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「は、?掃除だと?崇高な魔術師である我々に、掃除をさせる、だと…!?」



出発して3カ月。

これまで小さな町を皮切りに掃除を進めてきた。


今のところ全て予定通りに進んでいる。

遅延も覚悟だったが、騎士団がかなり積極的に動いてくれているのと、魔術師たちもたまに魔法の工夫を伝えるだけでやる気があがるのか、かなり楽しくやってくれている。

(掃除機や生ごみを分解して肥料にする方法を伝えたらその魔法を開発。ほぼお遊び状態になったので叱った)


村や町の元住民たちにも手伝わせたことも大きい。

自分たちで掃除することで綺麗に保とうという意識が芽生えるし、意識改革は重要だ。

何より自分たちが汚したことで瘴気を発生させたという事実を広めることも重要な任務の一つだった。


ゴミの分別や魔術師たちが魔法で処理した生ごみや汚物を肥料に出来ることも伝え、作物を育てさせる。

そしてゴミは一か所に集めて、魔術師が高温で勢いよく燃やす。

その魔術師が必要であることをイザベル様に報告、手配は自分の言うことを聞くようになったマゼギルドさんにお願いをした。(マゼギルドさんには魔法で連絡をとった)


そんな中で、いうことを聞いてくれない。というかマゼギルドさんが指示しても従わない魔術師がいるという街にやってきた。

ここはまだ瘴気に侵されていないが、周辺を見るともうそんな悠長なことは言っていられない。

だから早急に進める必要があるので、そのことをドストレートに言いに行ったら冒頭の言葉を投げつけられた。



「ははっ!救世主様ともあろう方が掃除などをされているのですか?まさか、冗談でしょう?」


「冗談じゃない!なぜそんなものに力を使わねばならないのですか!」



ぎゃあぎゃあ騒ぐ外野(魔術師)はともかく、ここで一番偉い人であるはずの、日本でいう市長か県知事くらいの人であるサクなんとかと名乗った方は真剣に私を見つけめてきた。



「質問ですが。救世主様が立ち寄って場所からは瘴気が消えている、というのは先ほど伺った清掃をされているから、という理由ですか?」


「ええそうです。でも環境汚染が関係してくるので、集まったゴミは最終的に魔術師の方にお願いして特殊な方法で焼却してもらわないといけません」


「………分かりました。我々の街です。我々もやります」


「お話が分かる方で良かったです」



そういって二人で握手を交わそうとしたが、それを許さないのが外野にいた魔術師たちだった。



「ちょっと、冗談でしょう?なぜ我々がそんなことをしなければいけないのですか?結界を張っていれば十分です!」



わざわざ私とサクさんの腕を掴んで握手させなかった魔術師のおっさんの腕を見た。

ギラギラの趣味の悪い腕輪がついているし、金の大きい指輪までついている。



「ははっ!私の世界での悪役ならではの格好だわあなた」


「な、に……?!貴様!救世主だかなんだか知らんがここでは自由にできると思うなよ!」


「そうですね、私が自由にしたら真っ先にあんたをぶん殴って瘴気まみれの場所にポイしますからね。よかったですねぇ、私が自由にできないところで」


「っこ、この……!!」



顔を真っ赤にする魔術師の腕を振り払って、「あのねえ」と言いながら一歩前に出た。

自然と一歩後退する魔術師。



「結界張って安全なら、この国全体を結界で覆えばよくない?なんでそれをしないの」


「国全体を覆う結界に、一体どれだけの魔術師が必要だと…「じゃ、この街全体の結界は何人必要なの?」


「ふ、2人…いや!5人は必要だ!」


「あら?ここにいる魔術師全員じゃない。あなたたちがこの街を結界で覆っている。そういうこと?」



そういうと、それぞれ頼りないが「そうだ」と歯切れの悪い回答が返ってきた。



「この街全体の広さは?」


「は?」


「この街全体の広さはどれくらいあるの」


「調べます。少々お待ちください」



ちんぷんかんぷんな魔術師だが、サクさんはすぐに動いて今いる部屋の本棚に向かう。



「……15.81K㎡ですね」


「この国の大きな街は8つ。大まかな計算でいくと15.81を16として16×8が大体国全体の広さだとして。魔術師が5人必要なら……」



リンスさんがささっと用意してくれたペンと紙(やはりシゴデキ女子)で計算する。



「26人くらいか。まあ多めにみて30人くらいいればいいんでしょ?余裕じゃん。あんた先導してやりなさいよ」


「…………ち、力の…差は個人差があるので無理だ」


「だから多めに見て30人なんじゃない。そうじゃなくてもこちらとら今国に魔術師は70人くらいいるって習ってるからね。いい歳したおっさんがすぐバレる嘘つくなよ見苦しいな、バカかよなめんなよ」


「っ……」



腕を組んでいうと、魔術師は黙る。



「で?結界で覆えばいいんだよね?おっさん。そうしたら瘴気から住民を守れるんだよね?救世主の私なんていらないんだよね、そうなんだよね?」


「………」


「今自分が言ったことでしょ。そうなんだよね?!返事くらいしろ!!」



ばん!と机をたたくと魔術師全員は完全に怯み、俯いた。

パワハラである。完全にパワハラである。絶対に元の世界だと訴えられるやつである。

しかしまあ、この世界ではそもそも私、関係ないので。



「あんたたち魔術師がそうやっても守れなかったから今こんな状況になってんでしょうが!そして異世界からこの世界と超無関係な私が呼ばれたの!で、あんたたち役立たずの魔術師の代わりに解決策を見つけて働いてやってんの!そんなことのために力を使うなんてってあんたさっき言ったけど、私だって無関係な世界の掃除のために生まれて来たんじゃないんですけど?!もうちょっと考えて発言しなさいよバッカじゃないの!」



はい!完全にパワハラである。

完全に沈黙した室内に、私の大きなため息が響いた。



「はあ……。仕方ない。こちらから連れてきた超有能魔術師たちにお願いしましょうか」



そういってパンパン!と手をたたくと、部屋の外にいた一人の魔術師が入ってきた。



「つないでくれる?」


「はい!」



あの空間魔法が無限大に使える超有能魔術師くんだ。

空間魔法と何かを組み合わせて、映像をつないでくれた。

これは私の世界でいうTV電話だ。こちらにはなかった。


パッと映像が写し出されると、ポンコツ魔術師たちが目を見開き、口をあんぐりと開けた。


映像の向こうでは、他の魔術師たちと騎士団長のカイゼルさんが待機していた。



「ゆな様、お早いですね」


「当然、ここの魔術師も腐ってるから話し合いはできなかった。魔術師全員締め出して掃除をはじめましょう。カクさん、他の魔術師たちに声をかけて妨害されないように魔術師用の結界張ってって言っておいて」


「了解」



言わずもがな、カクさんとはカクリさんのことだ。もうスーケンさんのことはスケさん、カクリさんはカクさんで定着した。



「さてサクさん。協力していただけるなら、住民の方の協力を仰げるように手配してもらえますか。掃除の仕方もゴミの分別も全て我々が講習を実施しますが、住民の方をまとめるのはそちらでお願いします」


「承知しました。お任せください」


「さーーーーて。掃除しますか~。あ、役立たず(魔術師)たちは出てっていただいていいですか。邪魔なんで」



待ってくれ!その魔法の解説を!とかなんとか言ってる人もいたけど、無視して全員部屋から追い出した。そのあとはカクさんから指示をもらった魔術師たちが、街の魔術師たちを結界で囲み、お外にぽいしてくれた。


その人たちが出ていってからは早かった。

徹底的に住民に掃除教育を施し、すぐさま清掃に入る。

住民たちも最初は半信半疑でも、真面目に働いてくれた。もちろんバカにしてくる奴は黙らせたし、嫌がらせで掃除も一番くさいところを担当させるのは忘れない。それでもやらない奴には、小姑のように「まだ汚れているけど」と言ってやるところまでやった。


大きな街なので、2週間程かかったが終わらせることができた。

大体1週間過ぎたくらいから瘴気がなくなってきたことを目視した住民たちのやる気が溢れたことも大きかった。


救世主様ありがとう!ありがとう!と言われていると、そろそろと近づく集団。

この街の魔術師たちだった。

最終的に、瘴気がなくなっていくのを目の当たりにして頭を下げて謝ってきたのだ。もちろん清掃要員に加えて、徹底的に魔法を使わない掃除の仕方をたたき込んでやった。



「救世主様。本当にありがとうございました」


「魔法に頼らず、綺麗に清掃することがこんなに気持ちいことだとは思いませんでした」


「新たな気づきをもたらした救世主様に感謝を」



こいつら本当に初日に私を罵倒してきた人たちと同一人物?

掃除して心まであらわれたのだろうか。

そう思いながら、私は見た目が悪役だったおじさんに言った。



「今後も掃除をよろしくね。あと出来れば他の土地の魔術師の意識改革手伝ってほしいんですけど」


「もちろんでございます。尽力させていただきます!」



即答だった。瘴気って人格まで変えるのかしら。


いや、きっと新しい魔法を生み出したきっかけが私だったと連れてきた魔術師たちが言ってたからかな。TV電話の魔法の仕組みを聞いて目を輝かせてたし。

地図とGPSも編み出したからね、私!いや、提案しただけだけど!

あとは、とにかく私がパワハラするもんだから怖いんだろうな。

とにかく、そういった新しい魔法を編み出すきっかけを与えまくる私を崇拝してくれるようになったのはありがたいことだ。(扱いやすいので)



「マゼギルドさんをご存じですか?彼と連絡とって一緒に進めてほしいです」


「ほお、あの若造ですか。承知しました。なんでもお役に立ちましょう」



とまあこんなことまでお願いできるようになったのは大きい。

そのおかげか、このあと向かった地区からとてもスムーズに物事は進み始めた。

まず、イザベル様が頑張ってくれて、各地に掃除道具が配置されているばかりか、住民の意識改革、共に清掃方法を報告していたのだが、それを先に実施してくれていたのが大変大きい。

加えて、マゼギルドさんと手を組んだ魔術師たちが率先して、魔術師たちの意識改革、そして同じく清掃行ってくれた。

非協力的な魔術師を最初から排除してくれたので、大変やりやすかったのだ。

やはり魔術師たちの協力があるのとないのとでは雲泥の差だった。


驚異的なスピードでこの国の掃除が進む。

私たちが行く前にすでに瘴気が報告よりも大分薄くなっているところが多かったからだ。

他国においても国境沿いの地区から伝えたのと、イザベル様の尽力もありじわじわと掃除文化が広がっていった。



そしてついに。

私が出発して半年後―――この国から瘴気が完全に消えたのだった。

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― 新着の感想 ―
え・・・半年で瘴気消える程度だったの・・・やだすっごい国の特権階級無能
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