第1話 隣の席の幼馴染
忘れ物を取りに教室へ戻った時だった。
人影が見えたので俺は隠れながら様子をうかがった。すると、そこには幼馴染の綾乃と誰かの姿があった。
「平野くん……んんっ」
俺は目を疑った。
綾乃が同じクラスの平野とキスを交わしていたのだ。しかも濃厚に……。
嘘だろオイ……綾乃、なんで。
頭が真っ白になって立ち尽くしていると、平野は綾乃の体に触れていく。そして、制服を脱がしていった。
そ、そんな……!
綾乃は俺の幼馴染だぞ。
そりゃ、美少女で寄ってくる男も多かったけれど……こんなことって。
「でも良かったのかい、綾乃さん」
「なにが……?」
「ほら、幼馴染の紫藤。隣の席で仲が良さそうじゃん。付き合っていたんじゃ」
「ああ……彼は幼馴染だもん。別に付き合っているわけじゃないし」
「そうなのかい? 周りから見ているとお似合いだと思っていたけどね。ほら、紫藤のヤツ、顔も性格も悪くないのに」
だが、平野は構わず綾乃を剥いていく。下着姿にして……ついには致してしまった。
綾乃は最初は痛がっていたけど、段々と息を荒くして甘い声を漏らしていた。……綾乃、綾乃……おまえ。
子供の頃、俺と結婚したいって言っていたじゃないか。
あの言葉は嘘だったのかよ。
悔しくて涙があふれ出てくる。
ついでに下半身の涙も零れ落ちた――。
(………………ウッ)
* * *
綾乃と平野も教室内で果てていた。
俺は手に真っ白いものが、こびりついていた。
「…………最低だ」
もちろん、綾乃と平野に対しての感情だ。
綾乃があんなヤツだったなんて……実は俺のことなんてどうでも良かったんだ。
もういい、帰ろう。
踵を返し、俺はそっと教室を後にした。校門まで向かうと、そこには金髪のショートヘアの美少女が立っていた。まるで俺を待っていたかのように。いや、待っていたんだ、俺を。
「あ、やっと来たか。赤くん!」
「おっす、藍」
彼女は古森 藍。もうひとりの幼馴染であり、幼い頃から綾乃を敵視している。つまりライバルだ。
「どーしたの、元気ないね?」
「いやー……ちょっとな」
「あ~、分かった。綾乃ちゃんだね」
「まあな」
「綾乃ちゃん……取られちゃった?」
「え……なんでそれを!」
俺はビックリした。藍がまるで見透かしたみたいなことを言ったからだ。まるで見ていたみたいに。
「実はね、綾乃ちゃんは半月前から誰かと連絡していたみたい」
「な……」
「それって別の男じゃないかなって思った」
「まさか!」
「そのまさかよ。ていうかね、今だから言うけど綾乃ちゃんは昔からそうだったよ。赤くんに秘密にして男子と付き合ってた」
それを聞いて、俺は後頭部をモーニングスターで殴られた気分になった。なんだよ、それ! 俺に見せていたあの笑顔は偽りだったのか……!
「教えてくれ、藍。綾乃は……俺のことをどう思っていたんだ?」
「幼馴染だけど、キープの対象くらいにしか思っていなかったと思う」
「キープって、思わせくらいの態度だったってことか」
「そうだろうね。あたしと二人きりの時は、綾乃ちゃん……他の男子の話もしていたし……。それも楽しそうにね」
マジかよ。マジかよ!!
綾乃は俺をそんな風に思っていたのか。幼馴染だから、きっとこのまま恋人同士になって……青春を送っていつかは同棲、結婚みたいなことを夢見ていた。しかし、それは俺の一方的な勘違い。妄想でしかなかった……。
俺が馬鹿だった。
今更ながら、綾乃の薄っすら見えた下着で抜いたことを後悔した。俺の生命の涙を返せバカヤロウ……!