追い詰められた時に、その人の本性が出る。それはそれとして
追い詰められた時に、その人の本性が出る。
そんな言葉がある。
その言葉が事実かどうかは、私にとってどうでもいいことだ。
私はなるべく追い詰められる状況に陥らないようにするだけだ。
それでも、追い詰められる状況になることがある。
その経験で、私は知った。
私は追い詰められたら、奇声をあげるタイプだ。
「きゃはーん」
私は王子に婚約破棄宣言をされた。
その時の私は、まだ余裕だった。
と言うより、反撃の闘志がみなぎっていた。
「私の代わりになる女は、さぞかしお肌がぴちぴちなのでしょうね。十年後もそのぴちぴちが続くならいいでしょうけど」
私は真実の愛をみつけたとほざく王子に、まず軽い嫌味をぶつける。
「僕が愛しているのは、フレア・カートリックだ」
私の頭が一瞬真っ白になった。
きゃはーん。
どこかで変な音がした。
それが自分の口から発せられたものだとは、その時は気がつかなかった。
「フレア・カートリックって、この王国の聖女ですか?」
「そうだ」
意識は戻ったが、目の前が一瞬真っ暗になる。
「十年前にこの王国を救った、フレア・カートリックですか?」
「そうだ」
「二十年前に世界を救った、フレア・カートリックですか?」
「そうだ」
「もう四十すぎているじゃないですか」
「わかっている」
「一度、結婚しているじゃないですか」
「夫とは死別だ。法的には何の問題もない」
「私の実の母親じゃないですか」
「そうだ」
今度は自分の口から奇声が漏れているのがわかった。
「あぴゃーん」
きつい。
二十を過ぎて、自分の母親が、頬を染めて自分より一つ年下の男に寄りそっている姿を見るのは、きつすぎる。
「何しているんですか、お母様」
「ごめんなさい。でも、私も女だったのです」
その母親の言葉に、私は吐きそうになる。
「どうして、そんなことになったんですか?」
「それは、この前の聖女祭の夜に、王子に子供のときから好きだったと押したおされて。私も本気では抵抗できなくて、私は王子をうけいれてしまったのです」
「あの、お母様、すみません。性的な部分は除いてくれませんか」
「ですが、そこが大事な部分ですから。後日、顔を蒼白にして謝罪する王子が可愛くて、私の方から誘ってしまい」
「本当に勘弁してください」
「よく考えてください、お母様。このままじゃあ、私もお母様も世間のいい笑いものですよ。私は四十すぎたばばぁに男をとられたバカで、お母様はいい年して若い男に入れあげたバカですよ。バカ親子ですよ」
王子が、私の母親をかばうように前にでる。
「君の母親は、僕が守る」
「そんな口先だけの奴に、私の大事なお母様を任せられないのよ!」
怒鳴ってから、私はあわてて口を押えるが遅かった。今の言葉で、二人の関係をもう認めてしまったことを知られてしまった。
「あなたは強い子です。だから、私はあなたにざまぁされることを覚悟してました」
「そんなことできるわけないじゃないですか。お母様は、この世界を救った聖女で、みんなから愛されていて、でも、私にとってはそんなことはどうでもよくて、私にとっては大切なお母様なんです」
「ありがとう」
「幸せになってください」
私の言葉に、お母様は自分のおなかをさする。
その動作を見て、私は吐き気がして、自分の口を手で押さえる。
「あなたに報告があります」
お母様が次に何を言うのか予想はできた。
絶対に聞きたくなかったが、私の両手は口を押えてしまい、耳をふさげなかった。
耳は、目と違い閉じることはできない。
「私は子供を授かりました。あなたに弟か妹ができます」
私は口を開く。
「あべぎばばぼぎゃあががががががぴゃごごごごご」
おわり




