第一章 9 ーー 懐かしい……。 ーー
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奇妙な安心感は坂口を見てから、胸に浸透していく。
私は間違いなんだ、と。
これまで渦巻いてい不安は消えてくれ、落ち着いてくれた。
しかし、だからこそ、強く沸き上がる際念もあった。
どうして?
普段から気がかりになったことや、嬉しかったことを手帳に書き残していたけれど、今回ばかりは筆圧は強くなり、手帳の文字も濃くなっていた。
どうして坂口を見て安心なんか……。
「……どうして?」
学校の帰り、ふと足が止まると空を眺めてしまう。
普通なら夕焼けに染まる空なんだけど、雲が風に流れる。
太陽が染み込むみたいに赤くなっていく空。
より高い空は紫に染まる珍しい色合いになっていた。
空が波を打つような、奇妙な色合い。
こんな空、珍しい…… でも。
懐かしい……。
思わずスマホを空に向け、写真に収めた。
普段見ることのない空に興奮せずにはいられないけれど、落ち着いてしまう。
私はこの空を知っているんだ。
「……そうか。そうだよね」
まるで強風が私を追い抜いていくみたいに、後ろから吹き抜け、髪をなびかせた。
不安をなぎ払うみたいに。
それまで霧を覆っていた記憶の靄を鮮明にしていく。
あれって、何日前だったかな。
その日も授業が終わり、学校から帰ろうとしていたけれど、教室に忘れ物があると気づき、美月と戻ったときである。
窓の外に広がっていた空に驚愕していた。
「……何あれ。気持ち悪い……」
初めて見る不気味な空に息を呑み、怪訝に眉をひそめたときだった。
視界が一瞬にして光に包まれ、体全体が急に宙に浮かび上がる感覚に陥った。
それは、私が異世界に飛んだときのこと。




