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エピローグ

 名前もないある町にね、言花の猫っていう猫さんと、仲良しなお兄さんと妹がいたの。

 二人と一匹はね、旅をして、誰かの想いが詰まった言葉の種を届けにいくんだ。

 悲しいことや、嬉しいこと。些細な願いや、溢れる愛。一つ一つの想いがその言葉の種には息づいて、芽吹くのを待っている。

 そしてね、その言葉の種を必要としている人に届けるの。

 男の子が沢山の言葉の種を運んで、猫さんが案内をして、女の子が言葉の種に宿った想いを伝えるんだ。

 すると、ほら、言葉の種は素敵な言の花を咲かせる。

 その言の花はね、どれ一つ同じものはないの。

 勇気の花、愛の花、絆の花、過去や未来の花まで。

 その言葉の種に込める想いによって、咲かせる花は色も形も意味も変わっていくんだ。

 とある村では勇気の花が咲き、俯いていたナイトが大空を見上げるようになりました。

 とある王国では愛の花が咲き、自分勝手なお姫さまが愛すること知りました。

 とある森では絆の花が咲き、独りぼっちだった魔法使いに一緒に笑い合える友だちができました。

 だけど、旅には終わりがあるの。

 男の子も女の子も、もちろん猫さんだって、みんなそれぞれの過去があって未来がある。

 同じじゃないから交わる時が過ぎればお別れが待ってる。

「また、未来で会えるよ。その時は君たちへ言葉の種を届けるよ」

 でも、永遠のお別れではありません。猫さんは約束をします。

 また未来で交わった時、二人だけの言花を贈ることを誓います。

「苦しくなったら過去を振り返って僕たちとの旅を思い出して。君たちのおかげで咲いた言花たちと笑顔になった人たちがいたことを忘れないで」

 ただ、いつ来るか分からない未来に苦しくなってしまう時があるかもしれません。

 だから、魔法の言葉を贈るのです。猫さんが二人の前から消えても大丈夫なように。

「俺、会うのを待ってる。また一緒に言の花を咲かせよう」

 男の子は未来に夢を見て、

「私も、忘れないよ。何度も思い出すから」

 女の子は過去に想いよせました。

 そして、言の花の猫さんは二人に別れを告げて、またどこかの町に誰かのもとへ言の花を咲かせに旅立ちました。









 ねえ、言花の猫さん。

 今日はどんな言葉の種を届けるの? どんな言の花を咲かせるの?












「ねえ、おかーさん。それで、ねこさんはふたりにまたあえたの?」

「ええ、二人が大きくなった時、また猫さんが現れて言葉の種を二人に届けに来たの」

「ふたりはことのはなをさかせたの?」

「もちろん。男の子は未来の花を、女の子は過去の花を咲かせたよ」

「わたしのところにも、ことはなのねこさん、くるかな? ことのはなを、さかせるかな?」

「大丈夫。伝えたい想いがあれば、きっとあなただけの言花を咲かせることはできるよ」

 ……ねえ、そうでしょ? 言花の猫さん。


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