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異世界から帰ると  作者: ひろゆき


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 第五章 4  ーー 惨状 ーー


            4



 影がこちらにゆっくり近づいてくる。

 ゆらりと揺れる影は、次第に輪郭をハッキリとさせていく。

 疑いは確信になっていく。


「ーーやっぱり」


 ……影法師。


 足が竦んで動けない。

 それでも憤りだけは強まって影を睨んでいると、影法師は私らの数メートル先で歩みを止める。

 間違いなく、憎らしい影法師の姿。

 影法師はゆっくりと右手を横に振り上げる。手には剣が握られていた。

 影に光る刃は、どこか赤黒く汚れているように見えてしまう。


 まさか…… ここにいる人らみんな……。


「お前の目的はなんだっ。どれだけこの世界を乱せば気が済むんだっ。敵も味方も見境なく…… そんなに虐殺が楽しいかっ」


 この地の惨劇に、坂口が一歩踏み込んで激昂し、右手を大きく振り払った。

 怒りをぶつける様は、圭一に怒鳴っていた姿は、比較にならないほどに。


「敵味方見境ないって、こいつは敵国の刺客じゃないの」


 坂口の叫びが気がかりになり、割り込んでしまう。

 すると、坂口は影法師を睨んだまま、かぶりを振る。


「こいつはどこの国にも属さない奴だ。こいつは争いが起きる場所に突如現れ、そこで戦う者を残虐していく。ただの無法者だ。まるで人を殺すことだけを楽しんでいるみたいに」

「何それ? 楽しむってどういうことよ」

「僕もわからない。僕は遭遇したことはなかったから。僕がこっちに飛ばされて、しばらくして出没するようになったんだ。それで…… カガミは」


 坂口は悔しさで言葉を噛み殺した。


「答えろっ。お前の目的はなんなんだっ」


 坂口の怒号が再び轟くと、影法師は刃を坂口に向けた。


「命を乱すもの。この地に必要なし。大地を乱さすもの、息吹く必要なし」

「なんだよ、それ」


 以前と同じこもった声。


「すべてを消すこと。それが救いであり、すべての者が望むもの。消え去ることで浄化するべし」


 ……浄化…… 浄化ってなんなのよ……。


「あんた、そんなこと前にも言ってーー」


 私にも影法師の言動が何を伝えようとしているのか把握できない。

 以前も意味深なことを言っていたので、ちゃんと確かめたかった。

 そのとき、


 私の横に大きな影が横切る。


「ーーお前らは帰れ」


 大きな影が視界を遮ったとき、坂口は私との間に弱々しくも重い声が木霊した。

 どこかで聞いた声に、息を呑んでしまう。


「ーールーン?」


 私の疑念を当てるように、弱々しく坂口がこぼす。


 ルーンって、確か前に会った金髪のーー


 体格のいい姿を描いていたとき、本人の姿が目の前に現れた。

 坂口の背中に覆い被るようにして、坂口の肩に手を回した。


「ルーンッ、お前っ。その格好、どうしたんだっ」


 坂口は声を上擦らせる。

 ルーンは頭から血を流していた。頬を伝う様は、涙を流しているみたいみたいに。

 体もボロボロ。ホコリとも傷とも見える汚れが全身に広がっている。

 そして、背中には一本の剣が突き刺さっていた。


「ルーンッ、お前っ」

「悪い。お前らを巻き込んでしまって…… テレサも助けられなかっ…… 悪い……」


 驚愕に口元を手で押さえていると、ルーンは崩れるように地面に倒れてしまう。


 力尽きてしまうみたいに。


「おい、ルーンッ。噓だろっ、しっかりしろっ」


 すぐさま膝を着き、ルーンの肩を揺らす坂口。それでもルーンは動く気配はない。


 ……嘘。死んだ? えっ…… 死ん…… だ?


 一向に動くことのないルーン。代わりに坂口の肩が小刻みに震えていく。

 私は…… 怖さで動けずにーー


「ーー嘘っ」

 視線を彷徨わせていると、足元に止まってしまう。

 足元には一人の女性の遺体が横たわっている。

 もう動くことのない体には、ルーンみたいに背中に剣が刺さっている。


 私はこの人を知って…… いる。


 少ししか会っていないのに、私も憧れてしまう人。


 確かテレサ……。


 なんで、なんで?


 知っている人が死んでいく。そんな簡単に……。


「……消していく…… 奪っていく。それは浄化するため。すべてを奪う」


 途方に暮れ、堪え難い震えが襲い、倒れそうになっていると、影法師が追い打ちをかけ、私の意識を奪おうとする。


 みんな、死ぬ……。

 

「……許さない…… 許さない……」


 震えた坂口の声が響く。


「絶対にお前だけは…… なんでそこまで」

「すべては奪うもの」


 奪われる。命が…… 死ぬ…… そんなの……。


「そんなの、絶対に嫌っ」


 思わず私は叫喚した。

 すべてを拒絶するのに、両手に力を入れたとき、私の周りを白い光が襲った。

 

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