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「おお…!せ、成功したぞ!」

「良かった…!これでようやく我らは助かるのだな…!」

「世界の平穏の第一歩だ!!大魔術師様!」



大声に驚いて目を開けると、ホテルの大会場みたいなところのど真ん中で、大勢の人が私を囲んで大声で感極まっていた。中には泣いている人もいる。


そんなよく分からない状況の中、私は今まで自分の顔につけていたパックをゆっくりと外し、手で馴染ませた。顔面マッサージもせねば。



「救世主様!」



とかなんとか言われてるけど、とりあえず



「私のアイクリームと美容液と保湿クリームはどこ?」



そう発言した私の言葉はもはや誰の耳にも届いていなかった。





「ほぉ。つまり、この国、というか世界はしょうき、という人が吸い込むとすぐに死んでしまうものに侵されていて、人間を襲うまもの、とやらが蔓延っている。そのまものを倒すと復讐とばかりに大勢で国をめちゃくちゃにされるから、下手に手を出せない状況だけど、どんどんしょうきが広まっているから、どうにかしたい。そうしたら古い本を見つけて、過去に異世界から救世主になるべき人を呼んでみたらその人が助けてくれた経緯があるから試してみたと。そしたら私が来た。そういうことでしょうか」


「はい。その通りです」



アイクリーム、美容液、保湿クリームとやらは何か分からないのでない、と言われたが、いやいやあんたら男じゃない、知ってるわけなかろうが。と言ったらこの国の王妃だと名乗ってくれたイザベル様が用意してくれた。

ありがたく使わせていただき、顔面マッサージをしながら詳細を聞くと、そんな感じらしい。



「ふーん。じゃあその異世界から来た人はどうやって助けてくれたんですか?」


「文献によると、数人の騎士や志願した冒険者たち、そして当時この国の王子を連れて魔物退治に行ったと記されています」


「え、矛盾してないですか。だってまものとやらを倒すと復讐されるんでしょう」


「それが一切なかったと記されているのです。恐らく救世主様の特別な力で退けられ…「私にそんな力ないですけど。というか一緒に行った人たちからの報告はまとめてないんですか?それとも全滅したんですか?」


「い、いえ。全員帰還しております」


「じゃあどうしてどうやって倒したのかが分かってないんですか?おかしいでしょ。それって何年前のことなんですか?」


「ひゃ、155年前です…」


「あら結構最近ですね。一緒に行った人の血縁者はいますか?」


「探せばいると思います」


「じゃあ探して聞いたらどうですか」



そういうと、なぜかしーんと静まり返ったので、首をかしげた。



「今の状況って155年前と同じ状況なんじゃないんですか?」


「そ、そう、です…」


「じゃあなんで調べないの?まさかとは思いますが、救世主様とやらに他力本願な感じですか?自分たちの世界なのに?救世主様とやらの世界や人生はどうでもいいってことですか」



そういうと、真っ青になった人。

その後ろでは国王だと名乗った人も黙り込んで下を向いていた。

その姿はまるで授業中に先生に当てられないように下を向く生徒のようだ。


その隣にいた保湿クリームを貸してくれたイザベル様だけは、しっかりと私を見てくれていたので先生よろしく当ててみることにした。



「イザベル様はどうお考えでしょうか」


「はい、救世主様。この国におらぬなら他国をあたり、当時の縁者たちを探します。数日の内に情報をまとめてまいりますので、しばらくお時間をいただけますでしょうか」



さっきクリームをお借りするときに名前を名乗ってくれたので、名前を呼んで当ててみるとしっかりと答えてくれた。



「ありがとうございます。ではそれまで私を元の世界に戻してもらえますか?」



そういうと、またまた会場がしーんと静まり返った。

そしてまたイザベル様が答えてくれる。



「申し訳ございません。私ども、呼ぶ方法は分かっていても帰す方法は…そこは盲点でございました。なんとお詫びをすればいいか……それにあなた様をお呼びするのにも相当な力が必要で、このように魔術師たちも限界でございます。これを何度もというと、御身の安全にも関わってくるかもしれません。この点に関しましても調べさせていただきたく、お時間を頂戴できますか」


「それは困りますね。私、明日結婚式なので」



そういうと、会場がまたまたしーんと静まり返る。

イザベル様のお顔は真っ青だ。



「私、明日結婚式なんですよね。あと、来月は仕事の昇進が決まっていましたし、新しい社内プロジェクトのチームリーダーにも選ばれていました。って言っても分からないですよね。

つまり、結婚式は明日でしたし、この国でいう重要ポストである役職に就いていて、新しい政策を遂行するリーダーに選ばれていたということです」



私は目の前で私の質問に答えられなかった男性を見て続けた。



「私のいる世界では、性別に関係なく仕事ができる人が昇進できます。重要な説明や簡単な質問の受け答えもできないような人よりも、しっかり仕事をこなせる人が昇進するなんて普通のことでしょう?ま、まだまだ難しい局面もありますけど。だから昇進するまですっごく苦労したんです。全く仕事しない上司のかわりに仕事して、成果出して。それを上司のもっと上の地位にいる人に分かってもらえるまで、かなりかなりかなり時間を要しました。やっと、それが叶ったところでしたって言えばご理解いただけますか」



にっこり笑うと、また問題が分からない生徒のように下を向く王様。



「救世主様!お怒りはごもっともですが、我らも道を選んではいられなかった、ということはご承知おきください。どうか…」


「道を選んではいられなかった?私の人生をめちゃくちゃにする前に、過去どうしたかも調べていないのによく言えますね。"道を選んでいなかった"という言葉は何をしてもお手上げの状態の時に使うんですよ」



いきなり大声を出した金髪男子に質問をしながらヘアバンドをとって髪を手櫛で整えた。

そろそろ取らないとあとがつくからね。



「今の状態が始まってどれくらいなんですか?」


「兆候が見られはじめたのは…じ、………年程前から、です」



金髪男子が顔を下げたまま小さな声で答えた。



「聞こえない」


「じゅ、10年、前、から……です」


「10年前?10年もあったの?ははっ、"我らも道を選んでられなかった"?」


「…………」


「とりあえず、早急に過去の情報と私を元の世界に戻す方法を調べていただけます?」



誰の顔も見ずに投げやりにいうと、王様が小さな声で「承知しました」というので、イラッとした。



「聞こえない。何?」


「しょ、承知いたしました。すぐに調べさせます」


「違うでしょう王様。あなたの、国ですよ、あ、な、た、の!なんで人任せなんですか?あなたも!調べるんですよ。動きなさいよ。承認やらなんならをすっ飛ばして早急に対応するには、権限持ってる人が一緒に対応する。それが一番早いです」


「………はい」


「とりあえず、帰れた時のことを想定して私は寝ます。明日結婚式ですし朝早いんですよね。枕と布団を貸していただけますか」



そういうと、イザベル様がすぐに手配してくれて、メイドさんが数人ついた豪華な部屋に案内されたけど、落ち着かないといって小さな部屋に移動させてもらった。

歯磨きをしたい、というと、メイドさんがやってくれようとしたもんだからびっくりした。


上の歯~下の歯~前歯~奥歯~と、小さい頃に聞いた歯磨きの音楽が脳内に流れたのは言うまでもない。

もちろん自分でやりました。


そして、突然声を上げた金髪は王子様だと教えてもらって、「あらあら。頭の悪さは王様に似ちゃったんだね。イザベル様に似ればよかったのに」と思わず悪態ついてしまったのは悪かった。

でも布団に寝っ転がって、「いや、私いきなり殺されたようなもんだしもっと悪態ついても良かったな」と思い直して寝ることにした。

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