表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から帰ると  作者: ひろゆき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/65

 第三章 10  ーー 美月の痣 ーー


           10



 どうも、寝つきが悪かったんだな、と朝になり、頭に痛みが残っていた。

 何度もあくびが出てしまいそうなのを堪えなければいけなかった。

 一限目は頬杖を突きながらウトウトし、サボろうかと企んでいると、美月が教室に入ってきた。

 おはよ、と手を上げようとしたとき、目を疑い、躊躇してしまう。

 声を上げられずに呆然とするなか、美月が無邪気に私の席に近寄ってきた。


「おはよ」

「うん。おはよ」


 勢いに任せて挨拶するけれど、美月の左腕に目が止まる。


「どうしたの、それ?」


 思わず指差してしまう。美月の左手の包帯が気になり。


「ーーえっ? ケガしたの?」

「ううん。そうじゃないんだけどね」


 ととぼけながら、包帯の上から手首を擦る美月。

 擦っていくうちに、頬が強張っていく。


「なんかさ、痣ができてて」

「ーー痣?」

「うん。ちょうど手首の辺りからまっすぐ横に赤くね。それも結構濃く出てしまったの」

 と、痣の形を指でなぞってみせた。

 それは、リストカットをしているような仕草で。


「何かにぶつかったの?」


 手を動かしながらも、どこか納得しきれておらず、頬を歪める。

 美月に聞いてみると、首を傾げた。


「いや、そんなことはないんだけどさ。もしそうだとしたら、情けないじゃん。寝違えてどこかにぶつけたんだろうから。それでこの包帯」


 自分の不甲斐なさを嘲笑い、頬を掻く美月に笑顔を献上した。


「別にいいじゃん。そんな痣ぐらい」

「やだよ。結構大きいんだよ。恥ずかしいって」


 なんだろ。一瞬、美月の包帯を見たとき、胸の奥からえぐられる思いに襲われたけれど、美月の無邪気さに安堵した。


 ……大丈夫、あれは夢。


「ーーえっ?」


 唐突に浮かんだ言葉にドキッとした。


「遥香、どうしたの?」

「あ、ううん、なんでもない」


 なんだろ、瞬きをすると、一瞬心が痛んだ。

 何か脅えた……?


「そんな気にしないでよ。大したことないんだしさ」


 どうも、私が不快な顔をしかのは、心配したんだと感じた美月は、気恥ずかしそうに手を振った。

 大丈夫だと包帯を巻いた左手で。

 だよね、と自分の気持ちをごまかし、私も笑っておいた。



 私の話は冗談だと受け流され、美月が席を離れた後、すぐに表情を曇らせた。

 ちょっと気を紛らわしたかった。

 誰かの席に喋りに行こうかな、とも思ったけれど、何気に手帳を取り出した。

 また不安を書き留めておこうと。

 ただ、手帳を開いたとき、手が止まってしまう。

 手帳に書かれていた無数の「なんで?」の疑問の言葉の羅列。

 自分がなぜ、こんなことを書いたのか明確に覚えていないけれど、目を外せない。

 文字を指でなぞっていると、不意に止まった。


 ーー坂口。


 ……坂口?

 首を傾げてしまう。

 なぜ、イジメの標的になっている坂口の名前があるのかと。

 瞬きを一つした。

 ほんの一秒も満たない時間に、その光景は脳裏を駆け巡る。


 そっか。そうなんだよね……。


 昨日の出来事。昨日、私らは黒装束に襲われた。


 あの後、どう逃げたのかわからない。


 ……なんのつもりなの、影法師……。


 私は知っている。あんたがどういう奴かを。


 坂口に聞いているんだから。

 ミラで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=786867997&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ