第六章 1 ーー 公園 ーー
第六章
1
信じたくない。
信じたくないのだけれど、坂口のことを確かめようがなかった。
昨日からずっと頭痛が治まらない。
あの後、私も興奮しているのだろうか。あまり記憶に残っていなかった。
だからなのかな。またどこかで幻なんだと信じたいこともあった。
翌日、私の疑念は晴れることはない。
圭一にはまともに顔を見ることも億劫になり、圭一を避けていた。
だけど、坂口とは話がしたい。
けれど、今日は学校を休んでしまっていた。
昨日のことが影響しているなんて、言わないでほしい。
さらに私を苦しませるもの。
どんな気持ちだ?
本当に性格はねじ曲がっているんだと呆れてしまう。
あいつはまるで、私の不安を煽るような言葉を送ってきた。
昨日のことが現実であることを突きつけ、胸をえぐらせた。
当然、無視をした。
既読にすることすら気に入らなかったけれど、極端に無視すれば、それこそ教室で発狂しそうだったので。
ただ、私が逆に発狂してしまいそうなことが起きた。
影法師を連れてこい。
思わずスマホを握る手に力がこもった。
私の心を逆撫でする言葉に、離れた席に座り、数人と喋っている圭一を睨んだ。
意図して送ってきたのだろう。
私の視線に気づいたのか、自分らの話で笑いながらも、こちらを眺めて口角を引きつらせていた。
従いたくはない。けれど、無視もできない。
「どういうつもりなのよ。こんな時間に呼び出して」
夜九時を回ろうとしていた。
憎らしいメッセージには続きがあった。
夜九時に公園に来い、と。
どれだけストーカー気質があるんだか……。
圭一が呼び出したのは、以前に坂口と会っていた公園。
ここで会っていたのを知っているなんて、本当に気持ち悪い。
半ば怒りをぶつけた圭一は、ブランコに座っていた。大きく股を開いて座り、時間を持て余しているみたいに、スマホをいじって。
顔を上げて私を見つけると、眉間をひそめ、辺りを見渡した。
誰かを探すみたいに。
夜の公園。
子供はおらず、制服姿の私らしかいなかった。
小さな虫を探すようにしていた圭一の眼差しが、いかがわしく私の顔で止まった。
「影法師は?」
「それって、坂口のこと?」
「当然だろ。あのゴミ以外に誰がいるんだよ」
圭一は雑に答えると、手に力が入る。
不安がこぼれてしまいそうで、唇を強く噛み締めた。
まだ信じたくない。
「あいつは影法師なんかじゃない」
「ったく。まだそんなことを言ってんのかよ。昨日のあれ、まだ信じられないのか?」
「あれは……」
うつむいてしまった。反論する余地がない。
「でも、あいつは苦しんでいた。大切な人を喪って。それで」
やっぱり否定したくて声を荒げると、圭一の異変に息が詰まった。
圭一はうつむきながら乱暴に髪を掴んだ。
「さっきからウザいな」
なんだろ、急に背中が引きつる。
圭一の声に急に棘が生えたみたいに、肌に刺さってきた。
反射的に一歩下がってしまう。
「なんなんだよ、あいつはっ」
ドサッと圭一は立ち上がって声を荒げた。
「お前にとって、あいつはなんなんだよ。あいつは人殺しだぞっ」
まただ。
「なんなのよ。昨日もそう。なんでーー」
「あいつはあっちで人を殺した。だから、あいつには記憶があんだよっ」
ーーっ。
「今、なんて言った?」
あいつが……。
「なんでお前は奴を庇うんだっ。なんであれだけ邪魔してやったのに、なんであいつを消さない、消えないんだっ」
……消える?
圭一の怒号がより混乱させた。




