遥かなる時の恋人
第一話 ずっと一緒
ある日の放課後、侑二は隣のクラスで人気の有る髙橋マリナに呼び出され学校の屋上に居た。
「海野君、私、隣のクラスの髙橋マリナです。入学してからずっと好きでした、私と付き合って下さい」
顔を赤くし恥じらいながら告白して来た。
侑二はマリナの事が好きだった。
「勿論、僕で良ければ宜しくお願いします」
そう答えると、マリナは向日葵の様な笑顔を見せ喜んだ。
高校1年の夏だった。
「海野君は部活しているよね?毎日一緒に帰りたい、部活終わるまで此処で待ってて良い?」
マリナは積極的な女の子だった。
「うん、待たせてしまうけど、僕も一緒に居たいから待っていて、それと、僕の事は侑二で良いよ」
侑二は女の子と付き合うと云う経験は少なかった。
「じゃあ侑二、私の事、マリナって呼んで」
侑二は剣道部だった、マリナは茶道部だったが活動はしていない様だった。
楽しい学校生活が始まり、可愛い彼女が出来て侑二の世界は変わった。
マリナは顔が可愛いだけでなくスタイルも良い、待ち合わせするとスカウトに名刺を貰う様な女の子だった。
海にグループデートをしたり、買い物をしたり毎日が楽しくどんどんマリナを好きになった。
「マリナはバイトとかしているの?」
そう聞くと、ファストフードでバイトをして居ると聞いた。
侑二は考えた、今は小遣いを貰っているが、正直デート代で小遣いが足りなかった。
侑二もアルバイトをしようと考えた。
色々なサイトを見てアルバイトを見つける。
第二話 君の為なら
部活が終わりマリナの待つ屋上に行き、一緒に帰り、その後バイトに行った。
時間や曜日に融通が利くケーキ店でバイトを始めた。
どんなに疲れていてもバイトに行った。
マリナが欲しがるアクセサリーなどは意外と高い。
マリナの笑顔が見たくてバイトを頑張った。
部活でも大会が有るとマリナは応援に来てくれた。
「マリナは僕の何処が良かったの?」
ふと、聞いてみた。
マリナは驚きながら
「だって、侑二背が高いし、優しそうな感じがした。爽やかイケメンだったから」
恥ずかしかったのだろう侑二の腕に自分の腕を回し侑二の腕に顔を埋めた。
言わせておいて侑二も恥ずかしくなった。
「今度、この近くに期間限定のアフタヌーンティーのお店が出来るんだって、一緒に行こう?」
「うん、マリナが行きたいなら行こう」
そう言うと、侑二の好きなマリナの笑顔を見せてくれる。
マリナは流行りものがすきだった。
しかし、不安だったのはファストフードでバイトしていると言っていたが、何処でしているのかは教えてくれない、けど、いつもお財布には大金が入っていた。
不思議だったが聞けないで居た。
マリナからの告白だったが、侑二の方が今は好きが大きくなっていた。
不満も無く、マリナとの日々は楽しく付き合ってから1年が経っていた。
色々と記念日を作るのもマリナは好きだった。
部活が早く終わり、急ぎ屋上に行く、ビックリするか?喜ぶか?
そんな事を思いながら屋上のドアを開けると、いつもの様にマリナが居た。
声を掛けようと思った時、他に男が居る事に気が付いた。
マリナはその男と抱き合いキスをしていた。
驚いて声を出してしまった。
「マリナ?」
すると焦った様に此方を見た。
一緒に居た男は侑二の親友の実だった。
マリナは走ってその場を去る、侑二にぶつかり、勢いで侑二は屋上から落ちてしまった。
第三話 知らない場所
侑二が気が付くと映画を撮っているのか教科書や映画で見た合戦をしていた。
「屋上から落ちたのに生きてる、でも此処はどこだ?」
目立たない様に木陰に隠れた。
「そなた見ない姿をしとるな、密偵か?」
そう言って馬上より槍を侑二に目掛け刺そうとした。
侑二は身を屈め目を瞑る、殺される、と思った時だった。
「一之進、止めよ」
静止する声の方を見ると少年が馬に乗り此方を見ていた。
「しかし、この者怪しい格好をしています」
侑二の周りに一之進と呼ばれる武将、少年の他に三人の武将に取り囲まれていた。
映画の撮影では無いと感じ侑二は震えた。
「一之進、その者を連れて帰る」
少年が言うと、他の4人が反対する。
少年は小柄で美少年だった。
「私が良いと言っている、連れて行く」
少年が言うと、皆仕方なく侑二を空いている馬に乗せてくれ、マントを被せた。
城に戻る街並みを見ても映画で見た様な感じだった。
城に帰ると
「六郎、その者にも着替えを」
そう言って少年は何処かに行ってしまった。
合戦の後だからか、皆身体を奇麗にし着物、袴に着替える。
侑二にも着替えを渡されたが着方が分からない。
ため息を付きながら六郎と呼ばれた青年が着替えさせたくれた。
「ありがとうございます」
やっと出た声がその言葉だった。
「付いて来い」
言われた通り付いて行く、
奥の部屋に行き廊下で
「六郎参りました」
「入れ」
六郎が襖を開けると、先程の武将たちと姫が居たが少年は居なかった。
部屋に入り隅に座る。
第四話 同一人物
「百合様、このような怪しい者を連れて来てどうするのですか?」
一之進が百合と言われる少女に言う。
「かまわないであろう?あの場に居たらこいつは殺されていたぞ、そうだ、お主名前は何と云う?」
本当に刺されて居たら死んでいたし、あの場にずっと居たら殺されていたと思うと震えは止まらない。
「海野侑二です。」
やっと、震えた声で答える。
「侑二、怯えずとも良い、もう大丈夫だ」
百合に言われるが、まだこの状態を飲込めていない。
「皆が怖い顔をしているから侑二が怖がっている、名前でも教えてやれ」
「その前に、申し訳ありません、此処は何処ですか?何の時代ですか?」
「貴様、百合様が話しているのに」
大きな声を出されまた怯えてしまった。
「幸之助、構わぬ、侑二、此処は江戸に近い所だ、時代は分からんがまだ戦ばかりの時代だ」
百合はきっとお姫様なのだろう、江戸時代にもなって居ない戦国時代何故此処に来たのだろう?
侑二は懸命に考えるが歴史が苦手で良く分からない。
「では、某は前川一之進、歳は25になる」
「私は、三田幸之助23歳だ」
「私は、山下勝美20歳」
「私は、田島六郎18歳」
皆が自己紹介をしてくれる。
「改めて、初めまして僕は海野侑二17歳です」
そう言うと、姫は笑い
「先程、戦場で会ったではないか」
顔を上げ姫を見ると馬上に居た少年だった。
少年は女の子だったんだと不思議な気分になる。
「侑二、其方は剣術は出来るのか?」
「剣道はしていましたが、本物の刀を手にした事も無く、戦に出た事もありません」
侑二は正直に答えた。
「しかし、お前は奇妙な格好をしていたな」
一之進が聞いて来た。
何て答えて良いのか分からない。
第五話 姫
「私は、桜田百合と云う、歳は15だ、此処に居る4人は私の側近だ、分からない事は聞けば良い」
「百合様、何故其処まで話てしまうのですか?」
六郎が聞くと百合は
「この者の姿を見たであろう?きっとこの者はこの時代の者では無い。違うか侑二」
整理出来ていない頭で考えるが、誤魔化すより本当の事を言おうと決めた。
「はい、信じて頂けないとは思いますが、僕は今から300年以上先の未来から来ました」
きっと頭の可笑しな奴だと思われていると思った。
「この話は我らだけの秘め事に、そして侑二私の小姓に成れ」
「姫、何故この者の事を信じるのですか?それに小姓とは」
勝美が百合に言う、やはり信じてはもらえない。
「忘れたのか?」
百合が言うと皆が黙った。
「一之進、侑二に部屋を用意してくれ、幸之助、呉服屋を呼べ」
百合の言葉に皆が従う。
暫くすると、呉服屋が来た。
「幸之助、侑二に着物を数着用意してくれ」
「付いて来い」
幸之助に言われ付いて行く、色とりどりの反物が有った。
「侑二はどの様な物が好みだ?」
そう言われても浴衣すら来たことが無い、選べずにいた。
呉服屋に似合いそうな物で数着作る様に言ってくれた。
「すいません、ありがとうございます」
幸之助に礼を言う。
「侑二、来い」
一之進が呼ぶ、付いて行くと
「今日から此処が其方の部屋に成る、自由に使え」
「はい、ありがとうございます」
しかし侑二はまだ夢でも見ているのかと思って居た。
第六話 4人の武将
朝、目を覚ますと其処はまだ城だった、夢では無かった様だ。
侑二はため息を付いた。
着替えを手伝って貰い、百合の居る部屋に行く。
「侑二です」
「入れ」
襖を開け中に入る。
「よく眠れたか?」
百合に聞かれ侑二は首を振り
「夢だったらと思って居ましたが、目を覚ましても元に戻って居ませんでした」
沈んだ雰囲気になって居た。
そんな話をしていると昨日の4人が入って来た。
「随分と暗いな侑二」
勝美が侑二の背中を軽く叩く
「元居た場所に戻れていないのだ、いつかは帰れると信じろ、それまで此処に居れば良い」
百合が言うと侑二は泣いてしまった。
何故か此処に居る姫を混ぜ5人は優しくしてくれるのだろうと思っていた。
「そうだ、忘れていた、侑二、表で私を姫とは言うなよ」
突然言われ
「何故ですか?」
泣きながら聞いた。
「私は表では男と云う事になって居る、だからこの格好も此処のみなのだ」
驚く、何故男として生きなければならないのかが分からない。
「侑二、泣くか、驚くかどちらかにしろ」
笑いながら六郎が言う。
昨日初めて戦場で会い、未来から来たと言ったのに何事も無かった様に接してくれる4人の武将に感謝した。
元の世界に帰れるまで此処で生きて行かなくてはいけない、決意をしなければ。
「忘れる所だった、侑二これを腰に差せ」
百合が2本の刀を持って来た。
「僕は刀を使った事は無いので」
「良い、付けているだけで良い」
百合に言われ腰に刀を差した。
第七話 側に
何とか侑二も慣れてきた、着替えも出来る様になった。
「姫、侑二です」
「入れ」
襖を開け中に入る。
「姫、聞いてもいいですか?」
「何だ?」
聞いても良いのか迷ったが、思い切って聞いた。
「何故、表では男なのですか?」
百合は少し考えて
「私には兄が居た。只、兄は戦で亡くなった。城主が居なければこの国は他の国に成る、民の事を考えると妹では無く弟として城主になる事でこの国は無くならない、だから私は男に成る」
この15歳の少女は自分の事では無く自分の国の為に男に成るのか、華奢な少女の決意とはどの様な物だったか、それを考えると自分も泣いてばかりではいけないと思う侑二だった。
「表の時の名前は有るのですか?」
「有る、柚希だ、だが、侑二は戦に出なくて良い此処に居ろ、だから柚希の名を呼ぶことは無い」
そう言ってくれる、この人は初めから優しい。
「しかし、小姓とは殿と一緒に居て守る仕事では無いですか?」
「良く知っているな、しかし、侑二には血生臭い経験はさせたくは無い」
年下の少女に守られていた、なんて無力なのだろうと思う。
「でも僕は姫の側に居ます。」
「そうだ、侑二ちょっと来い」
そう言われて門で待つように言われ待っていると男の格好の百合が来た。
「どうしたのですか?」
と、聞くと百合は
「買い物に付き合え」
と言って町に出た。
二人で歩いているとマリナの事を思い出した。
「どうした、疲れたか?」
聞かれ首を振った。
簪や櫛が売っている店に来た。
「どの簪が似合うと思う?」
奇麗な簪が沢山並んでいる。
ふと目に入ったのは花があしらわれ何本かの鎖の先に花びらの様な物が付いていて揺れる可愛い簪だった。
「これは如何ですか?」
と聞くと少し嬉しそうに微笑み
「女将、これを二本くれ」
と言い簪を買った。
「侑二、ちょっと待っておれ」
そう言って他の店に行き戻って来て侑二に組紐を渡した。
「これは?」
と聞くと
「買い物に付き合って貰った礼だ。髪が伸びたらそれで結べ」
初めてのデートとプレゼントだった。
第八話 戦
桜田家は小さな国だった、他の国から戦を仕掛けられる事も多かった。
年若き城主、側近も年若いだからか狙われえる。
百合の部屋に侑二も入れ6人が集まり来た書状を読んでいた。
国を明け渡せば民の安全は保障すると書かれていたそして百合を小姓にと付け加えられていた。
「全く諦めの悪い奴だな」
百合が言う、他の4人も頷く
「戦の用意を」
百合が言うと、4人は他の武将を集め会議を始めた。
「僕も」
と侑二が言うと、百合は此処に居ろと言った。
戦の用意が終わり出陣する、侑二はただ見送る事しか出来なかった。
4人は気にするなと云ったが、百合の事が心配だった。
簪を選んで欲しいと言われた時は悩んだが、百合の嬉しそうな顔が忘れられない。
二人で出かけ他の4人に叱られたが、団子で許せと笑いながら言う百合を可愛いと思った。
そんな普通なら姫として大切に育てられたであろうに今は大将として戦に出て行く一緒に行けなかった事が悔しかった。
今、どうなっているのか分からない。
無事でいて欲しいと願った。
現代なら直ぐに何をしているのか分かる、しかも戦なんて無い
2.3日の後、帰還して来たと知らせを受ける。
しかし、百合が怪我をしたと聞いた。
急いで百合の元に行くと甲冑の肩から血が流れていた。
一之進に支えられ着替え医師の治療を受けていた。
皆、着替えを終え百合の元に来る、だが外で持つしかない。
医師が出て来て命に係わる傷では無いと知り安心する。
「百合様」
声を掛けると
「入れ」
いつもと声が違った。
部屋に入ると布団に寝ている百合を見て余計に心配になる。
顔色が悪い。
「申し訳ありません、我が弟の八郎が百合様を守れず怪我をさせてしまうとは、どんな罰でも」
六郎が話している最中に話を遮った。
「八郎に罪は無い、気にするな」
そう言って眠りに着いてしまった。
第九話 本当の事
刺されたが、深いところまでは行っていない様で3日立つと布団から起き上がれる様になった。
他の武将たちは百合に怪我をさせた事でより鍛錬をする様になって居た。
今は侑二が百合の側にいる事が多かった。
「姫、大丈夫ですか?痛み止めを」
薬を飲ませると、百合は微笑みながら
「侑二は心配性だな」
そう言った。
「侑二襖を開けてくれ庭が見たい」
言われた通りに襖を開けた。
「侑二、私の本当の事を聞いてくれるか?」
「はい」
百合の顔がいつもより真剣に見えた。
「侑二は300年以上前の未来から来たと言ったな?私が男として此処に居るのは兄が居て死んだからだと言ったな」
侑二は頷いた。
「私は、5歳の時平安と云われる時代から来た。蹴鞠をしていて池に落ちたのだ。目が覚めたら此処に居た。知らない場所と知らない風景、戦の跡、怖くて泣いていた。そんな私を助け育ててくれたのが兄の桜田元家だった。妹と言ってしまうと婚姻や側室にされ元の世界に帰れないかもしれないと考え、病弱な弟として育ててくれた。一之進、幸之助、勝美、六郎は側近や小姓だったから私の事を知っている。皆秘密にしてくれた。だから侑二を見た時、もしやと思ったのだ。」
驚いて声も出なかった。
「男だから剣術や戦術を教わり鍛えた。最初の刀は重くて持てなかった。もう十年になるな」
「帰りたいとは思わなかったのですか?」
やっと出た言葉だった。
「何度も思った、帰りたい、戦いたくないと泣いた」
5歳の少女が過去から未来に来て全く違う生き方をしなければ生きていけなかったなんて、しかも、男として、平安の姫なら箸より重い物を持った事が無いと表現されるが、この少女は刀を持ち戦った。どれだけの覚悟が有ったのだろう。侑二は涙を零した。
「何故、侑二が泣く」
百合は涙を拭ってくれた。
「姫は帰れたら帰りたいですか?」
「もう無理だな、人を殺め過ぎた、いくら戦と云えど10年も経ってしまっている。だから侑二は帰れると良いな」
百合は侑二を見て微笑んだ。
第十話 このままで
百合は優しく強い女性だった。
簪を買った時は可愛い少女の顔だった、戦いの時は凛とした強さを感じさせた。
でもまだ15歳の女の子なのだ、この愛らしくも強い少女に引かれていた。
何か出来ないかと考えていたら炊事場に来ていた。
小麦粉、栗、卵、使っても良いかと聞くと炊事場の人は使っても良いと言ってくれたので
菓子を作ることにした、またあの笑顔が見たかった。
マリナの時とは違う気持ちだった。
菓子を作り終えお茶と一緒に持って行く
「姫、侑二です」
「入れ」
開けると4人も来ていた。
皆の分も作って置いて良かったと思った。
菓子を見た姫は
「侑二、それは何?」
キラキラした目で見ていた。
「僕の時代で言うとモンブランと云う栗菓子です」
皆の所にも置く、皆は色々な角度から見ながら不思議そうに眺めていた。
百合はパクリと一口食べると満開の花の様な笑顔で頬を抑え
「甘くて美味しい、こんな栗菓子は初めて」
侑二が見たかった以上の笑顔で一瞬時が止まった感じがした。
他の4人も菓子を食べ旨いと言って食べていた。
「この栗菓子は何処かに売っているのか?」
百合は相当気に入った様で聞いて来る。
「いいえ、僕が作りました。この季節ならいつでも作りますよ」
「本当か?侑二は菓子を作るのが上手いな」
しかし急に百合が下を向いた。
「姫どうしたのですか?」
侑二が聞くと
「侑二が元の時代に帰ったらもう食べれぬ」
悲しそうな顔になってしまった。
此処に居る者は皆二人が違う時代から来たことを知っていたので
「姫は10年この時代に居るのですよね?僕も10年位居るかもしれません、季節ごとに色んな菓子を作りましょう」
侑二が言うと百合は微笑み
「次の季節が楽しみ」
と、言った。
第十一話 恋の戦が始まる
「侑二、ちょっと良いか?」
一之進に呼ばれ付いて行く、その部屋には他の3人も居た。
「何かあったのですか?」
張り詰めた空気を感じた。
「侑二は、未来から来た。百合様の事をどう思って居る?」
行き成り聞かれ混乱した。
「命を救って頂き、此処に置いてい貰っています。感謝しています」
そう答えると
「では、好いているのでは無いのだな?」
幸之助が聞いて来る。
「何故そのような事を聞くのですか?」
逆に質問をすると
「我らは百合様を好いている、だから縁談などは断り、百合様だけを」
勝美は赤くなりながら途中で言葉を止める。
「私は、幼き時から護衛として百合様と共に過ごしました。これからも百合様と共に居たい」
六郎が言う、皆まるで告白だ、百合が好きと云う気持ちは同じだった。
「それなら、僕も姫様と一緒に居たい。例え帰れずとも」
侑二も同じ気持ちだった、あの可愛らしい笑顔、守りたいと思う強さ、無邪気な時すら愛おしい。
「では、我々の気持ちは一緒だが、譲れない思いが有る事になるな、侑二話はそれだけだ」
一之進が言い侑二が部屋を出て行った。
「だが、百合様は、どのようにお考えか、15歳にも成れば側室や正室になる様な歳だ、戦う事以外は恋心を皆に見せない」
幸之助がため息を付きながら言う。
「侑二、居るか?」
「はい、居ります」
侑二の部屋に初めて百合が来た。
「何も無いな、書物ばかりだ」
つまらなそうに言う。
「何かあったのですか?」
そう聞くと
「ちょっと前に来たが、誰も居なかった、其方ら私に隠れて何をしていたのだ?」
百合は侑二の部屋に来ていた。
「何をと言われても、言えません」
困って下を向き答えた。
「侑二はどんな書物が好きなのだ?」
「今の時代の事を覚えています、この先此処で暮らす為に」
百合は首を傾け侑二の顔を覗く、その顔があまりにも可愛くて赤くなる。
「侑二、顔が赤いぞ、風邪でも引いたか?」
侑二の額に百合は手を当てる。
第十二話 傷付いた少女
また戦が始まる、何処の国も領土を広げたい、桜田家の領土もいつも狙われているが、桜田家からは仕掛けない、いつの追い払うのみだったが、今回は追い払い、その領土を奪う事にしたのだった。
いつもより激しい戦いに成るのかもしれないと思い侑二は百合の部屋に行く。
「侑二です」
「入れ」
部屋に入ると、他の4人も居て軍議をしていた。
「今は軍議中だ」
一之進が強めに言うと
「かまわぬ、侑二どうした?」
百合に聞かれ
「今回の戦には私を小姓として連れて行って頂きたい」
意を決して言うと
「侑二、死ぬかもしれないのだぞ」
「分かっています」
そう言うと、少し百合は考えてから
「良いだろう、しかし、小姓としてだ。軍議に混ざれ」
了承を得て軍議に混ざる、ゲームでやった国盗り合戦とまるで本物は違う。
「一之進、幸之助、勝美、六郎、其方たちには各軍を率いて貰う、勿論、私も軍を率いて出陣する。」
百合が言うと、皆が反対した。
「いつも百合様の軍で行動していました、今回は何故別に戦うのですか?」
六郎が、声を荒げて百合に言う。
「今回は退けるだけでは無い、他の国を取るのだ、いつもとは違う戦いをしなければ国は取れない」
百合が言うと、皆が考える
「軍を率いるのは、其方たちだ、其方たちのやり方を考えろ」
軍議の時の百合を初めて見た、10年の間にどれだけの勉強をしたのだろう?
「さて、侑二は此処の小高い丘で陣を張り、そこに居てもらう。私も出陣するまではそこに居る」
「はい分かりました」
ここでもまた待つだけに成るが、もしも敵が丘まで来たら守る、そう決意した。
「大木軍は明日の夜に仕掛けて来るだろう、今日の内に準備し、本日の夜、此方から仕掛ける、早く準備を」
急いで皆準備を始める武器や陣を張り、軍の分散が伝えれらる。
百合の軍と一緒に侑二も丘に行く、もう馬にも一人で乗れる様になっていた。
準備が終わり、戦の合図を待つ
「出陣」
4つの軍が一斉に城に大木城に攻め入った。
大木軍はまだ準備の段階だった為、攻められ容易いと思って居たが、4つの軍の合間から30人余りの軍がこちらにやって来た。
「大木軍、特攻、水田」
「強い」
大将さえ討てば大木軍の勝利になる
他の4人も気が付いたが百合の元までは帰れない。
百合の軍がやられ始め水田が陣まで来た。
水田の軍も数人になって居た。
百合は刀を抜き構える、侑二も刀を抜いた。
大柄な男達が5人来た。
一斉に百合に襲い掛かるが、百合ははじき返す。
侑二も斬りかかった、2人を倒し、後2人、百合の背後から切りかかる、侑二はそれを受け止めはじき返して、胴を切る。
「うっ」
百合の声がして後ろを向くと侑二の背後を狙った敵から守って背中を切られていた。
「うわあああ」
百合を切った男に掛かって行き切り捨てた。
倒れている百合を見ると、まだ生きていた敵が百合に切り掛かろうとした時自然に身体が動き百合に覆いかぶさる。
侑二も背中を切られたが、立ち上がりその敵を切った。
この丘に来た敵は皆倒せたが、侑二も意識を失った。
第十三話 星空
戦は桜田軍の勝利に終わった。
百合と侑二は医師に診てもらい命の危険は無いが、傷は残るだろうとの事だった。
2人は襖を挟んで隣同士の部屋になって居た、看病がしやすい様にこうなった。
2人共に数日間熱に侵され意識は無かった。
4人は何があったのかと、その場に居た伝令の者に問い詰めた。
一部始終を知り、自分達の策が甘かったのでは無いかと後悔していた。
先に目を覚ましたのは百合だった。
「百合様、この度の事、我々の策が失敗し百合様のお身体に傷を付けてしまい、跡が残るとの事、誠に申し訳ございません」
4人は百合に頭を下げ謝罪した。
「私は大丈夫だ、侑二はどうした?」
「隣の部屋におり、まだ目覚めておりません」
伝令から聞いた事を百合に伝えた。
「そうか、侑二に悪いことをした。怪我までさせてしまったな、人を切るのも初めての者に人を切らせ消えない傷まで付けてしまった。」
百合は後悔していた。
「しかし戦に行くと言ったのは侑二です」
六郎が言うと、百合は話を変えた。
「そなた達の活躍で隣の城を手に入れ領土が増えた。褒美を取らせる、誰かその城に行き納めてもらいたい」
4人は百合の言葉に首を振り、他の者に城主をと言った。
百合の側から離れたく無いと思ったからだった。
「仕方ない、他の者で活躍した者にやらせる、選んでおけ」
4人は頭を下げ部屋を出て行った。
「痛いなあ」
侑二が目を覚ました様だ。
「侑二、すまなかった、私を助けるために背中に傷を負わせてしまった。」
百合の声が聞こえ
「気にしないで下さい、それより僕を守る為に姫の背中に傷が、女の子なのに傷が残ってしまい、役に立てず、すいません」
「2人共背中に傷か、お揃いだな」
クスクス笑う声が聞こえた。
7日位経っただろうか、起き上げり歩ける様になった。
夜、侑二が寝ようとした時だった、襖が開いた。
「侑二、今夜は月が綺麗だ」
侑二は起きて百合と一緒に月を見ていた。
ここに来て初めて空を見上げた。
「月も星も奇麗ですね」
そう言うと、百合は
「そなたの世界には星や月は奇麗では無いのか?」
「そうですね、明かりが夜でも灯っていて明るいのです」
「そうか、その明かりも見てみたい」
百合が言う、侑二は首を振り
「戦が無ければ、此処の空の方が綺麗ですよ、しかし、このような格好で2人で居たら怒られますよ」
百合の肩に羽織を掛ける。
「侑二、願いが有る、聞いてくれるか?」
「何でしょうか?」
そう聞くと、
「姫も、様も付けずに、ただ、百合と呼んでくれ」
侑二は百合の手を取り、百合を見つめ
「百合」
と、言った。
百合は侑二に抱き着き泣いた。
「侑二、侑二」
必死にしがみ付いて泣いている。
「百合」
そう言って侑二は百合を抱きしめ、頭を撫でながらずっと抱きしめていた。
第十四話 守りたい
「侑二は元の世界に戻れば好いた女子が居るのであろう?」
侑二を見上げて百合は聞く
「お付き合いをしていた女性は居ましたが、親友とも付き合っていた様で、それを知った日に此処に来ました。」
「会いたいであろう、帰る方法が見つかれば良いが」
侑二は少し考えて
「本当に大好きで、何でもしてあげたいと思っていました、ですが、此処で姫と出会い考えが変わりました。今は姫の側に居たい。姫の笑顔が見たい、姫を守りたいと思っています。ダメな男とお思いでしょう?」
本当の気持ちを百合に言うと百合は真っ赤になり
「侑二それは告白か?」
驚いた様な、恥ずかしい様な顔をしていた。
「はい、そうですね。私は姫が大好きです。」
侑二は真っすぐに百合を見た。
百合も赤くなりながら侑二を真っすぐに見つめた。
「私だけではありません、一之進殿、幸之助殿、勝美殿、六郎殿も同じ気持ちです。以前5人でその話をしました。」
百合は驚いた顔をして
「何故、他の者の事を言う?」
そう聞いた。
「私だけ告白をしては不平等ですから」
侑二が微笑むと
「侑二は優しいのだな、今度また外に出て買い物に付き合え」
百合はそう言って部屋に入って行った。
百合を抱きしめ、華奢な身体で懸命に国の事を民の事を考え戦う、本心を隠し、この少女は何故こんなにも優しく強く美しい、必死に侑二にしがみ付き泣いた、これが本心だったのではないのかと思った。
まだ腕に、身体に百合の体温が残る侑二も部屋に戻り寝た。
次の日は朝から起きて普通の日常を過ごす。
百合の部屋に行くと4人が揃って居た。
「侑二、もう傷は良いのか?」
そう聞かれ頷いた。
「皆に聞きたい事がある」
百合が言うと、皆が百合を見た。
「一之進、そなた25歳であろう?嫁はどうするのだ?」
それを言われた一之進は
「私は嫁はいりません。」
「私達も嫁はいりません」
続く様に、幸之助、勝美、六郎が言う。
「私達は皆同じ思いです、百合様のお側に居ます。好きな方の元に居たいのです」
百合はまた顔を赤くして下を向いた。
第十五話 貴女と共に
5人の男からの告白に百合は困っていた様だった。
侑二はふと、このまま此処で百合と暮らせるなら、百合と両想いなら帰れなくても良いと思った。
次の日、侑二は外に買い物に出かけた。
給金を貰っているので此処での買い物は出来る。
百合と寄った簪屋に行った。
沢山の花が集まり花束の様になっていて長い棒の様な物の先に白い石が揺れる可愛い簪を見つけ買った。
サツマイモが売っていたので買いスイートポテトを作ろうと思った。
城に帰りスイートポテトを作る。
今日は百合の誕生日、16歳になる。
本当はバースデーケーキにしたかったが材料が無い。
少しでも喜んで欲しかった。
百合の部屋の前で
「侑二です」
「入れ」
言われて入ると、百合1人で居た。
「他の方はどうしたのですか?」
と聞くと、百合は微笑みながら見合いだと答えた。
やはり家の云う事には逆らえない様でしぶしぶ見合いをして居るらしい。
百合の近くに座り
「姫、今日は姫が産まれた日ですね」
と、言うと
「ああ、そうだった」
忘れていたのか、そんな返事をした。
「これはお産まれになった記念に、それと菓子を作ってまいりました。」
「開けても良いか?」
と聞かれはいと答えた。
箱を開けた百合は奇麗と言いなが微笑む、菓子を見てこれは?
「サツマイモの菓子です。」
スイートポテトを食べた百合は大きく目を開き頬を抑え飛び切りの笑顔で
「とても奇麗な簪と、菓子をありがとう、とても旨い頬が落ちそう」
この笑顔が見たかった、16歳らしい女の子の笑顔、愛らしくてたまらなかった。
この笑顔が見られるならと考える、マリナの事を大切だと思って居たのは本当だった、しかしこの時代で出会ってしまった。誰よりも愛らしく、誰よりも強く、誰よりも優しいこの姫を誰にも触れさせたくない位、愛おしいと思ってしまった、一緒に居たいと思ってしまった。
きっと他の4人も同じ思いなのだろう。
第十六話 明日が来なくても
「所で皆、見合いはどうであった?」
数日前の見合いをした4人に聞いた。
「侑二、お前は良いな、家の為とは云え会って間もない女子と婚姻するのだぞ、心に思う人が居ても」
一番年上の一之進が言った。
「では、決まったのだな?」
百合が聞くと不貞腐れてはいと答えた。
皆、同じ様に決まりそうだった。
「女子と婚姻しても私と一緒に此処に居られるだろうに」
百合が言うと
「そんな事ではありません、我らは百合様と婚姻したかったのです」
4人は勢いで百合に告白した。
「私にも時期に他の家の姫と見合いの話が来るだろう」
「そうしたら、どうするのです?」
侑二か聞くと、百合が
「婚姻はせぬ」
と言って笑った。
「この時代には男色と言って男が好きな武将が多い、それだと言えばいい」
「良かった。」
侑二が言うと4人は侑二を見て
「どうせ他の男に輿入れせねばいけないのなら、侑二が城主になり、百合様を嫁にすれば良い」
「それには、百合様も、侑二もこの時代で生きて行く覚悟が必要です。例え帰れる方法が見つかっても」
一之進と幸之助が言った。
言われた2人は真っ赤になった。
「侑二、お前はどうしたいのだ?」
勝美が聞いた。
「僕は、姫と居られるなら、元の世界の明日が来なくても良いと思って居ます。」
侑二が言うと百合は
「侑二、私の身体は傷だらけだ、この様な身体の女子を侑二は抱けるのか?」
行き成り具体的な事を言われ焦る。
恥ずかしくて黙っていると
「ほら、抱けぬであろう?奇麗な傷も無い女子が良いのであろう?」
百合は気にしないで言う。
「いいえ、黙っていたのは恥ずかしかったのです。その様にハッキリと言われると皆さんが居る前で言うのが、でも、僕は姫を抱きたい、傷だらけの身体でもその身体に触れたい、その唇に口付けしたい」
心臓が飛び出そうな位、ドキドキが止まらない。
自分で言っておいて百合も真っ赤になり
「侑二、何を言う、恥ずかしくなってしまった」
と言いながらモジモジしていた。
そんな2人を見ているのが4人は楽しくなっていた。
そんな中、村の占い師が百合に文を送って来た。
文にはには、赤い満月の夜、祠の扉を開くと、後の世への道が開く、と書いてあった。
その手紙を見た百合は、侑二を呼び文を見せた。
「侑二は帰れるのでは無いか?」
「いいえ、僕は此処に居ます。姫と共に」
侑二は首を振って断った。
「しかし、帰れるのなら」
百合は侑二を元の世界に返したいと思って居るのが分かる。
「では、姫も僕の世界に来てくれますか?」
「私には無理だ、此処で城と民を守らねば」
そう言った。
「では、僕も此処で姫を守ります。」
本当の気持ちだった。
第十七話 貴女と一緒に
文が来たことを4人も知った。
「帰れるのなら、帰った方が良いのでは無いか?」
と、言われるが、姫が一緒でなければ元の世界には帰らないと伝えた。
4人は色々考えて百合の部屋に侑二を呼んだ。
中に入ると姫と、4人が居た。
「何の話だ?」
姫が聞くと4人は真剣な顔で
「本当に赤い月の日に侑二の世界に行けるのであれば、百合様も一緒に侑二と行くべきだと4人で話し合いました。」
一之進が言った。
「何故?」
百合が聞いた。
「侑二の世界にはこの国全体での戦は無く、平和な世界だと聞きました。事件や事故などは多い様ですが百合様が此処で武将として生きるより、侑二の世界で2人幸せに平穏に暮らせるなら、それが良いと思ったからです」
勝美が皆で話し合った事を言った。
「皆、私の事を考えてくれ侑二と共にその世界に行けと言ってくれた事は嬉しい、だが、私は此処に居て守らなければならない民が国がある。そなた達を戦の多い時代に残し私だけが平穏に幸せには成れない」
百合はそう言って皆の事を聞かなかった。
本当に優しい方なんだと侑二は思った。
「僕は姫が居れば、一緒に居られれば、元の世界に帰りません」
ハッキリと言った。
「その場合、百合様と侑二はどうするのですか?一緒に居るだけで婚姻はしないのですか?好き合って居るのに、子が出来たらどうします?」
六郎が言う。
百合は黙ってしまった。
確かに、好き合って子が出来たら女だとバレてしまう、そんな事は考えていなかった。
そんな時、幸之助が話始めた。
「これは私だけの考えで皆には話して居ませんが、2人の考えを聞いて思ってのですが、柚希様と侑二が養子縁組し桜田侑二になり、その後、柚希様は病死、侑二が桜田家の当主、此処の城主になって百合と云う姫を嫁に貰う、そうすれば百合様は女子のままで居られ子が出来ても大丈夫ですよね?側近は我々だけですから戦の時は大将として侑二に行ってもらいますが、軍議に百合様は参加してもらいます、どうでしょうか?」
皆、本当に2人の事を考えてくれている事が嬉しい、有難いと思った。
「侑二はどう思う?」
百合に聞かれ、少し考えてから
「僕は、姫が一緒に居てくれるので有れば此処で暮らすのも、一緒に未来に帰るのもどちらでも」
そう答えた、そして
「姫はどうお考えですか?」
と、聞いた。
百合も少し考えてから
「幸之助が私達の事を本当に考えてくれ、とても嬉しい、正直に言えば、侑二には元の世界に戻った方が良いのでは無いかと思っていた。」
そこで言葉が止まり、少しまた考えてから
「私だって、侑二と共に居たい、侑二が好きだ。出来れば侑二と婚姻し子も欲しい、でも、子が出来なかったら側室を娶らねばならない、それは嫌だ。未来に一緒に行く事も考えた、でも、この国や民、其方らを置いて未来には行けない」
百合は考えながらゆっくりと考えを言った。
最終話 あれから
皆で侑二と百合の事を考えてくれたあの日から1年が経った。
侑二と百合は赤い月の日の夜、祠に行った。
未来に行こうと百合は言ってくれたが、百合の本当の気持ちを聞いた。
無理に侑二と未来に行くのは違うと考えた。
「侑二様、百合様、ご成婚おめでとうございます」
大広間で皆がお辞儀していた。
「皆、ありがとう、これからも宜しく頼む」
侑二は柚希と養子縁組をし、兄になった。
柚希は病死した事になって居る。
百合は公家と養子縁組し、侑二に輿入れした。
幸之助が考えてくれた事をして此処で生きて行こうと2人で祠の前で決めた。
百合が居ればどこでも生きていける、あれだけ帰りたかった時代は百合さえ居れば何でも無くなっていた。
百合も元の世界に帰れるとなっても侑二が居れば帰れなくても良いと言ってくれた。
この戦乱の世で暮らして行くと2人で決め、4人に話した。
4人は侑二に刀の扱いや戦のやり方など教えてくれ側近として付いてくれると言ってくれた。
「私に子が」
と、百合が言おうとした時、侑二は
「他の女性を娶りはしない、子が出来なくても2人で居られれば僕は幸せだから」
百合の手を取って、目を見て言った。
百合は赤くなりながら
「本当?側室は娶らない?」
「本当だよ、百合以外の女性は要らないよ、ずっと百合と共に」
「凄く嬉しい、私も侑二だけが好き」
百合は初めて女性の姿で皆の前に出た。
これからは男装しなくても良くなったし合戦に出なくて良くなった。
しかし、まだ慣れない軍議には出てくれて意見を言ってくれる。
2人はいつも一緒に居て城内でも仲の良い夫婦だと言われている。
「こんなにも百合様を好いていましたが、相手が侑二で良かった。」
一之進が言った。
他の皆も頷き喜んでくれた。
2人共タイムスリップし違う時代からこの戦国の世に来て恋に落ちた。
こんなにも愛おしいと思う女性は百合だけだった。
百合もあんなに泣いて帰りたかったが侑二と出会い女で居たいと思ってしまった。
いつまでも2人で居られれば時代は関係無かった。
完