

かわいい

かわいい


耳たぶがあって

鼓膜があって

奥ではうずまき

ぐーるぐる


悪口や愚痴を聞くために

あるんじゃないよね


そう言って時々

慰めたくなる


私の

かわいい

かわいそうな


【自己憐憫にご協力を】


「私ってかわいそう」


否定とかいらないの

感情なんてこもってなくていいの

「かわいそうだね」

それだけ言ってくれればいいの

そしたら


「私って本当かわいそう(笑)」


言ったくだらないこと

自嘲できるの

だからお願い



【そこに行くよ】


ようやく起きた11時

テレビのニュースは国会中継

あそこで偉そうにしてんのは

俺だったはずなのに


そんな権利

与えられなくて

布団もう一度

かぶってる


昼は12時腹も減った

テレビは人気バラエティー

あそこでトークしてんのは

俺だったはずなのに


そんな権利

与えられなくて

置きっぱなしのパンかじる


ぐだぐだしてる間に14時

ワイドショーは暗い声

昨日の殺人事件

犯人捕まったって

たくさんフラッシュあびて

ご満悦犯人さん

あそこにいるのは

俺のはず……?


ようやく気付いて15時

テレビのスイッチ切って

数ヶ月ぶり

家をでるよ


俺が望まれる場所へ行くよ

待っててね

待っててね

待っててね……



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