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寝る間も惜しんで勉学に励み始めて3日目。

私は驚異的スピードでこの世界のことを把握した。

人間、死ぬ気で頑張ればできる、ということを身を以て証明した気分である。

ファンタジーな部分を除けば、世界は似たり寄ったりなのも大変助かった。


しかし、魔法で今の実際の状況まで見ることが出来るのは大変便利だなと思った。

電話も魔法らしい。

日本でいうところの電子機器に頼っていた部分は魔法で賄える、そう考えることにした。


今日は王妃様が直接進捗を説明したいと来てくださったので、部屋で軽食を摂りつつ説明を聞くこととなった。



「イザベル様、ザレス先生たちを呼んでくださってありがとうございました」


「いいえ、当然です。本来ならばこちらが情報をまとめてお渡しすべきでしたのに、時間がかかってしまい申し訳ありません」


「それは本当にそう思いますが、なんとかなりそうです」


「それはようございました。早速ですが、何点がご報告を。まずは、当時、救世主様に同行した冒険者の者の血縁の者を数名見つけました。王都に住んでいる2名をお呼びしておりますが、この部屋にお通ししていいでしょうか?」


「もちろんです!」



言うが早いが、王妃様は二人を部屋に入れてくれた。

それは小柄な男の子とがっちりした体格の青年で、なんとも対照的な二人だった。



「スーケンと言います」


「ぼ、僕は、カクリ、です」


「大変な時にわざわざ来てくださってありがとうございます」



立ち上がってぺこり、と頭を下げると二人は動揺する。



「あ、これみんなに驚かれますが、別に私のいた世界では普通なので。そして早速ですが本題に入りましょう。ちょっとこちらへ来て座ってください。話が聞きたいです。ごちゃごちゃしていて申し訳ないですが」


「いえ…」


今、私の部屋のデスクの上は私の猛勉強のため、メモ書きと教科書と地域報告書などで書類が荒れまくっている。リンスさんとシェンナさんが片付けてくれるが、自分の記憶でおいていたりするので、デスクの上だけは触らないようにしてくれているのだ。

ちなみに下にも紙は転がっているが。


リンスさんが二人にも飲み物を出してくれたところで、さっそく本題に入る。



「話を聞かせてください。155年前、あなた方の先祖はどのようにして世界を救ったのですか?」



そう切り出すと、スーケンさんがボロボロになった冊子を胸から出した。



「これは自分の家にある古い伝記のような、ただの本のようなものなのですが…。その155年前に救世主様に同行した祖父が書き残したものです」


「見せていただいても?」


「もちろんです。そのために持ってきました」



許可をとってから内容をざっくりと確認すると、驚く程詳細な日記だった。



「これ日記ですね?イザベル様もどうぞ」


「ありがとうございます」



開いてイザベル様にも見せると、スーケンさんはちょっと難しい顔をする。



「この王妃様は大丈夫。そういう態度をとるということは、この日記が門外不出となったのは国が絡んでいると考えていいですか?」


「……はい、その通りです。それを書いた祖父は、国に提出してその場で殺されたと聞いています」



スーケンの言葉にイザベル様がバッと顔を上げた。



「なんですって?」


「何かあった時のためにと祖父が同じ内容を書いた日記を祖母に託していました。これはその日記です」


「王妃であるイザベル様も知らないということは、かなり秘密裡に処理されたことになりますね。思ったよりも闇は深そうですね」


「…そのようですわね………」



顔を俯かせるイザベル様だったが、その目は死んでいなかった。



「リンスさんシェンナさん、ザレス先生、ミカル先生、サカキ先生。情報が漏れないようにお願いしますね」



一応部屋の中にいるメンバーに声をかけると、全員が頷いた。

次にカクリさん(というか、君、だろうか)に目を向ける。



「カクリさんのご先祖様も同じでしょうか」



スーケンさんの話を聞いても動揺はしていなかったところを見ると予想はできるが。



「はい。死んだ母からこれを渡すが絶対に誰にも見せるなと言われました」



そういってカクリさんも古びた冊子を胸から出した。

受け取って、スーケンさんと同じように見る許可をもらい、開く。こちらはメモ書きのようだった。



「………少し時間がほしいです。質問もありますし帰っていただきたくはないので、しばらくここにいれますか?」


「は、はい……僕は大丈夫です」


「私も問題ありません」


「ありがとうございます。部屋を用意してもらいたいですが、なんだか王宮内がきな臭いので、狭くて申し訳ないですがこの部屋にいてもらえますか?自由にしてくださっていいので」


「部屋は用意できますよ?よろしいのですか?」



イザベル様が聞いてきたが、私は首を横に振った。



「申し訳ないですが、私はこの部屋にいる人以外全く以て信用できません」


「承知しました。救世主様の御心のままに」


「ありがとうございます。今更ですが私はゆなと言います。お二人もイザベル様も、改めてよろしくお願いします」



そういってまた頭を下げ合うと、早々に作業に移った。

まずはなんといってもこの二人が持って来てくれた日記とメモの解読からだ。

先生たちにも手を貸していただき、全員で解読を進め、内容を照らし合わせながらまとめた。


複数人でかかればその作業は半日もあればできた。


資料をまとめると、こうだ。



簡単にいうと、魔物や瘴気はこの世界の掃除をしに来ているということだった。

この世界では魔法が使えるので、どんなに環境が汚染されていても、魔法で綺麗にできるため自分に影響がない。


たとえば、水についていうと、自分たちに関わる水はどんな泥水だったとしても魔法で綺麗に出来るが、環境への配慮は全くといっていいほどしないので、使った水をそのまま河川や海で放流しているのだそうだ。

日本の世界では、下水が発達し家庭で出た水は綺麗にされてから川へ海に流している。


この世界でまとめて水をきれいにしている人はいないのかと聞けば、いない、が答えだった。

そういった役所は、前回の救世主が建てたそうだが全く機能しなかったらしい。

それはそうだ。事実が隠されたままそんなものが設置されても、機能するわけがない。

そういった対策をちゃんとしようとスーケンさんやカクリさんの先祖は動いたが、国に殺された。


環境が汚染され続けた場所から瘴気が溢れ、魔物が出てくる。

その瘴気は汚染された環境を取り囲み、その中で浄化を行っていた。魔物はそれを守る役目を担っている。

それを知っているから、精霊たちは瘴気には手を出さない。



そういうからくりだったそうだ。



それに気づいた救世主たちは、まずは瘴気にあふれていない地区の大々的な掃除を行う。

ゴミを拾い、水を綺麗にし、切り倒しまくった森には木々を植え、浜辺のゴミも一掃。

そうすることで徐々に瘴気が薄れていき、魔物が姿を現さなくなった。



「………なんということを」



イザベル様が小さな小さな声を出す。

そんなイザベル様が答えるかどうかは分からないが質問はしておく。

気になったときにしないと忘れてしまうからね。



「なぜ国は因果応報ということを秘匿したのでしょう?」



それに答えたのは、ザレス先生と同じく私の先生になったミケル先生だった。

彼は魔法について詳しく教えてくれた。



「おそらく、それには魔術師が関わっているのでしょう。授業でもお話しましたが、155年前よりも少し前に魔術師の中の一人が精霊に加護を受けた、という話をしたことを覚えていますか?」


「はい」


「その魔術師が、生活魔法をより豊富に使えるように普及したのです。そのことがきっかけでこの国の魔術師たちは世界から大いに評価され、この国でも国王に次ぐ地位を確立しました」


「ははーん。なるほど。自分たちの地位が脅かされるので口封じをしたと」


「それに王家も関わっていることでしょう。恥ずかしながら、我が国は世界で最も魔術師が優れていると言われている国です。他国との交易でも魔術師の存在は大きく、過去、魔術師の力を理由に無理矢理交易を開かせた国もあります」



イザベル様もそう付け加えて、部屋の中がしーんと静かになった。

しかし、そうずっと黙っているわけにもいかない。



「はあ………。イザベル様にも秘匿されていたことで、国王が知っている可能性は?」


「ここ数日の陛下の動きを考えると、十分にありえますわ。私、何度か殺されかけておりますもの」


「「え!」」



びっくりしてスーケンさん、カクリさんと声をあげると、イザベル様はどこか吹っ切れたのか、ふわりと笑った。



「刺客を差し向けられましたわ。私についている影たちが守ってくれましたが、あれは身内だと教えてもらったのです。助かったのはゆな様のおかげなのですよ」


「え、私?」


「ええ。王子に……あの子を叱ってくださったのでしょう。急に自分が恥ずかしくなってきたといって私の執務を手伝ってくれるようになったのです。あの子がいたから、そんなに大掛かりには攻められなかったのでしょう」



役立たずもたまには役に立つな。と思ったのは内緒だ。



「その影って今でもいますか?」


「え、ええ……ついているはずですが」


「じゃ、出てきてもらってください」



言うが早いが、2人黒いマントに身体を包んだ人がどこからともなく出てきた。

結構びびったが、みんなびっくりしていない。これが魔法なのだろうか。


2人ともがイザベル様の周りに立つと、口まで覆ったマスクをとって私にひざまずいた。



「我らが王妃様の影です。私はシルバ。こちらの者はヤヒと申します」



驚いたことに女性だった(シルバさん)。

勝手にこういうのは男性だと思っていたが。



「自己紹介どうも。跪かれるの嫌いなので立っていただいてもいいですか?」


「は、はい」



2人が慌てて立ち上がるのを見て、にっこり笑った。



「改めて、ゆなです。命令とは言えお妃様の命を狙う馬鹿野郎を撃退したお二人ってことでいいですか?」


「はい」


「分かりました。では信用させていただきます。申し訳ないですが、この部屋の全員守ってください」


「「心得ました」」



私は一度、息を吐いてからもう一度吸い込んだ。



「よっし!では、チームを分けましょう。イザベル様と一緒に王宮で王様と魔術師たちの不正をかき集めるチームと、私と一緒に旅に出て世界をお掃除するチーム。リンスさんとシェンナさんも含めさせてね。全員で9人…4人と5人かな。いけそう?」


「私はゆな様にお供いたします。お掃除は好きですのでお役に立てるかと」



最初に声を上げてくれたのはリンスさんだった。



「では私は王妃様に。事務作業は得意ですので何なりとお申し付けください」



とシェンナさん。



「私はゆな様に同行します。変な奴らからお守りしますよ」


「僕もゆな様についていくよ。メモを読み込んでいるから知識で役に立てると思います」



スーケンさんとカクリさんが私チーム。



「我々はしがない学者なので、顔は広い方です。王妃様の元でその顔の広さを発揮しましょうか」


「そうですね。私も魔術師の方には顔が利きます」


「私は政治方面ですね。何かお役に立てる情報を掴んでみましょう」



先生たちはイザベル様チーム。



「では我々は王妃様、ゆな様に一人ずつ付きます」



私のチームにシルバさん。王妃様にはヤヒさんがついた。



「よしこれでいいですね。それぞれで作戦を練りましょう。ちなみにイザベル様、命の危険度でいけば王宮に残る方が危険です。あなただけでなく全員。信頼できる護衛がいるなら複数人集めて囲ってください」


「承知しました。実家から連れてきます。必ず全員守りますわ。ゆな様も絶対に帰ってきてくださいね」


「はいはい」



こくりこくりと頷いて、私は自分のチームメンバーを見てにっかりと笑った。



「よっしゃー!ではお掃除組の皆さん、一生分の掃除しにいきますよ!」



汚物は平気ですか~と叫ぶと、スーケンさんが「あんたがな」とぼそりと悪態をついたので、背中をたたいておいた。

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