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掃除組の作戦といっても、どこから掃除しに行くかという相談だ。

地理的な問題や、切迫案件を洗い出し、チームを形成して1週間後に出発の目途が立つ。


もちろん王様に旅立つことを報告して、兵士たちが20人、魔術師たちが10人付いた。

涙ぐむ王様に、「イザベル様には別件を頼んでいるので、王様、あなたが、私が帰ってくる前に私の帰し方を探しだしてね。必ず」と圧をかけておいた。


兵士や魔術師たちの装備は、武器やら物騒なものばかりだったが、私たちチームの装備は掃除に特化したものばかりだ。

空間魔法というものがあって、魔術師たちに頼んで入れてもらったが、訝し気げに首を傾げただけで、収納されていった。



「いやいやいやいやおかしいでしょ。おかしいと思いなさいよ。今から討伐行くって思ってんだよね?なのに掃除道具よ?モップとかあんのになんで首傾げるだけなの」


「ごもっともだな」



スーケンさんは腕を組んでうんうんと頷く。

これから行動を共にするので、気安く会話をするようになった。

なかなか気さくな男、スーケンさん。私の中の彼のあだ名はもちろん助さんだ。



「スーケンさんみたいながっちり体系の男でさえもゴム手袋とバケツ持って来たのよ?あの人たち、まさかスーケンさんがゴム手袋とバケツで戦うって思ってんの?」


「素手とバケツなんかで魔物に敵うわけないのにな」


「ゴム手袋で戦うと思ってんじゃない」


「普通に腕死ぬわ」



こそこそと話をしていると、リンスさんが大きなタルと洗剤類を魔術師の空間魔法に入れてもらうように頼んでいた。

それも何も言うことなく、すんなりと中に入れたので、私は手で顔を覆った。



「まじかよ、信じられない。今年の新入社員かなにかですか彼。もしくはとにかく私たちをこの道中で殺したいかだよね」


「まあ、こちらの荷物に何も言わずにいてくれるのはいいことじゃないか」


「それもそうね、結果オーライだと思おう」



もう見るのはやめにして、ちゃんと全員荷物を入れたかどうか確認をしに行こうとすると、同行する騎士の団長さんが挨拶しにきた。



「救世主様、ご挨拶をさせてください。我らはあなたと同行する騎士団の団長を務めております、カイゼルと申します。彼は副団長です」


「副団長を務めております、グレンと申します」


「よろしくお願いします」



ぺこりと頭を下げると、今やお馴染みとなったぎょっとした面々、そして「頭を上げてください」というセリフに苦笑しか出てこない。



「私が連れて行く同行者のスーケンです。それと、彼はカクリ。彼女はリンスです。彼らは私がこの世界で唯一信頼している人たちです」



今、荷物の準備をしているカクリさんやリンスさんも紹介すると、副団長がバカにしたような笑みを浮かべたのを見逃さなかった。



「副団長さん、私の同行者に何か」



圧のある言い方をすると、ビクッと肩を震わせた副団長。(名前もう忘れた)



「い、いえ」


「今回のあなたの仕事内容はなんでしょうか」


「もちろん、あなたをお守りすることです」


「私は彼らのことをなんと言いましたか?」


「ゆ、唯一信頼している、と」


「ご理解いただいているならよかったです。彼らに不快な思いでもさせたら許しませんからね、副団長さん」


「っは!心得ました!」



ッチ、こういう体育会系って返事はいいんだよな。

じゃよろしく。と言ってその場を離れて魔術師と会話をしていたカクリさんの元へ。



「準備は万端?」


「うん。あとは食料を入れ込むだけだよ」


「……食料って空間魔法の中に入れると腐らないんですか?」



先ほどからこちらの荷物について一切言及しない魔術師に聞くと、びっくりしつつも回答をくれた。



「はい、そうです。生肉を入れても腐ったりしません」


「あらすごく便利。容量は?」


「自分は無限大です。だから救世主様の荷物持ちに選んでいただきました」


「"自分は無限大"ってことは、みんながみんなそうじゃないってこと?」


「はい。でも自分が使えるのは空間魔法だけなので、あまりお力になれることが少なくてすみませn「えー!めちゃくちゃすごいじゃない!空間魔法だけ、なんて卑下することないですよ。なんで今までフォーカスされてないの?だって容量無限大でしょ?最強すぎる!」



興奮した。

だって、物も腐らないし、なんでも収納できるなんて。外出時、いつも手ぶらよ?最高すぎない?

しかし、ふと気づいた。



「無限大に収納できるのは、人間も?」


「いえ、生物は収納できないんです」


「じゃあ、瘴気にまみれる前の住居も森も守れるってことじゃない。え、あなたの魔法最強すぎない?もしかして人さえいなかったら町丸ごと移動できるじゃない」


「…ぁ…………」



今気づいたのか、魔術師さんは固まった。

そして周りにいた魔術師たちはわらわらと集まってきて近くで議論を始めた。



「しかしそうなると、町にはねずみ一匹たりともいれないようにしなければならないか?」


「その前に住民を避難させて生物丸ごと燃やしてしまうというのはどうか」


「それは聊か攻撃的すぎる考えじゃないか?」


「だとしても試してみる価値はあるな」


「なぜ今まで気づかなかったのだ…!盲点だった!」



集まった魔術師たちが準備をほっぽって興奮しはじめたところで、引率の先生よろしくパンパン!と手をたたいた。



「はいはい、熱くなってるところすみません。出発しますよー準備できましたかートイレは済ませましたかー」


「かあちゃんかよ…」



とスーケンさんが突っ込んでるのを聞き流して、準備を促した。

さっさと片付けてさっさと帰りたいからね。

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