第一章 7 ーー 夢 ーー
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暗闇のなか、火花に似た光が散り広がる。
視界の至るところで火花が散るたびに、金属音がぶつかった気がする。
変な想像をしてしまう。
誰かが戦っているんじゃないか、と。
誰かが戦っている…… 誰かが……。
なんでそんな突拍子のないことを、と疑念を抱く暇もなかった。
息を呑むと、微かながら視界が晴れていくと、目の前に二人の人影が争っている姿が浮かぶ。
手には剣を握り、刃が交わされていく。
二つの刃がぶつかるほどに、金属音が酷くなる。
剣を手に持つ光景なんて、現実にあり得ない。
そんなのはマンガやアニメでしか見ることはないはず。剣を振り回すなんて、危険なことをすれば、警察が黙っていないはず。
こんな光景があるなんて……。
……そんなの……。
体が言うことを利いてくれない。
それなのに、意識では危険を察している。
こんな戦い、争いなんてやっちゃいけない。
胸の奥がざわめき、二人を止めようと意識を全身に巡らせるのに、苦しいだけ。
……ダメ…… ダメ……。
「ーーっ」
誰かの名前を叫ばずにはいられない。
視界が完全に晴れたとき、場面は一変していた。
争いを続ける影に向かい手を伸ばすと、視界の先で捉えたのは、見慣れて代わり映えのない殺風景な私の部屋。
白い天井の中心にある蛍光灯。
私がいるのは自分の部屋。
あれは夢だったの?
強く問いたい疑念に、答えてくれる者はいない。
夢にしては、脳裏と目蓋の裏に深く刻まれている。
胸のざわめきは消えてくれない。
あれは夢なんかじゃない。
不思議と確信できた。