表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から帰ると  作者: ひろゆき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/65

 第三章 7  ーー 影法師 ーー


            7



 なんで逃げるの?

 自分に問いかけてしまうのか、疑念を抱く暇もなく、公園から飛び出していた。


 完全に脅えている。


 止まってしまえば、すぐに震えで倒れてしまいそうで怖い。

 だからこそ、自分の恐怖をごまかすのも含め、余計に足に力がこもる。


 ……怖い。


 得体の知れない恐怖に耳を手で塞いで走っていた。

 すべてを拒絶したくてうつむいたまま。

 誰かに肩がぶつかったかもしれない。それでも止まらない。

 誰かが「おいっ」と怒りをぶつけてきたかもしれない。

 でも逃げた。

 まだ完全に日が落ちていないのに、足元が普段よりも暗く見えてしまう。

 異様な雰囲気に足が止まってしまう。

 引かれて顔を上げ、目を見開いた。

 また不気味な空が広がっていた。

 マジックアワーに似た、不思議な空が。


 なんで?


 戸惑いで息が苦しくなっていく。


「……またあっちに行くことにーー」

「なぜ、逃げる」

 

 肩が硬直した。

 肌に刺さる禍々しい声に、視界がゆっくりと下がっていくと、耳に当てていた手も下がり、ギュッと握ってしまう。


「……影法師……?」


 どうしてそんなことを言ってしまったのか、私にも理解できない。


 自然と口からこぼれていた。


 全身を黒装束で覆った人物。

 男とも女とも捉えない姿で、マントも被り、顔も黒いマスクに隠されていた。


 でも、私はこの人物を知っていた。


 会ってはならない危険な人物なんだとも。

 黒装束のそいつの腰には、一本の剣が携わっていた。

 喉の奥で潰れている間に、黒い腕が剣のグリップに触れる。

 刹那、踵を返して地面を蹴った。


 逃げなきゃっ。


 全身に駆け巡る指示。逆らうかとはない。



 どれだけ走り抜けたかは把握できないけれど、肩で息を整えないといけないほどに苦しかった。

 風が髪になびくほどに走っていたのに、まったく黒装束から逃げる自信がなかった。


 振り返れば、すぐ後ろにいる。


 そんな恐怖が背中に貼りつくなか、走り続けていた。

 逃げる道中、疑念に襲われる。

 これまで数人の人とすれ違っていた。鬼気迫る表情であるのは痛感していた。

 その異質さを怪訝に見詰める人らはいたのだけど、誰もが黒装束に対して恐れる様子はなかった。

 なんで? 剣を握ったコスプレ野郎が街中にいるんだよ。

 それなのに、なんで? なんでよっ。

 怒号も悲鳴も聞こえないでいると、次第に足に疲れが積もっていき、歩幅が狭まっていった。


 動いて。動かなきゃ。


 足の指先にまで、命令を下しているのに、突如、言うことを利いてくれず、止まった。

 これまで破裂しそうな息が、不思議と急激に鎮まった。

 止まらされた。

 すぐ後ろに人の気配を感じて。


 ……動けない。

 ……助けて…… お願い……。


「……助けて…… 坂口……」


 視界が霞んでいくなか、咄嗟に口走っていた。

 どうして圭一でもなければ、美月でもなく、坂口だったのか……。


「……どうして?」


 私の声じゃない。

 やけにこもった声が耳に届いた。


 まさか影法師……。


 込み上げる不安に振り向き際、背中に痛みが走る。


 斬られた……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=786867997&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ