憧れた鳥
旅鳥の群れに、人間に憧れる鳥がいた。
「(また、人間の町に行っているぞ)」
「(やれやれ、人間なんぞのどこが良いのやら)」
毎日のように人間の住む町へ行く鳥を、群れの鳥たちは笑う。
群れの鳥たちになんと言われようが、鳥は人間の町に行くことをやめなかった。
ある日。
鳥がいつものように人間の町を散策していると、一人の人間の男に目を奪われた。
(なんて、綺麗な男なのでしょう)
派手な着物を纏う男は、凛々しく美しい男であった。鳥は人間の男の美しさに心を奪われた。
人間の男に、鳥は恋をした。
「(人間の男に恋など馬鹿なこと。諦めなさい)」
「(いや!私はあの男の元に行きたいの!)」
人間の男を恋い求める鳥を、群れの鳥たちは止めた。しかし、鳥は聞く耳を持たなかった。
人間の男に焦がれる鳥は群れから外れ、〈森の神〉の〈チカラ〉を借りて人に化けた。
鳥に〈チカラ〉を与えた〈森の神〉は、男の元に行こうとする鳥を止めることはしなかった。
ただ一言、〈森の神〉は鳥に言った。それでも、鳥は聞く耳を持たなかった。
人間に化けた鳥は、さっそく男の元に向かった。男は人に化けた鳥を気に入り、鳥と男は恋人となった。
「愛しているよ」
男は鳥を抱き寄せて、耳元で囁く。
男が自分に与えてくれる言葉や情熱、甘さに鳥は溺れた。恋の喜びを知った鳥は、幸せに満たされていた。
しかし、幸せだったのはつかの間だけだった。
「こいつが代わりに金を返します」
男は強欲な金貸しに借金をしていた。男は金貸しに鳥を売り、町から逃げてしまった。
残された鳥は、男を追いかけようとした。しかし、金貸しは男を追いかけようとする鳥を許さなかった。金貸しは男の代わりに鳥を働かせた。
「ーーーーー!」
自由を奪われた鳥は、声をはりあげて男の名前を呼ぶ。
声が枯れるほどに男を求めても、男が鳥の前に姿を現わすことはなかった。
男が自分を棄てたことを、鳥は認めることができなかった。いつか、男が自分の元に帰ってきてくれると信じ続けた。
そして、男を求めるうちに、鳥は病にかかってしまった。
病に侵されて働けなくなった鳥を、病がうつらないようにと金貸しは鳥を閉じ込めた。
最後の時、閉じ込められた鳥が思い浮かべたのは、愛する男ではなかった。鳥を人に化けさせてくれた〈森の神〉の言葉だった。
「(……人に恋など愚かなことをする。それは地獄へ堕ちるだけだ)」
男の元に向かう鳥に〈森の神〉が投げかけた言葉。
鳥は〈森の神〉の言う通りであったと涙を流した。そして、静かに息絶えた。




