☆☆☆
【小さなあの子】
ぼくの小さなあの子が泣くので
あまり無理はできません
ぼくの小さなあの子が笑うので
そんな馬鹿はできません
ぼくと同じ顔したあの子が
【病と薬物】
君はビョーキで
僕はクスリ
だから二人は
相容れない
【わんわんわんこ】
わんわん
わんわん
まけわんこがなくよ
わんわん
うるさいね
わんわん
よわいわんこは
よくほえるね
わんわん
きがちいさいから
かみつくね
わんわん
わんわん
わんわん
わんわん
うるさいから
いっぴきずつなぐろう
わんわん
わんわん
わんわーん
【迷宮の街】
分かれ道悩んで
行き止まり引き返して
何度目の「振り出しに戻る」
地図は当てにならない
迷宮の街
目印ならば
少女の歌声
廃墟の落書き
迷宮の街
無口な住人
尋ねてみても
首を振るだけ
僕ら飲み込んで
成長する街
生きてる
動いてる
顔色を変える
笑ってる
迷宮の街
君とさまよって
たどり着けない
帰りたい場所
迷宮の街
手を離したら
二度と会えない
だからぎゅっと
【頭蓋内独居引きこもり】
脳味噌が
頭から出られなくて
孤独死しそうです
叩き割って
外に出してあげて
【無資格者】
この私なんかが
恋をしてもいい
はずなんてなくて
好きになるほど死にたくなる
【境界の扉にて】
あたしの大事な世界は
内側にあるの
外側の世界に
興味なんてないの
だからもう
ドアを叩かないで!
ばたん
【極楽笑顔】
笑ってください
あなたの笑顔
とても素敵です
笑ってるあなたが
一番好きです
どうか笑って
その笑顔のまま
僕の首を
締め上げて
ああ素晴らしい
なんて天にも昇る気持ち
笑って!
【大岡SABAKI★】
表側の私と
裏側の私と
離れすぎて
ちぎれそう
いっそべりりと
剥がれてしまえば
楽になれるのかもしれない
だけど
表側と裏側は
大事な「私」をつかんだまま
血が流れるのも無視して
ただ両側に引っ張り続ける
手を離した方が優しい
私は優しくなんかない
【空っぽ紳士への忠告】
紳士さま
紳士さま
どうぞお耳を貸してください
紳士さま
あなたはどこまで
愚かになられる
女共の囁くこと
どこまで真に受けておられる
女共のいうことは
とても聞こえがいいでしょう
だけれど彼女はその裏で
あなたを笑っておいでだ
凛々しい勇ましい
紳士さま
誰にも慕われる
紳士さま
その実うぶな
紳士さま
世間知らずの
紳士さま
大人らしいことを
言ってみたい
最初は皆
騙された
だけれど今は少しずつ
化けの皮が剥がれてる
それらしいことを言ってみせ
中身は何にもありはしない
そうさあなたは空っぽ紳士
自分で気付いておられたか
空っぽ紳士
空っぽ紳士
おお
あなたの名は
エンプティ・ダンプティ
空っぽ紳士
女共は見抜いてる
あなたは空っぽ
お気をつけなさい
口を閉じなさい
【涙と同じ温かさの】
ああ触れた
また触れた
温かい手が触れた
大丈夫
私はまだ
息をしています
ありがとう
【私、不敗】
私は負けない
誰にも負けない
負けない
負けない
だって誰とも
争わない
誰にも負けない人は
誰にも勝とうとしない人
負けないよ
【病恋】
破滅的なシュミ
持ってるつもりないよ
ただ愛されるなら
全身全霊で愛して欲しい
焦点どっかいった目
綺麗だね
突きつける包丁
君の愛用
隷従するそぶりで
支配してよ
病めるくらい
俺を愛して
【眠れぬ日のラララ】
眠れなくて
いらら るら
らんらんら りらら
るるら るら
らりるらら らららんら
眠れなくて
いらいら
【轢死体】
道路に横たわっている
なにか動物の死骸
何度も何度も
車に轢かれて
やがて道路の色に馴染んで
無かったみたいになる
そんなふうに
消えられたら
【かあ】
からす
かあかあ
鳴き声は
不吉なものと
言うけれど
かわいかわいと
からすは鳴くの
みんな知っているくせに
【矛盾の願い】
あなたのその手に
触れるものは
いつも綺麗なものでありますよう
汚れたものには触れぬよう
そう願って
やまないけれど
願いが叶えば
あなたは私に触れることはない
それでも私は
願えるの?
【例えば「燃やせないゴミ」のシールみたいな】
この腕は
君が離した
「イラナイモノ」
っていう印
【ははなる】
水面から
海底に向けて
ぼくは
ゆっくり
沈んでいく
耳から
皮膚から
聞こえてくる
水たちの
ささやき
「お帰りなさい」
数十億年の
旅のはてに
ぼくは
帰ってきました
「ただいま」
【目はどっちを見てる?】
「前向きに生きなきゃ!」
そんなあなたを
真後ろから殴りたい
【これがたったのイチキュッパ!】
万能包丁
万能包丁
万能包丁
万能包丁
なんて素敵
万能包丁
これは万能包丁
どんな物でも真っ二つ
通販のおじさんが
テレビで言ってた
だから本当
何でも切れる
万能なる神
それじゃ試しに
切ってみましょうか
暴力なんか
ふるえないよう
手足の腱
切りましょね
汚い言葉
言えないよう
その舌も
落としましょね
嫌らしい目で
見れないよう
眼球も
突きましょね
さてさてごらんあれ
こちら万能包丁
かたーい頭蓋骨も
崩れやすい脳味噌も
見て
見て見て見て見て!
万能包丁
万能包丁
万能包丁
万能包丁
万能包丁
万能包丁
なんて神すぎる
万能包丁
【鳥類専用小型ジェット】
鳥の飛行機
空を行くわ
鳥の飛行機
乗客はニワトリだけ
ケニアでは
ダチョウを乗せた
ニュージーランドでは
キウイを乗せた
今度は南極で
ペンギンを乗せるわ
鳥の飛行機
快適飛行
鳥の飛行機
見下ろした
窓の下の世界
「自力で飛ぶ方々は大変ね」
飛べない鳥たち
飛んで笑うわ
【時計【トケイ】】
世界を支配するもの
従わないものも多いけれど
【見てます】
君のこと
ずっと見てるよ
見れないとこにいても
噂なんかで君のこと見れるよ
何か失敗したとか
間違ったこと言ったとか
恥ずかしいことやったとか
全部全部
見てるよ
いつでも
君を見てるよ
馬鹿にしたいから
見てるよ
【みぃ!】
捕われない!
捕われない!
君の枷には捕われない!
君の意見に捕われない!
僕は自由だ
好きにうたえる
誰かに従わない
僕の価値じゃない
誰かに教えられたのでなく
自分の飛び方で飛べば
一番好きな所にいける
一番高い場所でも
一番遠い場所でもない
僕がただ望む所へ
捕われない!
狭い枠に押し込められない!
萎縮なんかしない!
それは僕じゃない!
僕は誰だ!?
僕だ!
【恋文】
「夢は何」
そう聞かれて
「叶ったら教えてあげる」
そう返したあの頃
教会の鐘
鳴り響く中
あなたの隣
微笑んで
ようやく言えます
「今、叶ったよ」
【大人への通過儀礼】
願い事は
必ず叶うと思っていた
優しい望みは
届くものだと
正しい力は
負けないものだと
神様は
いつだって
見守ってくださる
そう信じてた
あの日僕は
神様を殺して
ようやく大人になれたんだ
【鏡をご覧】
鏡をご覧なさい
誰かを
恨む人
憎む人
笑う人
鏡をご覧なさい
そら
その人と同じ中身の人が
そこに写っている
鏡をご覧なさい
【満天星】
一面の星空
一面の星空
あの星々を一つずつ
すべて撃ち落として
真っ暗闇に
して見せたなら
きっと君は
酷く悲しそうな顔で
笑ってくれるんだろう
輝きはただ
君の目を潰すもの
だけれど憧れてしかたない
そんな君は
【母体回帰】
かえりたい
お母さんの卵子に
かえりたい
お父さんの精子には
かえりたくない
【表裏】
生きていれば
いいこともあるさ
生きていれば
悪いこともあるさ
死んだら何にも感じられない
死んだら何にも感じなくて済む
表と裏と
あるんだよ
【簡単で正しいやり方】
誰かに怒るのも
攻撃するのも
変えてやろうとするのも
きっと間違い
だって私がおかしいのだから
私が死ねばそれで済む
私が死ねばそれで済む
【九月の庭】
鳴く虫は
ただ命を叫んでいる
終わり行くものへ
いつかまた始まるものへ
【終わりの色】
「世界はすぐに終わるのよ」
嬉しげに
うたう君の目
狂気色
世界は終わるのかもしれない
【呪われ人の目眩がする幸福】
この手をけして離さない
この手をけして離さない
耳に囁くその声は
美しい呪いのようで
【その声だけが聞こえる】
溢れる音の中で
私はあなたの声を聞く
どの音にも邪魔されず
私はあなたの声を聞く
あなたの声を聞くことができる
きちんと
選んで
【花降るは】
花は 降る
降る 降る 花
降る 花は
はらはらはら
惜別の
涙のよう
はらはらと
はらはらはらり
花は 降る
降る 降る 花
降る 花は
はらはらはら
【リアルにリアルを感じられない、私】
おはようございます
ゆうべあなたは
ただの肉塊になりました
ヒトという生き物でなく
ただの肉塊になりました
近いうちに今度は
ただの灰になるのでしょう
元の姿もわからない
ただの灰になるのでしょう
あなたが
ヒトから
ヒトでないものに
変わりいくのを
不思議そうに見ている
ヒトデナシがここに